著名人・専門家コラム
2024.11.29
AIと医療現場シリーズ第三弾~薬価とAI、薬の処方は変わる~【住宅FP関根が答える!Vol.126】
みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。過去2回、AIと医療現場シリーズということでお話してきました。1回目と2回目は主にAIと医師の関係について、そして今回もAIと医療現場シリーズ、今回のシリーズ第三弾は薬の処方についてお話していきたいと思います。
第一回・第二回はこちら▼
まず、薬はすべての薬において「薬価」という薬の価格が決まっています。この薬価というのは大前提として、発売されたばかりなど新しい薬の場合には高価となっており、販売され始めたのが昔だった場合などの古い薬は安価に設定されています。そのため、発売されたばかりの時には高価だった薬も、薬価が適宜見直されていくため、次第に安価になっていきます。
では現在の医療現場で使用する薬はどのように決まっていると思いますか。実際のところは医師のさじ加減で使われる薬が決まるというパターンがほとんどだと思います。医師のこれまでの経験上、聞いたことのある薬、あとはその医師と新薬などを売り込みに来るMRとの仲もあると言われています。実はこれが薬を選ぶうえで非常に重要になってきます。
MRが定期的に病院に足を運び、医師に新薬やまだその病院では使用していない薬などを紹介して売り込みをします。その営業を受け、医師は新しくその薬を病院に導入するかどうかを判断します。多くの場合、このような経緯でMRが売り込んでくる薬は、MRにとっても商売であるため、比較的新しい薬で薬価が高いというパターンが多いです。
多忙な医師にとっては普段の業務で手がいっぱいです。薬に関する情報は膨大な量であり、すべての情報を追っていくことは難しいです。そのため、MRに「有効性が高い、これだけ実績がある」と紹介されれば、その薬を使用しようと考えるのはごく自然なことかもしれません。
でもこの薬の判断、実は医師が行うより、AIが行う方が有効性は高いと言われています。なぜならば薬は有限の資源であり、なんといっても医療費の削減が今後の日本において非常に大きな課題だからです。現在進行形で日本は少子高齢化が進んでいます。社会保険料の回収は年々減っていき、支援しなくてはならない高齢者の方は増えていきます。回収できる社会保険料に対して支援しなくてはいけない人口が増えていくということです。現役世代の方の窓口での医療費の支払いは全体の3割ですが、残りの7割は加入している保険協会が支払っています。高齢者の方については1割や2割など、所得によって異なりますが、国民健康保険、地方自治体が残りの金額を支払っています。そのため、このMRからの営業で使っている薬の薬価が高額であれば、医療費のひっ迫に大きく結びつきます。
薬は山の数ほど、この世に存在しています。昔の薬でも有効性が高く、薬価が安価な薬は実はいっぱいあります。しかし、現場の医師はすべての資料、論文に目を通すことができません。そのため、実は優秀な古い薬より、MRに紹介された薬価の高い新しい薬を使用してしまうケースも存在します。
でもこの薬についての膨大なデータ、論文の学習がAIは非常に得意です。AIはデータがあればあるほど、正確性が上がり、より適切な薬の処方を行っていくことが可能になっていきます。今までは医師個人の判断でおこなっていた医療を、データ化していくことで、AIの活用、医療費の削減につながっていくと考えられています。
既にひっ迫する医療費を見かねて度重なる薬価の引き下げを行っていますが、薬価の引き下げも限界まできている状況です。これ以上製薬会社にとって苦しい状況が続いてしまうと、主要な薬に関して海外への依存が高まってしまう可能性があります。しかし、この海外への薬の依存は非常に怖いところもあります。日本における深刻な円安問題です。長い目で見ると、徐々にですが円安傾向は高まっています。この円安、みなさんもすでにいろいろなところで影響を受けているのではないでしょうか。薬に関しても同じです。円安が進めば今よりも価格は高騰していく可能性が高いです。
また、医療費の削減のため、古い薬を使用することにも課題はあります。何度も言いますが古い薬は薬価が安いです。安すぎる薬は製薬会社にとっては利益が出ないため、積極的に生産することを避ける動きがあります。そのため、有効性はあるのに古い薬が不足しているというのが現状です。
古い薬を積極的に作らない理由はほかにもあります。新型コロナウイルスによる原材料の不足であったり、利益率の低下、そして品質管理の厳格化がとても大きな要因になっています。実際に製薬会社では過去に不祥事を起こしてしまっているところもあり、品質管理には大掛かりな労働力が必要になります。儲からないのに行う厳格な品質管理は製薬会社にとっては大きな負担となっており、可能な限り利益の出やすい薬に絞って管理したいというのが製薬会社の本音です。医療費を抑えたい国、利益を生みたい製薬会社、このあたりの調和をどのようにとっていくかが今後の課題になっていくと思われます。
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。