著名人・専門家コラム
2025.03.14
ネット保険が受け入れられるにはもう少し時間がかかる?【住宅FP関根が答える!Vol.140】
みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
みなさんは現在加入している保険、どのようにして加入しましたか。多くの方は知り合いの保険募集人、商業施設で保険を取り扱っている来店型ショップなど、いずれにせよ、誰かと対面で保険契約を行っているのではないでしょうか。一昔前までは保険契約は対面でなくてはいけませんでしたが、現在は対面でなくても保険契約を行うことができるようになってきました。それなのになぜ、実際の契約はまだまだ対面での契約であることが多いのでしょうか。今回はこのあたりについてお話していきます。
現在、銀行で言うと若い人を中心にネットバンクを利用する人が増えてきています。さらに自動車保険などもネット保険は昔に比べ一般的になってきました。では生命保険はどうでしょうか。こちらも出遅れはしましたが、保険契約もネットで完結できる商品が増えてきました。
ネット保険は人件費の削減もでき、経費のかけどころなど、非常に効率的です。しかしながら実際のネット契約状況はそれほど上抜けることはなく、意外と動きは穏やかです。
それに対して、多くの来店型ショップはショッピングモールや駅ビルなど、商業施設に店舗を構えています。こういった商業施設に店舗を構えるというのは毎月高い家賃を支払うことになります。今の時代、一見合理的ではないように見えますが、実は業績が非常に良いです。
今は何でもネットで完結できる時代です。それにも関わらず、なぜ対面での契約がメインになるのでしょうか。理由は2つあると言われています。
1つ目は保険が難しすぎるということです。生命保険文化センターの調査によると、生命保険に関する知識についての質問に対して、「かなり詳しい」と回答した人はわずか2.5%、「少し詳しい」が8.7%と回答しており、つまり約9人に1人しか、保険に関する知識を有している自覚がないということになります。
一方で「あまり詳しくない」と回答した人が33.9%、「まったく詳しくない」と回答した人が20.7%と全体を見ると保険について詳しくないという人は約55%となります。この辺りが、窓口に行って専門家と対面で契約をする理由のひとつです。つまり、自分には十分な知識がないと思っている人が保険に入りたいと思ったとき、生命保険は大切なものだからちゃんとした専門家に見てほしいと考え、結果的に窓口、対面販売のところに行き相談をするという流れです。
※参考:2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査|公益財団法人生命保険文化センター
そして2つ目の理由、それは「機能的非識字」という問題です。機能的非識字とは、簡単にいうと、文字自体は読めても、その内容をちゃんと理解するまで読み解くことができないという状態のことを言います。要するに、文字で示しても理解できないため、人から直接説明してもらわないとわからない人が多いということです。
取扱説明書が理解できない、契約を結ぶ際に、契約書の内容がわからない、医薬品の注意書きが読めないなどが機能的非識字と言われます。少しだけ難易度の高い行動を起こすときに、読まなければいけない文章の論理的思考ができません。個別の単語の意味はわかるが文章が理解できないという状態です。
実はこういった方は、かなり多く存在すると言われています。アメリカの人口は現在約3億3千万人程度いるのですが、そのうちの約3000万人が該当すると言われています。約9%程度、11人に1人の割合が該当します。アジアだと日本、韓国ともに国民の6%と言われています。
YouTubeがこれほど世界シェアを広げた理由にも直結すると思います。通常、何かわからないことがあったとき、今の時代での調べ方はネットが多いと思います。例えば、変動金利のリスクを調べたいとき、ネットで検索をかけてさまざまなサイトを見ても文字が多くて読めない、そういったところからYouTubeにきているのかもしれません。今ではYouTubeも様々なコンテンツが提供されていて、誰が書いたかわからない記事、どこを読んでもわからない記事を見るより、顔を見て説明してくれるほうが手っ取り早くわかりやすいと感じる人が多いように思えます。また、ネットの情報の真偽はわかりにくいところもありますが、情報力の高い人、信ぴょう性の高い人など、チャンネル登録者数などで図りやすいところもあります。
いずれにしても、さまざまなビジネス現場において対面ではなく、ネット完結にシフトしていくことは間違いないですが、こういった保険関係での対面契約は無くなることはないと個人的には考えます。
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。