保険の基礎知識
2022.05.10
判断能力を失ったとき医療保険の契約はどうなるのか?成年後見人とは?【FP監修】
もしも家族が認知症などになって判断能力を失ってしまったら…。
医療保険に加入している場合に判断能力を失ってしまうといざというときに保険の請求手続きが本人だけでは困難になってしまいます。
判断能力を失ってしまった後では保険に加入しているかどうかの確認も難しくなってしまうでしょう。
本記事では判断能力を失ってしまう前に家族ができる対策について解説しています。
またすでに判断能力がなくなってしまった場合の対処法についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
判断能力を失ってしまったらどうなるのか?
判断能力を失うということは例えば、認知症などになってしまった場合が考えられます。
契約者である本人が認知症と診断されると、意思表示が難しくなるため日常生活を送る上でのあらゆる判断ができなくなってしまいます。
保険の契約もその一つで、毎月の保険料の支払いから保険金や給付金を受け取るための請求手続きも本人だけでは難しいと言えるでしょう。
医療保険に加入していても、保険に加入していることを本人以外誰も知らなければ、いざというときに受け取れるはずのものが受け取れなくなってしまいます。それでは医療保険に加入している意味がなくなってしまいますよね。
そうならないためにも、判断能力があるうちに家族に保険に加入していることを伝えて、情報を共有することが大切になってきます。
次に、本人の判断能力が失われる前に家族ができる対策についてみていきましょう。
判断能力を失ってしまう前に家族ができる対策
家族が保険に加入しているのが分かったら、保険料の支払いと保険金や給付金の申請手続きが必要になったときに困らないようにすることが大切です。
保険料の支払い方法を変更する
毎月の保険料の支払いが滞らないようにするためにも、たとえば年金などが振り込まれる口座に変更するなど、確実に支払いができるようにしましょう。
また老後資金に余裕がある場合には、保険料の支払いを前納することも検討してみると良いでしょう。
指定代理請求特約を付けると手続きがスムーズ
医療保険の契約時にあらかじめ「指定代理請求特約」を付けておくことで、いざというときの請求手続きがスムーズになります。
通常、医療保険の場合手術や入院した場合の請求手続きは本人が申請する必要があります。
しかし、契約時に指定代理請求特約を付けることで、契約者である本人が意思表示ができないなどの理由で申請することが困難な場合に指定代理請求人が給付金や保険金の手続きを行うことができます。
契約時にあらかじめ指定代理請求特約を付けておくことで、家族が手続きするときにスムーズになります。
本人の判断能力を失ってしまった後はどうしたら良いか?
判断能力を失ってしまったら、そもそも保険に加入しているのかも分かりません。
まずは保険証書があるかどうかや通帳などから保険料の引き落としの形跡があるかどうかなど確認してみることが大切です。
保険会社が分かったら、問い合わせして相談してみましょう。
成年後見制度とは?
成年後見制度とは認知症や高齢者、精神障害、知的障害などの方が判断能力が十分でない場合に、親族や弁護士などが財産管理などを代わりに行ったり、支援したりする制度です。
成年後見人制度を利用することで、保険の手続きのほかに病院の入院手続きや介護サービスを受けたい場合に本人に判断能力がなくなっても代わりに手続きが可能になります。
また日常生活を送る上で大きな買い物をする場合や遺産相続などでも本人に不利益が生じるなどの場合にも有効で、本人に代わって契約を破棄することができます。
成年後見制度には2種類ある
法定後見制度
法定後見制度はすでに判断能力が十分でない場合に、本人や家族が家庭裁判所に後見開始の申し立てを行います。本人の能力に応じて「後見」、「保佐」、「補助」の3種類に分けられます。後見人の候補者を選ぶことは可能ですが最終的な判断は家庭裁判所に委ねられます。
四親等以内の家族・親族が選ばれることもあれば、弁護士などの第三者が選任されることもあります。
任意後見制度
任意後見制度とは将来自身が判断能力を失った場合に備えて後見人を指定することができる制度です。法定後見制度と違い、未成年者などを除き自分で後見人を選ぶことができます。判断能力が低下してきたら、自分で家庭裁判所に申し立てることで効力が生じます。
どこに相談すれば良いか?
市町村や都道府県などの自治体では成年後見制度の相談ができる窓口があります。また弁護士や司法書士といった法律の専門家に成年後見制度の利用について相談が可能です。遺産相続などについて相談したい場合には、成年後見制度の活用法も合わせて相談できるでしょう。
成年後見制度を利用する際の注意点
成年後見人を選任する際には家庭裁判所での後見開始の申し立てが必要になるだけでなく、費用も発生します。
また法定後見人の場合は専門家である第三者の可能性があり、その場合は報酬を生涯にわたって支払っていく必要があることに注意しましょう。
まとめ
判断能力を失ったとき医療保険の契約はどうなるのかについて解説してきました。
認知症などで判断能力が失われると本人だけでなく、周りの家族も困りますよね。
いつ判断能力が失われるか分かりませんので、日頃から保険に契約しているかどうか保険証書のありかなどを家族に伝えておく必要があります。
保険であれば契約時に指定代理請求特約を付けることで安心でき、また成年後見制度を利用することで日常生活のあらゆる手続きにも対応が可能になります。
判断能力が失われたときでは遅く、前もって準備しておくことで家族への負担も少なくなります。
■認知症でも加入できる保険や、認知症に備える保険についてはこちらもご参考ください。
認知症でも加入できる保険ってあるの?
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。日本FP協会AFP認定者。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。
WRITER’S PROFILE
リアほMAGAZINE編集局
保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。