契約前に知っておきたい

2024.07.03

生命保険に入れない?可能性があるときに考えるべきポイント【FP執筆】

誰でも希望する生命保険に加入できるものではありません。生命保険の加入時には審査があり、場合によっては保険に加入できないこともあります。本記事では生命保険に審査が必要な理由とともに、希望する保険に加入できないとき、どのように考えるべきかを解説します。

生命保険の加入に必要な保険会社の承諾

生命保険に加入するためには、保険会社の審査に通り、保険会社から加入を承諾して貰う必要があります。審査は自分で申告する告知が基本ですが、健康診断書のコピーや医師の診査が必要なケースもあります。

なぜ保険会社の承諾が必要なのでしょうか。被保険者(保険の対象者)のリスクを一定の範囲に保ち、契約者同士を公平にすることが目的です。

保険金を受け取る確率が異なる状況を避ける

具体的に見ていきましょう。保険加入の3年前にある病気の罹患歴があるAさんと、健康体のBさんがいます。この両者が月あたりの保険料3,000円の医療保険に加入するとします。加入後、病気になって保険金を受け取る確率は、Aさんの方が高いです。つまり、同じ金額の保険料を拠出することが、「不公平になる」という考え方です。

このため保険会社は、以下のいずれかの対策を取ります。

① Aさんの再発の可能性によって、保険加入を不可とする

Aさんの罹患歴から、再発の可能性を審査します。保険会社は「該当する保険に加入できない病歴」を明示化しており、該当するとその時点で保険に加入することはできません。病気が完治してから所定の年数が経過したら保険加入ができるものと、治癒後の年数に関わらず保険加入ができないものに分かれます。

また同様の可否を身体的な状況にも適用します。血圧や血糖値が高い場合などは、過去に罹患歴がなくても保険加入後に病気に罹患する可能性が高いとして、保険に加入できないことがあります。

② 病気罹患者向けの保険を勧める

もうひとつの考え方は、AさんとBさんに勧める保険を分けるものです。Bさんには通常の保険を勧める一方で、Aさんには持病がある方向けの保険を提案します。保険会社による加入(引受)の基準が緩くなることから、引受緩和型や無選択型といわれます。これらの保険は、通常型と比較して保険料が割高に設定されています。

生命保険料の根幹である「相互扶助」

生命保険は、「みんなで助け合おう」という相互扶助の仕組みで成り立っています。

みなさんが毎月支払う保険料を保険会社が集めて、誰かに万が一のことが起きた際、集めた保険料をもとに、その人に保険金や給付金が支払われます。

たくさんの人で誰かが何か合った際に支え合うイメージです。

人によって病気やケガのリスクが違うため、年齢や性別によって保険料の金額が異なります。リスクが高い人は、保険金や給付金の支払いが発生する確率が高いため保険料が高くなります。一般的には、年齢が上がるほど病気やケガのリスク、亡くなる確率が高いため保険料は上がります。

また、特別に通常の保険料より割増された保険料を支払うことによって他の契約者とのバランスを保つ場合もあります。この場合、特別条件付き契約といって契約者がその条件を承諾した場合のみ、契約が成り立ちます。

保険加入の鍵を握る「健康状態」と「職業」

既往歴のほかに保険加入の鍵を握るのが、健康状態と職業です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

健康状態

当然ですが、病気やケガがない状態が望ましいです。

告知する内容として

  • 現在治療中の病気の有無
  • 過去一定期間の病歴
  • 健康診断や人間ドックの結果
  • 肥満度(太り過ぎ・痩せすぎ)

などがあります。

現在、病院に通っていたり、最近まで通っていた人や直近で入院や手術を経験していたり、これからその予定がある人は加入できない可能性があります

また、太り過ぎや痩せすぎの方は生活習慣病など病気のリスクが高いと判断されて加入できないケースもあります。これらの健康状態は一朝一夕で変わる(改善する)ものではありません。長期的に計画を立てて健康状態を改善することで、通常の保険に加入できる可能性も高まります。

職業

職業によって、病気やケガ、死亡事故のリスクは異なります。リスクが高いと判断される職業の場合、加入できないケースや保障内容が制限されるケースも珍しくありません。

生命保険の加入が厳しい職業

  • スタントマン
  • テストドライバー
  • テストパイロット
  • 潜水士

生命保険の保障内容が制限される職業

  • 登山家
  • 地下作業者
  • トラック運転手
  • 漁船乗組員
  • 産業廃棄物処理者

これらは一例です。他の職業でも、保険会社がリスクが高いと判断した場合、加入できないケースや保障内容が制限されるケースがあります。

判断は保険会社によって異なるため、複数の保険会社で検討してください。

なお病歴や健康状態と異なり、過去これらの職業に就いていたという過去形は問われません。あくまで現時点の職業が審査の対象となります。また、これらの職員向けに特化した団体向けの保険なども整備されていることが多いため、「保険に入れない」ではなく、さまざまな選択肢を探してみるようにしましょう。

保険商品ラインナップの変化を常にチェック

では希望する保険に加入できず、もしもの事態に憂いが残る場合はどうすればいいのでしょうか。

預貯金に余裕を持たせる

保険に加入できなかったからといって、その方の病気のリスクが減るものではありません。いざという時に保険金を充当しようと考えていた分、預貯金に余裕を持たせるようにしましょう。またNISAなど、貯蓄性の高い取り組みも利用者が増えています。生命保険のようにいざという時にレバレッジの効いた保険金は期待できませんが、非課税のメリットなどもあるため、興味のある方は検討してみましょう。

新しい保険商品に期待する

日々あらたな保険商品が販売されています。本記事でお伝えした引受緩和型や無選択型も、決して長い歴史を持つ商品ではありません。また最近罹患者が多いメンタル疾病の保障などは、ここ数年間であらたに保険会社がフォローを充実させた分野です。

現時点では希望する保険に入れなかったり、またはすべての保険に加入できなかったとしても、状況が変わることは充分に考えられます。「自分は保険に入れない!」ではなく、新しい情報をチェックして、自分の状況に対応した保険が生まれていないかをチェックするようにしましょう。

まとめ

生命保険の加入時には審査があり、審査に通らないと加入できません。審査内容や基準は保険会社によって異なるため、一つの保険会社で加入できなかった場合でも、複数の保険会社に申し込みをすることをおすすめします。

審査は告知や健康診断の結果のコピー、医師の診査を元に行われます。加入時の健康状態や職業によって判断されます。

健康状態に関しては、病歴がなく、肥満でないなど生活習慣病のリスクが少ないと判断されると加入できる可能性が高いです。職業によっては病気やケガ、死亡事故などのリスクが高いと判断されると生命保険に加入できないケースがあります。

引受基準緩和型保険や無選択型保険であれば、通常の保険の審査に通らなかった方でも契約できる可能性があります。ただし、通常型と比べると保険料が割高で保障内容が制限されている点にご注意ください。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤崇

FP-MYS代表。ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。(執筆実績はこちら:https://fori.io/takashi-kudo)

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