保険の基礎知識
2023.07.06
がん保険は生命保険会社?損害保険会社?それぞれの特徴と選び方のポイント【FP監修】
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。
がん保険といえば生命保険会社のイメージがあるかもしれませんが、実は損害保険会社でもがん保険を取り扱っています。どちらもがんの治療にかかる費用に備えられる保険ですが、それぞれ特徴があり、どのような人に向いているかも違います。
この記事では生命保険会社のがん保険と損害保険会社のがん保険の違いを解説します。選び方や組み合わせ方のポイントも紹介しますので、がん保険の加入を検討している人はぜひ参考にしてください。
生命保険会社は「保障」、損害保険会社は「補償」
がん保険について、生命保険会社では「保障」、損害保険会社では「補償」という言葉を使います。この2つの違いを見てみましょう。まず保障には「守る」という意味があることからわかるように、生命保険会社のがん保険は、がんの治療のための金銭的なサポートという位置づけです。もしもの時には、加入時に決めた保障額が受け取れるため、治療費などの経済的リスクに備えられます。そのため、生命保険会社のがん保険の場合は、実際にがん治療でかかった費用より受け取る給付金が多い場合も、少ない場合もあるでしょう。
一方、損害保険会社の補償には「損害を償う」という意味があります。そのため、がんの治療費で実際にどれだけの金額がかかったかが重要です。損害保険のがん保険では、被保険者ががん治療で払った金額を保険会社が補てんしてくれるためです。
ただし、がん診断給付金のように、生命保険会社と損害保険会社どちらのがん保険にも共通する保障もあります。診断給付金があるがん保険では、がんと診断された際に一時金としてまとまったお金を受け取れます。受け取ったお金は治療費としても使うのはもちろん、入院前の準備費用や生活費の補てんなどにも使えるなど、自由度の高さが魅力です。
保障内容・補償内容の違い
それでは、生命保険会社と損害保険会社それぞれのがん保険について、実際の保障(補償)内容にどのような違いがあるか見てみましょう。
生命保険会社のがん保険は「定額給付」
生命保険会社のがん保険では、もしもの時に加入時に設定した金額が受け取れます。たとえば、保障内容として以下のようなものがあります。
- 手術給付金
- 入院給付金
- 通院給付金
手術給付金は、1回の手術につき一定の金額が受け取れる保障です。また、入院給付金・通院給付金は、日額5,000円や1万円などの基準となる金額を加入時に設定すると、入院や通院した日数に応じて支払われます。生命保険会社のがん保険では、実際に治療費がいくらかかったかではなく、定額が給付されるのがポイントです。
損害保険会社のがん保険は「実損てん補型」
損害保険会社のがん保険でも、生命保険会社のがん保険と同じように入院や通院、手術などの治療費がカバーされます。しかし、損害保険会社のがん保険の場合は、もしもの時に受け取れる金額が実際にかかった医療費によって変わるのがポイントです。たとえば、入院治療費は無制限、通院治療費は5年ごとに1,000万円までなどの制限内であれば、かかった医療費と同額を受け取れます。ここでいう医療費には、先進医療や自由診療などの保険適用外の治療でかかった費用も含まれます。そのため、費用を気にせず治療に専念できるのが損害保険会社のがん保険の特徴だといえるでしょう。
保険期間の違い
生命保険会社と損害保険会社のがん保険には、保険期間にも違いがあります。損害保険会社は保険期間が短く、生命保険会社はそれよりも長いのが特徴です。ここで詳しく見てみましょう。
終身タイプと定期タイプから選べる生命保険会社のがん保険
生命保険会社のがん保険には、保障が生涯続く終身タイプと、一定期間に限られている定期タイプがあります。定期タイプのがん保険は、保険期間が10年から20年程度と決められていますが、終身タイプよりも保険料が割安です。また、更新することで継続して保障を受けられますが、保険料は更新前よりも上がります。一方、終身タイプでは基本的に加入後の保険料は一定です。そのため、同じ保険料で生涯保障が受けられるのがメリットです。
なお、終身タイプは保険料の支払方法を選べる場合があります。一般的に、終身払いと短期払いの2種類の選択肢があり、加入期間中ずっと保険料の支払いが必要なのが終身払いです。短期払いでは、終身払いよりも保険料が高い代わりに、60歳など一定の年齢を超えると保険料の支払いがなくなります。
損害保険会社のがん保険は「定期タイプ」のみ
損害保険会社のがん保険は、保険期間があらかじめ限定されている定期タイプしかありません。生命保険会社のように、一生涯保障が続く終身タイプの取り扱いはないうえに、定期タイプの保険期間も1年や5年など、生命保険会社のものより短いのが特徴です。保険料は割安なものが多く、保険期間が終わると保険契約を更新することも可能です。ただし、がん保険の保険料は年齢に応じて高くなるのが一般的であるため、更新のたびに保険料も上がると考えておきましょう。また、加入中にがんになっても更新は可能ですが、保険の加入・更新には70歳や90歳などの年齢制限があることにも注意が必要です。
生命保険と損害保険のがん保険を選ぶポイントは?
生命保険会社と損害保険会社では、同じがん保険でも違いがあることを解説しました。それぞれの特徴を生かし、自分に合うがん保険を選ぶポイントを紹介します。
一定期間だけ手厚い保障が必要なら損害保険会社のがん保険
損害保険会社のがん保険は、保険期間が決まっている代わりに保険料が割安です。そのため、子どもの教育費が必要な期間など、一時的に支出が多い期間だけ備えたい人におすすめです。
特に、40代頃からがんの罹患率が高くなっていきますが、この年代は子どもが大きくなり、教育費の負担が大きくなるタイミングでもあります。もしがんが原因で働けなくなったら、収入が減るリスクもあるため、保険で備えておくと安心です。損害保険会社のがん保険であれば、保険料を抑えながらがん治療による経済的リスクに備えられるでしょう。
また、高額になりがちな自由診療や先進医療などの治療費もカバーされるため、治療の選択肢が広がるのも損害保険会社のがん保険のメリットです。そのため、終身タイプのがん保険に入っている人が、教育費負担などが大きい時期だけ追加で加入するのもおすすめです。
生涯にわたって備えられる生命保険会社のがん保険
がんは高齢になるほど罹患率が上がります。そのため、支出が多い若い時だけでなく、老後のことも考えるなら生命保険会社の終身がん保険がおすすめです。終身タイプのがん保険は、加入した時の年齢で保険料が決まり、基本的に加入後に保険料が変わることはありません。できるだけ早く加入することで、退職し、年金が主な収入源になってからも保険料の負担を抑えられるのもメリットです。
まとめ
生命保険会社と損害保険会社のがん保険は、どちらもがんの治療費をカバーするためのものですが、給付金などの支払われ方と保険期間に違いがあります。がん保険の特徴を生かして、教育費負担が大きい時期や定年退職後など、自分が必要とする保障に合わせて選びましょう。場合によっては、生命保険会社と損害保険会社のがん保険を組み合わせるのもおすすめです。
この記事が、がん保険について理解を深める助けになれば幸いです。
WRITER’S PROFILE
リアほMAGAZINE編集局
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