お金と暮らしの基礎知識

2023.06.26

生活保護の条件とは?手続きの流れから必要書類まで徹底解説

「生活保護を受ける条件は?自分は受給できる?」

「生活保護は打ち切られない?」

本記事では、生活保護を受けるための条件や打ち切りの条件を解説しています。

また、生活保護を受け取るまでの流れや、受給額の計算法についても詳しくお伝えします。

お読みいただくことで、生活保護を受ける条件や打ち切りの条件、手続きの手順がわかり、いざというときも安心して申し込めるようになりますよ。

生活保護を受けるための5つの条件

生活保護を受けるには、以下すべての条件を満たす必要があります。

【生活保護を受けるための条件】

  • 世帯収入が最低生活費より低い
  • 生活に不必要な資産を持っていない
  • 病気や障害、介護などで就業できない
  • 生活保護以外の公的融資制度や公的扶助が受けられない
  • 親族、身内からの援助が受けられない

1.世帯収入が最低生活費より低い

世帯収入が最低生活費より低いと、生活保護の対象となる可能性があります。

世帯収入とは、自分や家族を含めたその世帯の現金収入のことです。給料はもちろん、年金や各種手当などの社会保障給付も含まれます。

世帯収入に含まれる給与以外の現金収入としては、以下が挙げられます。

  • 年金
  • 保険金
  • 退職金
  • 親族などからの仕送りされるお金
  • 車や家などの資産を売却したお金
  • 失業保険や傷病手当金などの公的手当

そして最低生活費とは、憲法第25条で保障されている最低限の生活を送るための生活費用のことです。憲法25条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めています。

最低生活費は年齢や世帯の人数、居住地などにより決定します。例えば、20代で1人暮らしをしているという同じ条件でも、北海道石狩市の最低生活費は9万3430円になるのに対し、東京都23区では13万120円と、4万円近い差額があります。そのため、まずは年齢や世帯人数から、お住まいの地域の最低生活費を把握しておかなければなりません。

また、働いていても、毎月の収入が最低生活費より低い人も受給の対象です。

2.生活に不必要な資産を持っていない

生活保護を受けたい場合、生活に必要がないと判断された資産は売却して生活費とするよう促されます。例えば、居住用不動産は生活に必要と判断されるため所有していても構いませんが、自動車は売却を求められることがあります。

生活保護は国が支給する最終的なセーフティーネットの1つであり、生活に不要な財産を保持したままでの利用は認められないのです。

売却を求められる資産としては、以下のようなものがあります。

  • 別荘
  • 貴金属やブランド物などのぜいたく品
  • クレジットカード
  • 高級車
  • 2台目以降の携帯やパソコン
  • 使用していない土地や田畑
  • 貯蓄性がある生命保険など

これらの不要な資産を売却しても、生活するために必要なお金が確保できない場合は生活保護の受給対象となります。

ただし、以下のような資産は所有が認められています。

  • 必要最低限の預貯金
  • ローンを完済している持ち家
  • 通勤に必要な原動機付自転車
  • 生活必需品(スマートフォン、テレビ、パソコン、エアコンなど)

移動手段として必要な場合は自家用車を所有できる

地域によって、必要とされる資産は異なります。

特に車は原則として所有が認められませんが、やむを得ない事情があると見なされれば所有できるケースもあります。やむを得ない理由とは、例えば以下のようなものです。

  • 公共交通機関が利用できる範囲になく、通勤通学にどうしても必要である
  • 通院が必要な家族がおり、公共交通機関の利用が難しい

住宅ローンを完済した持ち家は居住継続可能

住宅ローンを完済した持ち家は、売却するように指示されることはありません。ローンを完済し持ち家に住み続けることは、持っている資産の活用であると判断されるからです。

持ち家で売却を指示されやすいのは、住宅ローンが残っている場合です。生活保護のお金は、住宅ローンの支払いには使えません。

自宅を売却すると、住む家が無くなると不安になる方もいるでしょう。自宅を売却して住む家が無くなる場合は、新しい住居を探すための一時金が受け取れる場合があるため、ケースワーカーに相談しましょう。

エアコン購入・設置費は受給可能

エアコン購入や設置費に使うための受給は、世帯内に熱中症予防が特に必要とされている方がいる場合に限り認められます。ただし、支給は地域によってばらつきがあるため、お住まいの地域での確認が必須です。

