契約前に知っておきたい
2021.09.17
認知症でも加入できる保険ってあるの?
認知症になると、治療のための医療費や施設への入居費用、デイサービスなどの介護費用が発生します。
認知症になる前から保険に加入していると安心ですが、そうでない方や身近に認知症の方がいらっしゃって気になっている方もいるかと思います。
本記事では認知症になってからでも保険に加入できるのかと、認知症に備えるための保険について解説します。
現在、65齢以上の6人に1人は認知症患者と言われています。長生き、高齢化社会を迎え、認知症がめずらしいことではなくなったいま、将来に備える目的で本記事の内容を参考にしてみてください。
参照:生命保険文化センターHP|認知症患者はどれくらい?
■認知症になると保険に加入することは難しい
結論から言うと、認知症になってからでは基本的に保険契約を結ぶことはできず、加入できる保険はないと考えられています。
法律の問題ですが、保険契約を結ぶためには意思能力が必要とされています。
意思能力とは、行為の結果を判断することができる精神能力のことです。
認知症を患っている影響で、意思能力がないと判断されると保険契約を結ぶことができなくなります。
また、成年後見人や家族が代理人となったとしても、認知症になった方を被保険者とする生命保険契約も結ぶことはできないとされています。
認知症患者の意思能力は事例ごとに判断されるため、認知症の状態によっては意思能力があると判断されることもあります。
その際は保険に加入できる可能性があります。
ただし、保険に加入するには告知(審査)があるため、意思能力があると判断されたとしても、認知症になった原因や病歴が原因で加入が難しい可能性が高いです。
■認知症でも加入できるかもしれない保険
意思能力がある状態であれば、生命保険契約自体は可能なため、保険に加入できる可能性はあります。
告知項目の少ない引受基準緩和型保険や健康告知のない無選択型保険は審査の基準が低いです。
ただし、入りやすくなっている代わりに、保険料の負担が大きく、保障内容が制限されているなどのデメリットがある点に注意が必要です。
保険料と保障内容をよく比較して、加入するかどうか慎重に検討するのがおすすめです。
■認知症に備えるための保険
認知症に備えるための保険としては介護保険・認知症保険があります。
注意点として、健康なときに保険に加入していても、将来、認知症になった際に保険金を請求できないケースが想定されます。保険金は請求しないと、勝手に振り込まれることはありません。
万が一、認知症や介護状態になった際にスムーズに保険金を受け取るため、あらかじめ指定代理請求人を指定しておくことをおすすめします。指定代理請求人には配偶者や子ども、孫などが指名できます。
また、介護状態や認知症になった場合、預金口座に貯金があっても、本人以外の家族がお金を引き出すにはしばらく時間がかかるケースも想定されます。保険会社によりますが、指定代理請求人の口座に保険金・給付金を振り込みをしてくれる保険会社もあります。あらかじめ万が一のときの保険金受取口座の取り扱いについても確認しておくと安心です。
また、民間の医療保険以外に公的介護保険もあります。
認知症になった際に受けられる公的介護保険
要介護状態の認定を受けると、公的介護保険制度を利用できます。
公的介護保険では、介護を必要とする度合いに応じて「要支援1〜2」「要介護1〜5」の7段階に分けられます。
介護費用の負担を原則1割とし、月の介護費用が一定額を超えた場合は、申請が必要ですが、高額介護サービス費として超えた金額が支給されます。
介護費用の平均
生命保険文化センターの「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護費用の平均は月額7.8万円とされています。
年額に換算すると、93.6万円です。
なお、在宅介護の平均は月額4.6万円、施設での介護の平均は月額11.8万円となっています。
月額の費用の他にも、自宅の改修や介護用ベッドの購入などに費用が必要なケースもあり、その平均は69万円です。
これらの費用は公的介護保険の自己負担分を含めてのデータです。
費用ももちろん、介護はいつまで続くか分からない終わりの見えない不安に加え、周りの家族の精神的な負担も大きいものです。
介護状態の家族を支えるために、仕事をやめざるを得ないケースもあります。
もしも5年、10年と介護費用がつづくとしたら、年金や貯蓄でカバーできるだろうか?
家族が働きつづけられるだろうか?
など、費用面と家族の負担をイメージして、民間の保険に加入する必要があるかどうかの判断にお役立てください。
参照:生命保険文化センター 「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」
介護保険
認知症となり、介護保険の給付条件を満たすと、給付金を受け取れます。保険会社や保険商品によって、介護保険金が受け取れる条件は異なります。
給付条件を満たさないと、認知症となっただけでは給付金を受け取れない場合がある点には注意が必要です。
民間の介護保険の特長は現金給付で、まとまった一時金や年金が受け取れることです。
自宅の改修や介護用ベッドの購入など、公的介護保険では賄うことができない費用にも自由に充てられる点がメリットです。
認知症保険
認知症に特化した保険です。
介護保険と同様に、給付条件を満たすと一時金か年金形式で給付金を受け取れます。
また、商品によっては、認知症患者が第三者を傷つけてしまった際の治療費をカバーできるものもあります。
この点が介護保険と大きく異なる点です。
医療保険の特約
医療保険だけでも、入院した場合など給付条件を満たすと給付金を受け取れますが、介護保険や認知症保険と比較すると、認知症の観点での保障は薄いです。
ただし、医療保険に、特約として介護年金特約や介護一時金特約などを付加すると介護にも対応できる内容にできます。保険会社や保険商品によって特約の種類や受け取れる条件が異なります。
介護保険や認知症保険を検討する際には、単独で加入する方法のほか、医療保険の特約でカバーする方法も選択肢のひとつです。
■まとめ
認知症になると、意思能力がないと判断されるケースがあるため、その場合、基本的に新たに保険契約はできません。
そのため、生命保険や医療保険、介護保険など、ご自身に必要な保障について健康なうちに改めて考えておくことが大切です。
また、公的な保障として公的介護保険があります。認知症になり、要介護認定を受けると制度を利用できます。この制度によって介護サービスの費用が原則1割負担になるなど、介護費用の負担が抑えられます。
しかし、公的介護保険があっても自己負担費用がかかります。民間の介護保険や認知症保険は現金が受け取れるため、介護サービスを利用する際の自己負担分や、民間のサービス利用費、自宅のリフォーム費用などに自由に充てられます。保険の種類としては介護保険や認知症に特化した認知症保険があります。また、医療保険の特約でも介護の保障を上乗せできる場合もあります。介護保険や認知症保険、医療保険の特約などを比較してして考えてみましょう。
また、認知症になると意思能力の低下により自分で保険金や給付金の請求ができないケースがあります。請求をスムーズに行えるようにあらかじめ指定代理請求人を指定しておくことをおすすめします。
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リアほMAGAZINE編集局
保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。