保険の基礎知識
2022.11.02
がん保険のおすすめの選び方とは?医療保険・三大疾病保障保険との違いも紹介
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。日本FP協会AFP認定者。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。
「がん保険はどうやって選べばいいの?」
「がん保険には入った方がいいの?」
「おすすめのがん保険ってあるの?」
このように、がん保険への加入を検討しているけれど、どのように選べばいいかわからなくて悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、がんとはどのような病気なのか、またがん保険の保障内容や種類ごとのおすすめポイント、がん保険の年代別の選び方などを紹介しています。
がん保険の基本的な知識から、自分にあった保険の選び方まで解説しているため、自分がどんな保険に入ればいいのかわからないという人は、知識を深めることができるでしょう。
がん保険について知りたい方は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。
そもそもがん保険とは?
がんとは、日本人の死因の上位を占めている三大疾病のうちの1つであり、治療の長期化や治療後の再発などで、治療費等の負担が重くなることも多くあります。
そのため、医療保険でカバーできないケースに備えて、経済的負担を和らげるために、がんだけに特化した保障内容を持つがん保険があります。
がんは、いつ誰が発症してもおかしくない病気です。そんながんに備える保険とはどのような保障なのか、ほかの医療保険とはどういった違いがあるのか、詳しく解説します。
がん保険の概要
がん保険とは、がんにかかった場合の治療費等の負担をカバーするための保険です。
医療保険と同じように健康リスクを保障しますが、がんという特定の病気に限定した保障内容になっているため、より手厚くサポートしてもらえます。
がんと診断されたときに受け取れる給付金や、入院や通院、手術の際に受け取れる給付金などがあるため、がん治療にかかる幅広い費用を支給してもらうことができます。
ただし、加入するがん保険によって保障内容が異なり、どの商品でもすべての費用を負担してもらえるわけではありません。なかには、がんによって働けなくなるリスクや、収入が減るリスクなどに対応した保障内容のがん保険もあります。
医療保険や三大疾病保障保険との違い
がん保険への加入を検討している人のなかには、すでに医療保険や三大疾病保障保険に加入していて、がん保険とどう違うのか、追加で加入した方がよいのか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
医療保険とは保障対象をがんに限定しておらず、幅広いけがや病気を対象に保障する保険のことです。
そして、三大疾病保障保険とは、がんのほか、心疾患と脳血管疾患を含めた三大疾病が保障対象となる保険です。
医療保険 | がん保険 | 三大疾病保障保険 | |
支給対象 | 病気やけが | がん(悪性新生物や上皮内新生物) | 死亡あるいは高度障害状態になった時、三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患) |
保険料 | 幅広い病気やけがなどに対応するためがん保険より高い | がん以外の病気やけがは保障しないため医療保険よりも安い | がん保険よりも高い |
がん保険に加入している人の割合
年齢を重ねるにつれ、がんを発症するリスクが高まりますが、実際のところがん保険に加入している人はどれくらいの割合になるのでしょうか。
公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、がん保険の世帯加入率は66.7%です。民間の生命保険会社が取り扱う保険商品のうち、医療保険が93.6%と一番加入率が高く、がん保険はそれに次いで2番目に加入率が高くなっています。
がん保険の加入率は年々増加している傾向にあり、万が一のために加入している人が増えているのでしょう。
出典:2021年度 生命保険に関する全国実態調査|生命保険文化センター
参考:https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/sokuhoubanR3.pdf
がんってどんな病気?