なお、エアコンの購入や設置費のための生活保護費の上限は5万円です。

3.病気や障害・介護などで労働できない

働くことが可能な場合は、自分で働いて生活費を確保する必要があります。病気や障害で働けない方、乳幼児を育てているシングルマザーや親族の介護をしている方は生活保護の対象になります。

ケガや病気の場合は他の制度の利用を優先する

ケガや病気の場合は、まずは他の制度の申請をおすすめします。一例として傷病手当金や傷病手当などがあり、申請して対象であれば一定の給付金が受け取れます。まずはケガや病気に関する制度を利用できないかを検討し、利用できない場合や利用しても生活費を賄えない場合は生活保護の受給を検討しましょう。

なお、内臓系の病気は分かりにくく、単に病気であることを伝えても給付が認められない可能性があります。内臓系の病気は必ず病院で診断書をもらって、病気であることを証明してください。

うつ病・統合失調症・発達障害などの精神病も病気と認定される

うつ病・統合失調症・発達障害などの精神病も認定されれば生活保護の対象となります。ただし、精神病は本人の申告だけでは判断されづらく、自己申告では病気であることが認められず給付されないケースもあります。精神病が理由で労働できず生活がままならない場合は、病院で診断書をもらいましょう。医師の診断書から精神病と判断されれば、生活保護の給付が受けられる可能性が上がります。

また、精神障害者と認められた場合は障害年金も受けることをおすすめします。

障害年金とは、病気やケガによって生活や労働が制限された場合に限り、現役世代の方も受け取れる年金のことです。受け取れる年金額は障害の等級が1級か2級か、年齢がいくつかによって異なります。

等級年齢支給額
1級昭和31年4月2日以降に生まれた方993,750円+子供の加算額
昭和31年4月1日以前に生まれた方990,750円+子供の加算額
2級昭和31年4月2日以降に生まれた方795,000円+子供の加算額
昭和31年4月1日以前に生まれた方792,600円+子供の加算額

さらに、18歳になった後の最初の3月31日までの子ども、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子どもがいる場合は「子の加算額」が追加で受給されます。

障害年金と生活保護は併用して受け取れるため、精神障害者と認められた場合は障害年金の利用もご検討ください。

生活保護費をもらいながら働くことは可能

生活保護費を受け取っていても、働いてはいけないということはありません。しかし、育児や介護などで労働時間や労働場所が限られており、働いても最低生活費を稼げないという場合もあるでしょう。働いても給与が最低生活費以下の場合は、生活保護費をもらいながら働くことが認められています。

ただし、給料以外の収入を合算するため全ての収入を洗い出す必要があります。給与と給与以外の収入を合算して最低生活費を超えた場合は、生活保護の対象から外れます。

4.生活保護以外の公的融資制度や公的扶助を受けられない

生活保護以外の公的融資制度や公的扶助が受けられない場合も、受給の対象です。

日本では、公的融資制度や公的扶助が充実しています。低所得者でも利用できる制度もありますが、それぞれに給付の条件が設けられており、ケースによってはどの公的融資制度も公的扶助も受けられないことがあります。この場合、生活保護を受給できます。

公的融資制度や公的扶助には、以下のようなものがあります。

  • 総合支援資金
  • 緊急小口資金
  • 求職者支援資金融資
  • 雇用保険失業給付
  • 生活福祉資金貸付 など

生活保護を受給したいと考えた場合、まずは公的融資制度や公的扶助が受けられないかを確認し、どの制度も利用できなかった場合に生活保護の受給を申請しましょう。

母子家庭・父子家庭は母子寡婦福祉資金の申し込みが先

母子家庭や父子家庭で生活に困窮している場合、生活保護の前に母子父子寡婦福祉資金の申し込みを先に行いましょう。

母子寡婦福祉資金とは、経済的自立を促すために1人親家庭などに必要な資金を貸し付ける制度のことです。対象となるのは母子貸付家庭、父子家庭、寡婦、父母のない児童などで、貸付資金の一例としては生活資金、医療介護資金、技能習得資金、住宅資金などがあります。

