保険の基礎知識

2023.05.25

生命保険と相続 特別受益に該当するケースとは【FP監修】

監修者情報

株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。

相続には、相続人同士の公平性を保つために特別受益の考え方があります。では、複数の相続人のうち、特定の相続人だけが被相続人の生命保険から保険金を受け取った場合、その保険金は特別受益といえるのでしょうか。

この記事では、特別受益の概要を紹介したうえで、生命保険が特別受益となるケース・ならないケースの例や、特別受益と判断される場合の計算方法などについて詳しく解説します。

特別受益とは

民法で定められている特別受益とは、一部の相続人だけが贈与や遺言による贈与(遺贈)によって被相続人(相続の対象となる人・亡くなった人)から受けた特別な利益のことです。

たとえば、何人か子どもがいる場合に、特定の子どもだけが生前に親から車や家を贈与されたり、結婚費用や留学費用などの援助を受けたりしていることがあります。このように一部の相続人だけが多く財産をもらい(=特別に利益を受けている)とき、相続人同士が不公平にならないようにするのが、特別受益というルールです。

特別受益を受けた相続人がいると、遺産分割協議において特別受益を受けた相続人の相続分を特別受益の分だけ減らして調整します。これを特別受益の持ち戻しといいます。

特別受益の対象は4つ

 民法で規定されている特別受益の対象は以下の4つです。

  • 結婚:結婚の際の持参金や嫁入り道具など
  • 養子縁組:養子縁組に際しての住居の準備費用や支度金など
  • 生計の資本:車や不動産など生計のために必要なもの
  • 遺贈:遺言によって受け取った財産

 それでは、生命保険が特別受益となる可能性があるのか、次の項目で解説します。

生命保険金が特別受益に該当するケース・しないケース

結論からいうと、生命保険は原則として相続財産にはなりません。しかし、状況によっては特別受益に該当する場合があり、その際は保険金を相続財産に含めて考えることが必要です。

ここでは、生命保険が原則として特別受益とならない理由や、反対にどのような場合に特別受益とされるのか、過去に保険金が特別受益に該当するとされたケースの例などを紹介します。

生命保険が特別受益にならない理由

生命保険は、原則として特別受益には該当しません。その理由は2つあります。

1つ目の理由として、そもそも生命保険が相続の対象ではないことが挙げられます。相続は相続人が亡くなった時点での財産に対して発生しますが、被相続人にかけられた生命保険(死亡保険)から保険金が支払われるのは、被相続人が亡くなったあとです。

そのため、生命保険は、被相続人から受け取った財産ではなく、保険会社という第三者から相続人が得た固有の財産だと考えられているのです。よって、原則として生命保険金は相続財産の対象にならないことから、特別受益にも該当しないといえます。

2つ目の理由は、保険金として相続人が受け取る額と、被相続人が生前に払っていた保険料がイコールではないことです。特に、保険料の支払いで大きく被相続人の財産が減ったような場合以外は、特定の相続人が生命保険を受け取ったことで不公平が生じたとはいえないでしょう。

相続に不公平が生じる時は特別受益とされる可能性もある

原則として生命保険は特別受益とならないものの、過去には特別受益と判断されたケースもあります。生命保険によって相続に著しい不公平が生じているようなケースです。

最高裁は、「特段の事情」により、保険金の受取人である相続人と、そのほかの相続人との間に著しい差がある場合は保険金請求権を特別受益とみなせるとしています。

特段の事情とは

「特段の事情」とされるものの例を以下に紹介します。最高裁によれば、生命保険が特別受益となるかどうかは、以下に示す事情を総合的に考慮して判断すべきとされています。

  • 保険金の額
  • 遺産総額に対する保険金の額の比率
  • 被相続人の介護などに対する貢献の度合い
  • 被相続人と同居していたかどうか
  • 被相続人と保険金を受け取る相続人との関係
  • 被相続人と他の相続人との関係
  • 各相続人の生活の実態

 など

生命保険が特別受益とされたケース

過去に生命保険が特別受益とされたケースには、

  • 相続財産が1億円、保険金額も1億円
  • 相続財産が8,000万円、保険金額が5,000万円

などがありました。

反対に、相続財産が6,000万円、保険金額は600万円のケースでは、特別受益ではないと判断されています。

「一部の相続人に多くのこしたい」場合には、相続専門の弁護士などの専門家に相談のうえ贈与や遺贈などの方法を検討しておくほうが安心でしょう。

生命保険が特別受益となる場合の計算方法

生命保険が特別受益として取り扱われる場合、相続財産の計算では「特別受益の持ち戻し」が必要です。

たとえば、遺産の総額が1億円で、2人の子ども(相続人)のうち1人だけが6,000万円を被相続人の生命保険から受け取っていたケースで考えてみましょう。

この場合、6,000万円を特別受益として、遺産総額の1億円に加えると合計は1.6億円です。2人の相続人を平等に取り扱うため、それぞれが相続する金額は1.6億円を2で割った8,000万円となります。この場合の生命保険金は司法判例により、特別受益に該当する可能性がありますので、弁護士に相談したうえで保険運用を進めていくようにしましょう。

まとめ

生命保険は原則として特別受益とはされませんが、複数の相続人の間に著しい不公平がある場合は保険金を特別受益として相続財産に含めることがあります。生命保険が特別受益となるかどうかは、遺産や保険金の額、被相続人との関係などの事情を総合的に考慮して判断されます。

遺産の総額に対して、特定の相続人が受け取る保険金額が大きい場合などは、注意したほうがよいかもしれません。この記事を参考に、遺産や保険の金額・受取人などを確認してみてはいかがでしょうか。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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リアほMAGAZINE編集局

保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。

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