保険の基礎知識
2022.03.17
個人事業主が入れる社会保険と不足している保障は?おすすめの保険を紹介!
個人事業主も年金や健康保険などの社会保険に加入できますが、会社員や公務員とは種類が違うため、保障内容が異なります。そして多くの場合、個人事業主が加入する社会保険は会社員や公務員が加入するものほど保障が手厚くありません。
たとえば、個人事業主は将来受け取れる年金額が少なかったり、病気やケガで仕事を休んでも収入減少を補填するための給付が受け取れなかったりします。そのため、個人事業主は貯蓄や保険などで、もしものときに備える必要があるのです。
この記事では、個人事業主が入れる社会保険の内容を解説し、不足すると考えられる保障を補うために個人事業主が入っておきたいおすすめの保険を紹介します。個人事業主の人や、これから個人事業主になろうと考えている人は参考にしてください。
個人事業主が入れる社会保険
個人事業主になると社会保険が変わり、会社員や公務員だったときほど手厚い保障が受けられなくなるのが一般的です。個人事業主が入れる社会保険とその内容を、会社員や公務員が入る社会保険と比較しながら紹介します。
年金
年金制度も個人事業主が加入できる社会保険の一つですが、会社員や公務員が加入する厚生年金ではなく、個人事業主が入るのは国民年金です。
国民年金では、65歳から一年間に最大(満額)78万900円を老齢基礎年金として受け取れます。しかし、厚生年金に加入していれば上記の金額に加えて老齢厚生年金も受け取れます。
また、国民年金には老後の生活費としての老齢基礎年金以外にも
- 高校生以下の子供をのこして亡くなった場合に、配偶者や子供に給付される遺族基礎年金
- 所定の障害状態になった場合に受け取れる障害基礎年金
がありますが、厚生年金に入っていれば年金額が上乗せされるうえに、受給要件が拡大します。たとえば、子供がいない厚生年金加入者が亡くなった場合でも、配偶者は遺族厚生年金を受け取れるのです。
健康保険
国民皆保険制度と呼ばれるように、個人事業主も健康保険に加入できます。しかし、個人事業主と会社員や公務員は、加入する健康保険に違いがあります。個人事業主の多くが国民健康保険に入るのに対して、会社員や公務員が入るのは健康保険組合や協会けんぽ、共済組合と呼ばれるものです。
これらの制度には以下のような共通点があります。
- 医療費の自己負担割合は原則3割
- 高額療養費制度
- 出産一時金
一方、以下の3つのように健康保険組合などにはあるのに、国民健康保険にはない制度があります。
- 扶養の概念がない
- 傷病手当金がない
- 出産手当金がない
健康保険組合などの場合、扶養といって収入が少ない配偶者や子供は追加の保険料負担なしに健康保険を利用できます。しかし、国民健康保険には扶養という概念がないため、世帯人数に応じて保険料が高くなるのです。
また、健康保険組合などのように、病気やケガを原因に仕事を休んだ場合に支給される傷病手当金や、出産のために仕事を休んだ期間に受け取れる出産手当金が国民健康保険にはありません。
介護保険
40歳以上の人は個人事業主か会社員・公務員かにかかわらず、介護保険に加入します。介護保険の保険料は健康保険とともに徴収されるため、特段、加入手続きなどは必要ありません。
また、加入している健康保険の種類によって介護給付の内容が変わることはありません。
労災保険の特別加入
業務中の事故などに対して給付が受けられる労災保険は、労働者の安全を守るための保険と位置づけられているため、個人事業主は原則として対象外です。
しかし、個人タクシーやひとり親方の大工など、ケガをしやすい一部の業種では個人事業主の特別加入が認められています。
個人事業主におすすめの保険
会社員などと比べると、個人事業主に対する社会保険による保障はそれほど手厚いわけではありません。特に国民健康保険や国民年金では保障が不足すると考えられるのは以下の3つの場合です。
- 老後の生活費
- 働けなくなったときの収入補填
- 自分にもしものことがあったときに、のこされた家族の生活費や教育費
個人事業主の人のために、これらの経済的リスクに、備えられる保険を紹介します。
個人年金保険
個人事業主が老後に受け取れる公的年金は国民年金だけですが、それだけでは資金が不足するおそれがあります。
将来、受け取れる年金額を増やす方法としては、iDeCo(個人型確定拠出年金)があります。iDeCoは税制メリットが大きいため、個人事業主なら積極的に利用したい制度の一つですが、それに加えて、保険会社が提供している個人年金保険にも加入を検討しましょう。
個人年金保険は10年〜30年ほどの期間をかけて資金を積み立て、60歳などあらかじめ自分で決めた年齢に達したら、一定期間、年金として給付を受けられる商品です。加入時に将来受け取れる年金額が決まる定額個人年金と、掛け金の運用結果によって受け取れる年金額が変わる変動定額年金があります。
所得補償保険・就業不能保険
有給休暇や健康保険の傷病手当金の制度がない個人事業主は、病気やケガなどで働けなくなるとすぐに収入が減少し、生活費などが足りなくなるおそれがあります。そのような場合に給付金が受け取れるのが所得補償保険や就業不能保険です。
2つの保険には以下のような違いがあります。
- 所得補償保険:短期(最長2年)の就業不能状態に対応。損害保険会社が販売。
- 就業不能保険:65歳までなど、長期的な就業不能状態に対応。生命保険会社が販売。
所得補償保険や就業不能保険は傷病手当金など公的保険による給付の代わりとして利用できます。働けない状態がどれくらいの期間続くかわからないことを踏まえると、できれば所得補償保険と就業不能保険の両方に加入すると安心です。
収入保障保険
収入保障保険は保険加入者が亡くなった際に、遺族の生活を守るための保険です。名前が似ているために混同されやすいのですが、休業時の収入減少に備える所得補償保険とはまったく別物です。
収入保障保険では、自分にもしものことがあったときに、のこされた家族が保険期間が終了するまでの間、毎月一定額の給付金を受け取れるため、小さなお子さまがいる人などに利用されています。
国民年金の遺族基礎年金だけではのこされた家族の生活費や教育費として十分でないと考える場合に、収入保障保険が役立ちます。
まとめ
個人事業主も年金や健康保険、介護保険などの社会保険に加入できますが、会社員や公務員のように保障の上乗せがないため、足りない保障には保険などで備える必要があることを解説しました。
特に老後の生活費の不足や働けなくなった際の収入減少など、個人事業主を取り巻く経済的リスクに備える方法として各種の保険が役立ちます。もしものときに備え、安心感を得るために保険を上手に利用したいですね。
また、勤務先からのサポートが期待できない個人事業主は、社会保険の加入手続きなども自分でする必要があります。この記事が必要な手続きを進める参考になれば幸いです。
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リアほMAGAZINE編集局
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