母子家庭、父子家庭は、まずは母子寡婦福祉資金について確認してみましょう。

児童扶養手当と同時に受給することは可能

生活保護と児童扶養手当を同時に受給することも認められています。しかし、同時に受給して最低生活費を超える場合、児童扶養手当との同時給付は認められません。

児童扶養手当とはひとり親世帯などの児童を支援するための手当のことです。18歳以下の児童を養育している人が対象で、月額1〜5万円程度が給付されます。給付には、居住する市区町村から認定を受ける必要があります。

児童扶養手当を既に受け取っている場合は、生活保護費と合算した時に最低生活費を超えないかを確認しておきましょう。

年金受給者・高齢者でも生活保護は受給可能

年金受給者でも生活保護は申し込めます。年金などによる収入がある人の生活保護の支給額は、最低生活費との差額で算出されます。

ただし、年金を受け取りながら働いており、年金と給与を合算した額が最低生活費を超えている場合は生活保護の受給は受けられません。

また、年金には複数の種類があります。主な年金の種類は老齢年金・障害者年金・遺族年金です。それぞれの対象者は以下の通りです。

老齢年金65歳以上の人が受給可能な年金
障害者年金障害などで生活や仕事が困難になった人が受給可能な年金
遺族年金年金加入者が死亡した場合、家族が受給可能な年金

現在、生活保護受給者の52.0%が65歳以上とされています。つまり、生活保護受給者の半数以上は老齢年金受給者ということです。このことからも、年金だけでは必要最低限の生活ができない人が多いことがわかります。

年齢割合
19歳以下9.6%
20代2.6%
30代4.7%
40代9.6%
50代13.5%
60〜64歳7.9%
65歳以上52.0%

出典元|厚生労働省「被保護世带数の年次推移」より抜粋

若年層でも何らかの理由で必要最低限の生活ができず、生活保護を受けている人がいます。

若年層で生活保護を受給している人のうち、病気やケガが原因で受給している人も少なくないと思われます。このケースでは、病気やケガをして労働ができない、または十分な収入が得られなくなったことで先に傷病手当金の利用、それでも最低生活費を確保できないため生活保護を受給しています。

5.親族・身内からの援助を受けられない

年金を受給する最後の条件は、親族や身内からの援助が受けられないことです。自分の収入だけでは生活できない場合でも、親族や身内からの援助が受けられるのであればその援助で生活していかなければなりません。しかし、親族や身内がいない、親族や身内がいても援助してくれない場合は生活保護を受給できます。

生活保護の受給の際には審査がありますが、審査項目の1つに扶養調査があります。扶養調査とは、援助ができる扶養義務者がいないか電話連絡によって確認することです。電話連絡をして援助してもらえることになれば、生活保護よりも親族・身内から援助を受けることを勧められます。また、援助の意思があるかは電話以外に扶養調査書によって福祉事務所から確認されることもあります。

ただし、扶養義務者であっても、援助を強要されることはありません。援助する意思がないことを示すか、扶養調査書に期間内に返答しなければ、援助する身内や親族はいないと判断され、生活保護の受給対象者になります。

扶養義務者とは児童扶養手当の対象児童を除く義務教育が終了した3親等以内の親戚のことで、3親等以内とは、具体的には以下の通りです。

  • 父母
  • 子供
  • 祖父母
  • 兄弟
  • 曽祖父母
  • 曾孫
  • 伯父伯母(叔父叔母)
  • 甥姪

世帯分離すれば大学進学可能

生活保護を受給していても、世帯分離した場合に限り大学への進学が認められます。

世帯分離とは、それまで1つの世帯として生活保護を受給していた人のうち、特定の人だけを切り離して生活保護の対象から外すことです。世帯分離といっても別居する必要はなく、世帯分離した人の生活保護費が受け取れなくなります。

大学に進学する人が生活保護を受けられないのは、大学生は働ける人とみなされるからです。そのため、生活保護を受給している世帯の1人が大学進学をしたい場合は、別居の必要はないものの世帯分離する必要があります。

現在の居場所が知られたくない人は相談する

生活保護を受ける際、DVや虐待などの理由から家族や親族などに現在の居場所を知られたくないという場合もあるでしょう。この場合は、現在の居場所を知られたくないこと、知られたくない理由を福祉事務所に事前に伝えて相談しましょう。申請時に「拒否したい」という意思を示し、「扶養照会をすることが適切ではない」または「扶養が期待できる状態にない」ことを説明すれば、実質的に照会を止められます。

