保険の基礎知識
2023.05.10
脳卒中は入院期間が長くて医療費がかかる?万が一に備えてできること【FP監修】
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。
脳卒中は、がん・心疾患と同じく三大疾病のひとつです。ある日突然発症することもあるうえに、入院期間が長いため、医療費がかかりやすい病気です。また、後遺症がのこることもあるため、仕事をしている人は働けなくなることによる収入減少に備える必要があるかもしれません。
この記事では、脳卒中による医療費や入院期間の平均値を解説します。万が一に備えられる保険も紹介しますので、参考にしてみてください。
脳卒中とは
脳卒中とは、脳の血管が詰まる・破れるなどの問題が生じることで血液が循環しなくなり、脳がダメージを受ける病気です。脳の血管に問題が起きる脳血管障害のうち、突然、発症するものを脳卒中と呼びます。
脳は身体のさまざまな機能を司る器官です。そのため、脳卒中で脳がダメージを受けると死亡したり、助かっても後遺症がのこったりすることは少なくありません。脳卒中は、がん、心疾患とともに三大疾病のひとつとされ、日本人の死因の上位を占めている病気でもあるのです。
脳卒中は、その原因などにより脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血などに分けられます。
脳卒中の症状
脳卒中の主な症状は以下の5つです。
- 片方の手足・顔半分の麻痺・しびれが起こる(手足のみ、顔のみの場合もある)
- ろれつが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない
- 力はあるのに、立てない、歩けない、フラフラする
- 片方の目が見えない、ものが二つに見える、視野の半分が欠ける
- 激しい頭痛がする
これらの症状のうち同時に複数が出現することも、1つだけが見られることもあります。脳卒中は、発症から4.5時間以内を目安にできるだけ早く治療を受けることで、後遺症を軽くできる可能性があるといわれています。上記に当てはまる症状が見られたら、速やかに医療機関を受診しましょう。
脳卒中による後遺症の例
脳卒中による後遺症としては、手足を動かすことに問題が起きる行動障害や、言葉を発する機能に障害が起きる言語障害などがあります。脳卒中により脳がダメージを受けた部位によって、後遺症の症状はさまざまです。
予防法
脳卒中(脳血管疾患)は動脈硬化から起こります。特に、
- 高血圧
- 喫煙
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 不整脈
は、動脈硬化を促進する脳卒中の5大因子です。そのほか、脳卒中の危険因子として挙げられるものには高齢者・男性・運動不足・肥満・アルコール過多などがあります。
これらの危険因子を減らし、脳卒中を予防するには、生活習慣を見直し、日々の食事に注意しましょう。規則正しい生活と適度な運動に加えて、減塩などを意識した食事が脳卒中予防に効果的だと考えられます。
脳卒中にかかる医療費と入院期間
脳卒中になった場合、どの程度の医療費がかかるのでしょうか。また、脳卒中は比較的入院期間が長い病気のひとつです。ここでは、脳卒中にかかる医療費と入院期間を紹介しますので、参考にしてみてください。
医療費
厚生労働省「医療給付実態調査(令和2年度)」によると、脳卒中の医療費は、一人当たり約86万円です。
ただし、この数字は公的健康保険の適用前の金額であるため、実際に負担する医療費はさらに少ない可能性もあります。一方、このデータには差額ベッド代などの全額自己負担となる費用は含まれていません。個室や少人数部屋を希望する場合は、その費用も考慮しておく必要があります。
また、入院では医療費以外に日用品費や入院中の食事代などもかかります。脳卒中でかかる医療費の総額としては、人によって数十万円から100万円以上かかる場合もあるといえるでしょう。
脳卒中の入院期間
厚生労働省「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、脳卒中での入院期間の平均は77.4日です。
入院日数が長くなれば、その分医療費の自己負担分も大きくなり、差額ベッド代などの自己負担費用も入院日数の長さに比例して費用が増えていきます。
脳卒中(脳血管疾患)は三大疾病のなかでも治療期間が長く、入院が長期化する傾向があります。手術費用に加え、生活費・休業補償なども必要になるかもしれません。
入院費用や手術費用に備えるためには医療保険や三大疾病保険、仕事を休むことによる収入減少に備えるには就業不能保険や所得補償保険などがおすすめです。
脳卒中に備える保険
生活習慣の改善などにより脳卒中を予防するだけでなく、万が一に備えて保険などに加入しておくのもひとつの方法です。脳卒中による経済的リスクに備えられる保険には、
- 入院費用や手術費用に備える:医療保険
- 死亡や高機能障害がのこった時に備える:特定(三大)疾病保証保険
- 後遺症などにより長期間仕事を休むことによる収入減少に備える:就業不能保険・所得補償保険
があります。
それぞれの保険の特徴を解説します。
医療保険
医療保険は、病気やケガによる医療費に備える保険です。脳卒中に限らず、あらゆる病気やケガでかかる医療費などの経済的リスクに備えられます。
保障内容は、入院日数に応じて受け取れる入院給付金が中心です。保険によっては、手術でも給付金が受け取れるものや、死亡保障とセットになっているものもあります。
脳卒中への備えとして医療保険を利用する場合、注意したいポイントは入院給付金の支払上限日数です。入院日数が支払上限日数を超えた場合、超えた分の日数については給付金が受け取れません。脳卒中の平均入院日数が約77.4日であることから、支払上限日数は120日型や無制限型などを選ぶと安心です。
特定(三大)疾病保障保険
脳卒中にがん・心疾患(急性心筋梗塞)を加えた三大疾病にかかった際に保険金が受け取れるのが特定(三大)疾病保障保険です。
保障内容は保険会社によって異なるものの、脳卒中を発症した場合は死亡または所定の高度機能障害になった際に保険金が支払われるものが主流です。保険金は200万円から1,000万円程度まで設定できることが多く、まとまったお金が受け取れます。
なお、特定(三大)疾病保障保険は、1度保険金を受け取ると保険契約は消滅します。たとえば、がんで保険金を受け取ったことがある人がその後に脳卒中を発症した場合、脳卒中に対して保険金は支払われないため、注意が必要です。
就業不能保険・所得補償保険
脳卒中の治療のために入院したり、後遺症により働けなくなったりした際に、収入減少を補う目的で利用できるのが就業不能保険・所得補償保険です。保険会社が認める就業不能状態になった場合に、毎月、一定額が受け取れます。
会社員や公務員の場合は、一定期間以上仕事を休むと健康保険から傷病手当金が受け取れます。しかし、自営業やフリーランスが加入する国民健康保険には、傷病手当金の制度がありません。仕事を休むとすぐに収入が途絶えてしまうおそれがあるため、就業不能保険や所得補償保険で備えておくことをおすすめします。
また、会社員や公務員が傷病手当金を受け取れるのは最大1年6カ月です。仕事に復帰しても、後遺症などにより脳卒中になる前と同じように働けない可能性もあります。収入減少による経済的ダメージが気になる人は、就業不能保険や所得補償保険を検討してみましょう。
まとめ
脳卒中について、医療費や入院期間の平均などを紹介しました。脳卒中は、症状の程度にもよりますが、治療費の負担が大きくなることも少なくありません。脳卒中の発症を予防するため、規則正しい生活を送ることとあわせて、万が一の経済的負担にも備えておきましょう。脳卒中の備えには、貯蓄だけでなく保険を活用することも検討してみてください。
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リアほMAGAZINE編集局
保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。