それではそもそもがんとはどんな病気なのでしょうか。
がんは悪性腫瘍とも呼ばれ、もともと正常だった細胞が何らかの原因で無秩序に増え続けてしまう病気のことです。
本来なら正常な細胞には寿命があり、体の状態によって細胞分裂をし、何か問題がある細胞は自滅していきます。しかし、がんの場合は突然変異によって生み出された遺伝子に異常がある細胞が、分裂を繰り返し続け、体の中に細胞のかたまりをつくります。
がんになると発生した場所だけでなく、周りの器官に広がることや、さらに血管やリンパ管などに入り込んで、ほかの器官に転移して全身に広がっていくこともあります。そのため、治療が長期化する傾向にあります。
出典:がんという病気について|国立がん研究センター
参考:https://ganjoho.jp/public/knowledge/basic/index.html
【部位別】がんの罹患率
がんは、臓器や皮膚、骨、血液など身体の様々な場所で発症するリスクがある病気です。いつどの部位にがんが発生するかは人によりますが、性別それぞれ特有のがんもあり、罹患率も高くなります。
2019年の部位別のがん罹患率を見ると、男性は前立腺がんが最も高く、次いで大腸がん、胃がん、肺がんの順となります。
一方女性は乳房がんが最も高く、次いで大腸がん、肺がん、胃がんの順になります。
出典:最新がん統計まとめ|国立がん研究センター
参考:https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
がんの死亡率
日本人は一生のうちに2人に1人ががんと診断されるといわれています。
国立がん研究センターの2020年の調査によると、がんの死亡率は男性が26.7%(4人に1人)、女性は17.9%(6人に1人)となっています。
この数字を見ると、がんを誰でも罹患する病気だと感じる方も多いのではないでしょうか。
医療技術の発展のため、がんになったからといってすぐに死を迎えるわけではありません。しかし、日本では高齢化に伴いがんになる人が増えてしまい、がんによる死亡率も高くなっているのです。
出典:最新がん統計まとめ|国立がん研究センター
参考:https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
がんの治療にかかる費用の目安
がんにかかる治療費は高いというイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。
がんといっても、がんができた部位や進行状況によって症状が異なり、必要になる治療も変わってきます。
厚生労働省の調査によるがんの平均入院日数と、費用は以下の通りです。
出典:平成29年度医療実態調査|厚生労働省
参考:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450389&tstat=000001044924&cycle=0&tclass1=000001044945&tclass2=000001132104&tclass3val=0
出典:平成29年患者調査|厚生労働省
参考:https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003318609
平均入院日数 | 1日当たりの入院費用 | |
胃がん | 19.2日 | 約15,000円 |
結腸及び直腸がん | 15.7日 | 約17,000円 |
気管、気管支及び肺がん | 16.3日 | 約16,000円 |
がん保険の5つのおすすめの選び方
がん保険は様々な保険会社で販売しているため、どれを選べばいいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
人によって、保険料の安さや充実した治療費の備え、一時金の受け取りなど、優先したいものは違います。
がん保険のおすすめの選び方を5つ紹介しますので、どんながん保険に加入するか悩んでいる人は、ぜひチェックしてみてください。
1:保障内容から選ぶ
がん保険を選ぶときに大切なのは、保険の内容が最新のがん治療に対応できる保障かどうかという点です。医療技術の進歩で早期発見が可能になり、新しい治療法なども登場しています。
以前は入院して治療することが多かったがんですが、現在は医療技術の発展で入院日数の減ったがん治療も増えました。入院したとしても短期間で済むことが多く、通院で治療していくケースが多いのです。
現在のがん保険には、がんと診断されたとき一時金を受け取れる診断給付金をメインにした診断給付金特化型があります。
また、がんで入院したときに入院日数に応じて給付金を受け取れる入院保障特化型、損害保険会社で取扱う実際にかかった費用を負担してくれる治療費特化型などがあります。
がんの治療が多様化している中で、どんな保障があれば万が一の備えとなるか考えて選びましょう。
2:終身か定期かで選ぶ
ほかの保険と同じようにがん保険にも、保障が一生涯続く終身タイプと、一定期間で保障が終わる定期タイプがあります。