生活保護に関する不安がある場合は、福祉事務所で遠慮なく相談しましょう。相談することで解決できたり、不安を解消するためのアドバイスがもらえるかもしれません。

生活保護の打ち切りの条件7つ

【生活保護の打ち切り条件】

  • 福祉事務所の指示を無視する
  • 安定収入を得ている
  • 最低生活費を上回る世帯収入がある
  • 生活保護費を失禁返済に充当する
  • 転居や失踪などで受給対象者と連絡不能になる
  • 受給対象者が死亡する
  • 犯罪を犯す

1.福祉事務所の指示を無視する

福祉事務所の指示を無視し続けると、生活保護の支給を止められます。

生活保護を受給していると、ケースワーカーと呼ばれる担当者が、受給者が最低限の生活ができているかや収入が最低生活費を上回っていないかなどを確認および管理します。この際、ケースワーカーは住居に立ち入りが可能で、病院へ行く指示を出すこともできます。立ち入りを拒否したり、病院に行く指示に従わないと、打ち切り対象となることがあります。

ケースワーカーの指示には必ず従い、従えない理由があれば正直に伝えましょう。

2.安定収入を得ている

安定した収入を得ていると、生活保護を打ち切られます。生活保護は必要最低限の生活ができない人を支援する制度だからです。

バイトや就職をして安定した収入を得た場合は、アルバイトを始めた旨や就職をした旨をケースワーカーに伝えます。この際、収入が必要生活費を下回っていれば生活保護の受給を引き続き受けられますが、最低生活費を上回った時点で生活保護の対象外となります。

万が一、安定した収入を得たにも関わらず生活保護をそのまま受給した場合は、詐欺罪になる恐れがあります。

こっそり受給し続けていても、ほぼ確実にバレます。安定した収入を得た場合はケースワーカーに必ず申告し、詐欺行為にならないようにご注意ください。

3.最低生活費を上回る世帯収入がある

世帯収入が生活保護基準よりも上回った場合も、生活保護費の打ち切りの対象です。年金が入ったり給料が上がったりで最低生活費を上回れば、自力で生活できると判断されて生活保護の受給が打ち切られます。

新たに仕事を始めた場合や、世帯の誰かが年金を受け取り始めた場合、給料が増えた場合など、世帯収入に変更があった場合は最低生活費を上回っていないか再度確認しましょう。自分で確認できない場合は、ケースワーカーに新たに収入が増えた旨を伝えて、最低生活費を上回らないかを確認してもらうとよいでしょう。

4.生活保護費を借金返済に充当する

生活保護費を借金返済に充当した場合、給付を打ち切られます。借金返済への充当は生活保護費の目的から逸脱しているからです。カードローンの返済はもちろん、住宅ローンの返済も借金への充当に含まれます。

そもそも生活保護費は、必要最低限の生活を営む資金を支援するものです。借金返済は生活を営むための費用だけではないため、生活保護費を借金返済に充当することは認められません。とはいえ、借金返済に充当したとしてもすぐに生活保護の受給が打ち切られるわけではありません。初めに改善指導をして借金返済に充当することをやめれば、引き続き生活保護が受けられます。しかし、改善指導しても改善が見られない場合、つまり改善指導を受けた後に再度借金返済に充当した場合は生活保護を打ち切られます。

生活保護を受給する場合は、生活保護費として認められた目的以外のことに使わないようにしましょう。

5.転居・失踪などで受給対象者と連絡不能になる

転居や失踪などで受給対象者と連絡が取れなくなった場合も、生活保護が打ち切られます。

1度連絡が取れなくなかったからといって、即座に生活保護が打ち切られることはありません。しかし、ケースワーカーからの連絡を無視し続けると生活保護を打ち切られます。連絡不能による打ち切りの流れは、以下の通りです。

  1. 連絡が取れなくなる
  2. 文書などで指示される
  3. 役所に赴いて理由を説明(弁明機会)しない
  4. 打ち切り

また、生活保護を受給している人が勝手に転居することは認められておらず、無断での旅行や外泊も禁止されています。無断での転居や旅行、外泊が発覚すると打ち切られることもあるため、必ずケースワーカーの許可を得てください。

