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2023.08.09
火災保険料1割値上げの理由と今後の予想は?【住宅FP関根が答える!Vol.64】
みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
先日、火災保険料が1割値上げされるというニュースが報道されていました。報道によると損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構が6月21日、住宅向け火災保険料の目安となる「参考純率」を全国平均で13%引き上げると発表しました。火災保険のなかでも水害による補償を市区町村の被災リスクに応じて5段階に分類し、料金格差を設けることにより、実質的に値上げされるということです。火災保険料の値上げというものは、2021年にも行われておりますが、わずかその3年後に再度値上げをされることになりました。
火災保険料値上げの理由
火災保険料が値上げされている理由ですが、火災保険というと、家が火事になったときの補償と考える方が多いと思います。しかし、一般的な家が火事になる確率というものは、年数を重ねることに急激に多くなるということありません。また昔の家は、家の外側に木材など燃えやすい素材を使っていることが多かったため、比較的近隣からの家事をもらいやすかったのですが、現在建てられる家の多くは、省令準耐火といって、家の外側に燃えにくい素材を使って建てられている場合が多く、本来でしたら燃え広がりにくくなっています。
そういったなかで火災保険料が値上げされている理由は、近年多くなっている異常気象からの集中豪雨での床上浸水や、土砂災害などによるものです。こういった集中豪雨や土砂災害は予想がつきにくいもので、災害の被害による保険金の支払い規模も見えにくいため、保険料の値上げにつながっています。
ここ10年ほどで考えても、日本各地で土砂災害などの自然災害は頻繁に起きていますし、そのたびに火災保険で補償されている事実があります。異常気象など予想がつきづらいものもあるため、以前ですと火災保険は35年一括という加入ができたのですが、最近では最長で10年一括でしか加入することがなくなっていました。ただそれも昨年からは、今後の災害予想が不可能だと最長でも5年間しか入れなくなっています。
今後の火災保険料値上げ予想
そして今回の火災保険料の値上げですが、火災保険に含まれる水害の補償を、市区町村レベルの被災リスクに応じて5段階に分類し、より細分化した料金格差を設けることで、今後の災害リスクに備えていくようです。保険料の値上げによる負担額の増加は、平均で年間数千円程度の値上げになる予想です。
最近では異常気象の関係で自然災害が多くなっており、各保険会社とも、火災保険分野の収支は赤字が常態化しています。2021年にも1割程度保険料値上げしていたのですが、それでは足りずに今回、再度の値上げとなっています。
損害保険会社は、生命保険会社と異なり、毎年の保険料と支払い金額のバランスを取る必要があります。大きな災害が起こると支払い保険金が増加し、巨額の赤字を計上しなければいけません。そういったなかで近年の温暖化、異常気象の繰り返しで、自然災害が日に日に多くなってきており、一昔前までの保険料計算とは基準が全く違ってきています。
火災保険料の値上げと言うものは、住宅購入コストの増加にもつながりますし、またランニングコストの増加にもつながります。保険料が値上がりすることによって、その保険料をお支払いすることができなくなり、保険の更新をしないという方も出てくることも予想されます。
以前ですと火災保険と言うものは35年一括などで払っていたのですが、昨年までは10年が最長、さらに今後は5年が最長となっているなか、保険料が値上がりしていくというものは、5年おきに大きな保険料が課されることになり、保険の更新の際に、その保険料負担の多さから保険に加入しないという人も出てくるものも予想されます。
また今回の保険料の値上げというものは、水災と言って、床上浸水に備える保険料が値上げされているということもあり、物件を選ぶ際には、床上浸水が起こらないエリアで選ぶ人が増えていくのかもしれません。こういったリスクは、各地にあるハザードマップを見ていただけると、床上浸水のリスクもわかってきます。そのため床上浸水が起こりそうなエリアに関しては、リセール価格が落ちていく可能性もあります。
昔に比べ、気象予報の精度は上がっています。それはコンピュータの性能の向上により、より多くのデータが集められるようになってきているからです。また高解像度の数値シミュレーションを利用し、集中豪雨などもわかるようになってきました。
ただそうは言っても、地球温暖化の影響を加味した、気象予報をこの先10年、20年単位でおこない、またそれを火災保険料に反映させる未来はまだ先のようです。そうなったとき、現在のように一定の保険料を設定したため、数年経った時にその保険料では全く足りないということがわかり、今後も保険料の値上げが繰り返されるということもまだしばらく続いていくのかもしれません。
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。