終身タイプは任意で解約するまで保障が途切れず一生涯続く保険です。そのため、定期タイプに比べると加入時の保険料がやや高く設定されています。ただし原則として保険料が上がることはありません。
一方定期タイプは10年や15年などと保障期間が決められていて、その期間を超えて保障継続する場合は更新手続きが必要となります。
保障期間が限定的なため、終身タイプより保険料は安くなっていますが、定期タイプのがん保険を更新すると、年齢に応じて月々の保険料負担も大きくなります。
3:掛け捨て型か貯蓄型かで選ぶ
がん保険の多くは支払った保険料が返ってこない掛け捨て型が一般的ですが、なかには保障性に加え、満期保険金や解約返戻金を受け取れる貯蓄型もあります。
掛け捨て型には貯蓄性はありませんが、安い保険料で保障を受けることができます。また、保障内容を見直しやすいため、ほかの保険へ乗り換えやすいというメリットもあります。
保険料を増やしたくない方や、ライフプランに応じて保障を見直したい人には掛け捨て型が向いているでしょう。
貯蓄型は保険期間満了時に受け取れる満期保険金や、契約を解約したときに受け取れる解約返戻金などを備えた保険です。
契約期間中の保障とあわせて将来に向けた貯蓄もできるメリットがありますが、保険加入期間が短い場合は支払った保険料よりも受け取り金額が下回ることがあるため注意が必要です。
4:保険料だけで決めない
保険料は長期間にわたって支払うため、できるだけ安く抑えたいと考える人も多いでしょう。
しかし、保険料が安いがん保険は、保障内容に制限がある場合があります。また、保証金額が低く設定されていることもあるため注意が必要です。
万が一のときに十分な保障が得られるように、保険料だけでなく保障内容もしっかりチェックして契約するようにしましょう。
5:女性特有のがんに対する保障内容や特約から選ぶ
女性特有のがんとは、乳がんや子宮がん、卵巣がんなどがあり、若いうちからがんになる可能性があります。そのため、基本保障である主契約に特約として女性特有のがんを保障する商品や、主契約そのものが女性特有のがんに手厚い保険もあります。
こうした女性向けのがん保険に加入していれば、万が一女性特有のがんになったときに受け取れる給付金が多く、また乳がん手術後の乳房再建手術を受けたときに給付金を受け取れることもあります。
より充実した保障を備えたい人は、女性向けのがん保険や特約も検討するとよいでしょう。
【年代別】がん保険の選び方のポイント
がんは年齢を重ねるにつれ罹患リスクが高くなる病気です。
そのため年代ごとに、自分にはどのようなリスクがあるのかを考えて、がん保険を選ぶことが重要です。また、年代によって収入や生活環境などが異なるため、ライフステージにあわせた保障対象や、余裕を持って支払える保険料などを考えましょう。
- 30代の場合
- 40代の場合
- 50代の場合
30代の場合
一般的に30代は仕事もプライベートも忙しく、責任が増す時期になります。そしてがんになるリスクが高まり始める時期でもあります。
そのため、自分自身と家族の将来のために、がんになったときのリスクについて考えることが大切です。結婚や子育てなど、環境変化の大きい30代は、がんになったときの治療費はもちろんのこと、家族が生活していくために十分な生活費を用意できるのかがポイントです。
がんにかかれば収入が減る可能性もあるということを考え、万が一のときの不安を軽減する方法のひとつとしてがん保険を検討しましょう。
40代の場合
40代は若いころに比べて健康上のトラブルが増えてくる年代です。がんのリスクも40代を境に上昇する傾向にあり、それに伴いがん保険への加入や保険の見直しを考えるタイミングでもあります。
仕事でも家庭でも大きな責任を担う世代だからこそ、長期間の治療や、それに伴う収入の減少などに対応できるような備えを考える必要があります。
がんになって今まで通りの働き方ができなくなる可能性を考えると、治療費の保障だけでなく、生活費などの足しにできる一時金を受け取れる保険を選ぶことも一つの方法でしょう。
50代の場合
がんの罹患率は50代になると格段に上昇します。50代になるとがん保険の保険料も高くなることが多いため、途中で満期を迎えてしまう定期型よりも、保障が一生涯続く終身型を選ぶ人が多くなります。
また、50代になると老後の資産形成も意識し始める年代です。このタイミングでがんになり多額の費用がかかると、老後資金を取り崩すことにもなりかねません。
そのため、万が一の備えとあわせて、老後の不安を軽減するためにがん保険の契約を検討するとよいでしょう。
おすすめの選び方やポイントを参考に自分に合うがん保険を見つけよう
がん保険は、がんに特化した保障を持つ保険です。
医療技術の進歩で治療方法も変化してきたため、保障内容も変わってきました。治療できる病気ではありますが、治療の長期化や、入院ではなく通院をメインとした治療方法だったりします。
また、性別や年代によっても重要となる保障が異なるため、特約などを組み合わせて自分にあわせた保険を見つけましょう。
WRITER’S PROFILE
リアほMAGAZINE編集局
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