6.受給対象者が死亡する

受給対象者が死亡した場合も打ち切られます。

受給者本人が死亡した場合は、家族や周囲の人がすぐにケースワーカーに連絡してください。連絡せずに生活保護を受給し続けていることが発覚すると、さかのぼって返還請求されます。

ただし、受給者本人のケースワーカーが誰かわからない場合もあるでしょう。この場合は、受給している市町村の福祉事務所に連絡をすると対応してくれます。「面倒だから手続きをしなかった」「報告しなければならないことを知らなかった」といった言い訳をしても返還請求されるため、早めに連絡して返還請求されることは避けましょう。

7.犯罪を犯す

犯罪を犯した場合も、打ち切りの対象です。打ち切られるのは犯罪に対する罰則としてではなく、実刑になった場合は官費で衣食住が保証されるからです。したがって、犯罪を犯せば必ず打ち切りになるというわけではなく、実刑判決を受けて刑務所に入ることになった場合のみが打ち切り対象です。

また、釈放された後は恐らく収入が最低生活費を下回るでしょう。収監されて生活保護が打ち切られても、釈放された後に再申請すれば受給を再開できます。万が一、役所の手続きのミスで収監中も生活保護費が支給されていた場合は、返還請求されるためお金はすぐに返却しましょう。

実刑判決を受けて刑務所に収監されている間だけではなく、逮捕されて拘留されている間も生活保護が打ち切られます。この場合も同様に、釈放されたら再申請して受給を再開できます。

生活保護を受給するための手続の流れ3ステップ 

生活保護を受給したい場合、まずは居住地の福祉事務所の窓口へ行く必要があります。福祉事務所は全国に1,250箇所あるため、最寄りの福祉事務所に行きましょう。

住所がない人でも、無料低額宿泊所を利用して受給可能です。無料低額宿泊所とは、各自治体が提供している0円または住宅扶助の受給金額である6万円以下で宿泊できる施設です。厚生労働省の規定により、入居者の半数以上は生活保護受給者を受け入れるよう定められています。

生活保護を受給するための手続きの流れは以下の通りです。

STEP1.福祉事務所へ事前相談

STEP2.生活保護申請・調査

STEP3.生活保護費の受給

STEP1.福祉事務所へ事前相談

まずは、所轄の福祉事務所の生活保護担当に生活保護を受給したいことを相談します。この際、すぐに生活保護の受給を検討するのではなく、生活福祉資金、各種社会保障施策などの活用の提案があります。これは、生活保護の受給条件として「公的融資制度や公的扶助を受けていないこと」があるためです。

生活福祉資金や各種社会保障施策のいずれかの対象となる場合、まずはその給付を受けるための手続きを進めます。生活福祉資金や各種社会保障施策の対象ではない場合、または受給しても最低生活費を下回る場合に、生活保護の受給についての検討が始まります。

生活保護はあくまでも最低限度の生活をするための最終手段です。福祉事務所に相談しに行ったからといって、すぐに生活保護受給の手続きが進められるわけではないことを理解しておきましょう。

STEP2.生活保護申請・調査

生活保護の受給が必要と判断された場合は、生活保護申請をします。ケースワーカーの指示に従って必要書類の記入および提出をして、申請をしてください。

また、生活保護の申請をするとケースワーカーによる調査が始まります。調査の際には、ケースワーカーから以下の調査を受ける必要があります。

  • 生活状況などを把握するための実地調査(家庭訪問など)
  • 預貯金、保険、不動産などの資産調査
  • 扶養義務者による扶養(仕送りなどの援助)の可否の調査
  • 年金などの社会保障給付、就労収入などの調査
  • 就労の可能性の調査

調査はいわゆる審査のようなものです。家庭訪問の際には、ケースワーカーを家にあげて調査を受けましょう。立ち入りを拒否すると、当然ながら生活保護は受給できません。

STEP3.生活保護費の受給

ケースワーカーによる調査終了後、調査結果から生活保護の受給が認められると生活保護費が支給されます。

生活保護の申請から生活保護費が受給されるのは、最短で14日後です。この際、就労についての指導があります。就労支援などは積極的に受けて、就労のための努力をしましょう。

また、生活保護の受給が始まると収入を毎月ケースワーカーに報告しなければなりません。報告の方法などは、受給が確定した際にケースワーカーから説明があるため、指示に従って正確な収入状況を毎月報告してください。

事前に準備しておくべき申請時の必要書類

生活が困窮していれば、なるべく早く生活保護費を受け取りたいと考えるのは当然です。生活保護費受給までの期間を短くするためには、必要書類を事前に準備して申請の手続きをスムーズに進めることが大切です。

生活保護の申請をする際には、福祉事務所で用意されている申請書に必要事項を記入して窓口に提出します。申請時に必要な書類は以下の通りです。

  • 生活保護申請書
  • 資産申告書
  • 収入・無収入申告書
  • 一時金支給申請書
  • 同意書

上記の書類は、福祉事務所で受け取れます。事前に受け取って必要事項を記入しておくと、手続きがスムーズに進められます。

また、現在の生活の状況が証明できる書類があるとより印象が良くなります。もし、生活の状況を証明できる書類があれば事前に準備し、申請書と合わせて提出しましょう。

生活保護の申請が通らない場合の対処法

生活保護は申請すれば受給できるというわけではなく、ケースワーカーが調査をして生活保護の受給が必要かどうかを判断します。そのため、場合によっては生活保護の申請が通らないこともあります。

生活保護の申請に通らない場合、再申請もできます。特に生活保護の申請には回数制限はなく、再申請は何度でもできます。

再申請をする際は、保護申請却下通知書の却下理由を解消してから行いましょう。同じ条件で再申請してもまた審査結果が変わることはないからです。代表的な却下理由と対応方法は以下の通りです。

  • 働ける状態にある:診断書を提出する、求職活動している旨を説明する
  • 居住している証拠がない:現住所がわかる書類を複数提出する、家庭訪問を複数回受ける
  • 親族が援助を申し出ている:絶縁状態にある旨を説明、証明する

1度生活保護の申請に通らなかったからといって、諦める必要はありません。どうしても生活保護を受けたい場合は、却下理由を見直して再申請してみましょう。

生活保護費は8種類

生活保護費は以下の8種類があります。

  • 生活扶助
  • 住宅扶助
  • 教育扶助
  • 医療扶助
  • 介護扶助
  • 出産扶助
  • 生業扶助
  • 葬祭扶助

1.衣食を賄う「生活扶助」

生活扶助とは、衣食を賄う生活保護費のことです。生活保護費は最低生活費を基準に算定されますが、生活扶助の支給額も最低生活費がベースです。

生活扶助の計算は、居住地の級地をベースに基準額や逓減率、加算額を当てはめて算出します。そのため、まずはお住まいの地域の級地を確認しておきましょう。基準額は第1類(自分の年齢)に逓減率(世帯人数による係数)をかけた金額に、第2類(家族の人数)を足して計算します。

また、生活扶助では基準生活費以外に加算、一時扶助が含まれることもあります。加算されるのは障害者、母子家庭です。各種加算に加えて、必要に応じて一時扶助が受けられることもあるため、まずはケースワーカーに現在の状況を詳しく正確に説明しましょう。

2.家賃の支払いに充てる「住宅扶助」

住宅扶助は、住む場所を確保するために家賃の支払いへ充てることのできる生活保護費です。最低限必要な住居、住居の補修および維持に必要な費用に対して給付されます。住宅扶助が使われることが多いのは、一般的に賃貸の家賃です。その他引越しの敷金や礼金に使うことも認められています。

住宅扶助の支給額および上限額は、地域や世帯人数によって変動します。ただし、共益費や水道代など家賃以外の経費は扶助の対象外となります。そのため、家賃60,000円・共益費5,000円の住宅に住んでいる場合の支給額は家賃の60,000円のみです。とはいえ、支給額には上限があるため家賃の全額が受け取れるとは限りません。家賃の全額を受け取るためには、その地域で支給される上限額を下回る家賃の住宅に住む必要があります。

3.義務教育を受けるための「教育扶助」

教育扶助とは、義務教育を受けるために必要な資金が支給される制度のことです。

教育扶助が受けられるのは、義務教育の期間内であるため最大で9年間です。教育扶助の使い方として代表的な例は入学準備金・教材費用・給食費用・交通費用などです。

なお、修学旅行の費用は就学援助で全額支給されます。就学援助制度とは生活に困っている世帯が受けられる制度のことで、生活保護とは別物です。

4.眼鏡や歩行杖の購入費用も支給される「医療扶助」

入院や通院が必要になった場合、治療にかかった費用を現物給付するのが「医療扶助」です。

生活保護を受けると、それまで加入が義務付けられていた「国民健康保険」の加入資格を失うため、国民健康保険を利用できなくなります。「保険を利用できなくなると全額治療費を負担する」と思われがちですが、生活保護費の1部である医療扶助で医療費が全額支払われます。

医療扶助で治療費を受け取るためには、受診する前に申請が必要です。ケースワーカーに受診の可否を相談し、受診が許可されれば「医療券」「調剤券」を発行してもらって医療機関を受診できます。医療扶助は現金の受け渡しがなく、原則として実際の治療などの現物給付になります。

医療扶助の対象となるのは、主に以下の通りです。

  • 診察
  • 薬剤または治療材料
  • 居宅における療養の管理および看護
  • 入院および看護
  • 移送
  • 眼鏡の購入費
  • 医療機関までの交通費

生活保護を受給していると、勝手に診察することは認められず、医療券を受け取ってから受診しなければならないことを覚えておきましょう。

5.介護サービスを無料で受けられる「介護扶助」

介護扶助は、生活保護費の受給者が介護サービスを受ける際に利用できる生活保護費のことで、介護サービスを無料で受けられます。

生活保護を受給すると、前述した通り国民健康保険から抜けなければなりません。そのため、国民健康保険の代わりに介護扶助によって介護サービスにかかる費用を受け取ります。

介護扶助は介護が必要になれば必ず受けられるわけではなく、ケースワーカーの許可が必要です。そのため、場合によっては介護扶助が認められないこともあります。

また、介護扶助の受給額は年齢によって変わります。具体的には、40〜64歳は10割が給付されるのに対し、65歳以上は9割が給付されます。

また、医療扶助同様に現金給付ではなく介護券の発行による現物支給です。

6.出産費用に充てられる「出産扶助」

出産扶助とは、受給者が出産する際に受けられる扶助のことで、給付されたお金は出産費用に充てられます。出産扶助は以下の3つの項目に分けられます。

  • 分娩の介助
  • 分娩前または分娩後の必要な措置
  • 衛生材料費

出産扶助の基準額は都度更新されているため、最新の支給額はケースワーカーに確認しましょう。出産に伴う入院費については、最大8日間の入院費が実費で支給されますが、個室や少人数部屋に意図的に入院した場合は差額分が自己負担になります。

衛生材料費とは、包帯やガーゼなどの衛生用品にかかった費用のことで、全国一律の同額で支給されます。衛生材料費も都度更新されているため、最新の支給額はケースワーカーにご確認ください。

その他、おむつ代や寝具、産着などに使える「出産準備費用」や「産婦加算」も受け取れます。

7.自立支援のために支給される「生業扶助」

生業扶助とは、就職のために必要な資格や技能の習得など、自立支援のために支給される生活保護費のことで、「生業費」「技能修得費」「就職支度費」「高等学校等就学費」の4つがあります。それぞれの概要は以下の通りです。

生業扶助の種類概要
生業費いわゆる起業資金
技能修得費就労で必要な技能を修得する経費、就労訓練などで費用がかかる場合に支給される
就職支度費就労訓練などで費用
高等学校等就学費学用品費や教材代

8.葬儀を行う時に受給できる「葬祭扶助」

葬祭扶助とは、受給者が喪主の場合に葬儀や埋葬の費用を支援してくれる制度のことです。葬祭扶助によって執り行われる葬儀は、お通夜・告別式・読経なしなど必要最低限に限ります。つまり、葬祭扶助による葬儀は「直葬」のみしかできません。また、香典返しは支給額には含まれていないため、どうしても香典返しをしたい場合には実費になります。

生活保護の受給額の計算方法

生活保護受給額は最低生活費から世帯収入と資産を差し引いた額が支給されます。世帯収入も資産もない場合は、最低生活費=生活保護受給額となります。最低生活費が年齢や世帯の人数、居住地などから決定されるのは、既に述べた通りです。

居住地によって異なる最低生活費

地域によって最低生活費が違います。地域によって等級が3段階に分けられており、等級によって最低生活費が異なるからです。

等級が高い市町村ほど、最低生活費が高くなります。等級が高い市町村は生活保護区分一覧で確認できるため、お住まいの地域の等級を把握しておきましょう。

生活扶助と住宅扶助とその他の扶助を合わせた金額が最低生活費

最低生活費は、以下のように算出できます。

最低生活費=生活扶助(第1類)+生活扶助(第2類)+住宅扶助+その他の扶助

生活扶助(第1類)とは食費や衣類など個人的費用のこと、生活扶助(第2類)とは水道光熱費など世帯に共通してかかる費用のことです。また、住宅扶助とは居住する家を確保するための費用(家賃や敷金、礼金など)のこと、その他の扶助とは児童養育加算や妊産婦加算、障害者加算などの特別加算のことです。

以下は40代の夫婦で、小学生と3歳の子供がいる家庭の場合の基準額です。

住所生活扶助基準額住宅扶助基準額児童養育加算
東京都23区167,510 円69,800 円20,380 円
福岡県福岡市160,070 円47,000 円20,380 円
北海道北広島市152,210 円39,000 円20,380 円

世帯人数の人数に比例しない受給額

生活保護費は、世帯人数が増えるほど1人当たりの受給額が減ります。これは、生活保護費には逓減率が適用されるからです。

世帯人数ごとの逓減率は以下の通りです。

世帯人数逓減率
1人1.0倍
2人0.8850倍
3人0.8350倍
4人0.7675倍
5人0.7140倍

生活保護の条件に関するよくある質問

生活保護の申請を受理されない場合はどうしたらいい?

書類の不備を無くし、それでもだめなら却下理由を聞きましょう。

生活保護には条件があり、条件を満たしていなけば申請が受理されません。

また、福祉事務所の水際作戦によって申請が受理されないこともあります。水際作戦とは、受給者を増やさないように申請を受け付けないことです。水際作戦が疑われる場合は、申請を受理してもらった上で、却下された場合に理由が分かる書類を提出してもらいましょう。

外国人でも生活保護費はもらえる?

永住者・定住者なら外国人でも生活保護費の受給が可能です。

生活保護費の受給は基本的に日本国民だけですが、在留資格を持っている人も対象と定められています。永住者・定住者の永住権のある外国人が申請する場合は、在留資格の証明ができるなどの書類の提出が必要です。

生活保護費受給可能な貯金の上限は?

生活保護費受給可能な貯金の上限は、最低生活費未満です。

生活保護は、最低生活費に満たない収入しかない人を対象にした制度です。貯金が0円以下でなければ受給できないなどということはありません。最低生活未満という上限こそあれ、貯金を持つことは許されます。

また、調査期間を生活するだけの貯金も認められています。

コンタクトレンズは生活保護費の対象ですか?

コンタクトレンズは対象外です。

生活保護費のうち、医療扶助ではメガネの購入費用も認められますがコンタクトは対象外です。メガネ代が対象として支給されるので、コンタクトは必要最小限ではないという認識なのでしょう。

とはいえ、コンタクトレンズを実費で購入することは可能です。

若者でも生活保護の受給は可能ですか?

若者でも生活保護の受給は可能です。

実際、生活保護受給者の半数が高齢層ですが、若者でも生活保護の受給を受けている人はいます。「若者だから生活保護は受けられない」と諦めたり、「若者は生活保護を受けてはいけない」と遠慮する必要はありません。

借金がある場合でも受給できますか?

借金があっても、生活保護の申請や受給は可能です。

生活保護の受給条件に、借金に関する項目はありません。ただし、忘れてはいけないのは生活保護を受けても借金は減らないということです。生活保護費は借金の返済に充てられません。借金がどうしても支払えない場合は生活保護ではなく、債務整理や自己破産を検討した方がよいかもしれません。

生活が苦しい場合は福祉事務所へ相談しよう

ケガ・病気・育児・障害・介護など、さまざまな理由で労働できず、生活がままならない場合があります。一方、日本では、憲法第25条により国民は必要最低限の生活をする権利を有することが定められています。何らかの理由で労働できない場合は、生活保護法に基づいて運営されている生活保護を受給できる可能性があります。

生活保護を受給するためには、世帯収入が最低生活費以下であることや不要な資産を売却していることなど、5つの条件があります。生活保護を受けたい場合は、まずは最寄りの福祉事務所に相談して生活保護の対象かを確認しましょう。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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algorithms02 リアほマネーMAGAZINE編集局

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