契約前に知っておきたい
2022.03.11
法定相続人とは誰のことで、どのように決まるのでしょうか?
テレビドラマなどで誰かが亡くなったあと、遺産を誰が相続するかで揉めているシーンが描かれることがあります。人が亡くなったあとにのこされた財産をどのように分けるかは頭の痛い問題であり、遺言書がないケースではなおさらです。
実は、民法では必要以上に親族が揉めることがないよう、親族のうち、亡くなった人の遺産を引き継ぐ権利がある人が定められています。それを法定相続人と呼び、亡くなった人との血縁関係にしたがって遺産を引き継ぐ順位が決まっています。
この記事では、法定相続人とは誰かということと、その決め方について詳しく解説します。
法定相続人とは
法定相続人とは、亡くなった人(被相続人)の財産を引き継げる人のことで、民法のなかの相続法で定められています。
法定相続人になれるのは被相続人の配偶者と血族です。血族とは血縁関係がある親戚のことですので、たとえば配偶者の両親は相続人にはなれません。
もし被相続人が遺言書を残していれば、被相続人が遺言書により遺産の受取人と指定した人が遺産を受け取れます。
しかし、すべての人が遺言書をのこしているわけではありません。被相続人が遺言書で遺産を誰に渡すかを決めずに亡くなってしまった場合、親族が争わなくて済むように法定相続人の規定があります。
法定相続人の決め方
被相続人の血族は一人だけではないのが一般的です。そのため、誰が法定相続人になるのかは被相続人との血縁関係によって、順位という形で厳密に決められています。
配偶者は常に法定相続人となります。一方で、血族のうち法定相続人になれるのは最も順位が高い人だけです。最も高い順位の人が複数名いる場合はその全員が法定相続人になりますが、後の順位の人は法定相続人にはなれません。
相続順位について、具体例を挙げながら解説します。
配偶者
被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は常に法定相続人とされます。被相続人に2回以上の結婚歴がある場合、法定相続人は亡くなったときの配偶者だけです。
第一順位:子どもまたは代襲相続などの直系卑属
相続順位第一順位は被相続人の子どもです。被相続人より下の世代であることを意味する卑属という言葉と、被相続人の直系であることを組み合わせ、法律用語では直系卑属と言います。子どもが複数名いる場合、それぞれに平等に相続分があり、養子と実子の区別はありません。また、戸籍上で認知されていれば、婚姻関係の有無は関係ありませんので、嫡出子と非嫡出子も区別しません。
被相続人が再婚しており、前の配偶者との間に子どもがいる場合は、その子どもも第一順位の法定相続人です。ただし、配偶者の連れ子は被相続人と血縁関係がありませんので、法定相続人ではありません。被相続人と生前に養子縁組をしていた場合のみ、連れ子は法定相続人として認められます。
なお子どもがすでに亡くなっており、孫がいる場合は孫が法定相続人です。これを代襲相続と言います。
第二順位:両親など直系尊属
被相続人に相続第一順位である子どもが一人もいない場合は、相続第二順位の被相続人の両親が法定相続人になります。被相続人よりも上の世代であることを尊属と言い、直系尊属とは両親や祖父母のことです。したがって、両親がすでに亡くなっているが祖父母がどちらかだけでも存命であるという場合、その祖父母が相続人になります。
第三順位:兄弟姉妹または代襲相続人
兄弟姉妹が法定相続人になるのは、被相続人に子どもや孫といった直系卑属と、両親や祖父母などの直系尊属のどちらもいない場合です。
兄弟姉妹が亡くなっている場合、子どもが亡くなっている場合と同じく代襲相続が起こり、被相続人の兄弟姉妹の子ども、つまり被相続人から見ると甥または姪が法定相続人となります。
相続人を把握する方法
被相続人の法定相続人を把握するには戸籍謄本を利用します。 戸籍謄本には前の配偶者との子どもや認知した子どものことが記載されているので、生まれてから亡くなるまでの戸籍をたどることで法定相続人が把握できるのです。
最新の戸籍は被相続人の最後の本籍地の役所に発行を依頼すれば見ることができますが、人によっては生涯に何度も転籍をしていることもあります。その場合、転籍前の戸籍があった自治体を特定し、戸籍謄本を発行してもらわなければいけません。すべての戸籍謄本を揃えるのに想定よりも時間がかかることがありますので、相続が発生するとわかったらなるべく早く戸籍謄本を取り寄せると良いでしょう。
法定相続人が音信不通の場合
戸籍謄本を取り寄せた結果、法定相続人がいることはわかったものの、どこに住んでいるのかわからない、生死すら定かではない、というケースは意外と多くあります。
住民票と戸籍から法定相続人の住所を確認し、手紙などで連絡をとることになりますが、住民票に記載された住所に不在の場合は法律上の行方不明者になります。
ただし、法定相続人が行方不明だからといって、勝手に遺産相続の手続きを進めるわけにはいきません。
法定相続人が行方不明の場合は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てて認定されるか、もしくは不在者財産管理人を選定してもらいます。
失踪宣告の申し立てが認定されると、その法定相続人は死亡したとみされることになり、それからようやく遺産相続の手続きを行えるようになります。
相続人不在の場合
相続順位の一位から三位に該当する子ども・孫・両親・祖父・兄弟姉妹・甥や姪の誰もいない場合を相続人不在と言います。高齢化が進んだことと、生涯を独身で過ごす人が増えた結果、現在では相続人不在になることは珍しくなくなってきました。
また相続放棄や欠格・排除などによって法定相続人が相続資格を失い、相続人不在となる場合もあります。
相続人不在の場合、遺言書があれば遺言書で指定された人に財産が引き継がれます。しかし、もし遺言書がなければ、亡くなった人の財産はどうなるのでしょうか。
相続人がおらず遺言書もない場合、財産は生前に被相続人と特別な関係があった特別縁故者に渡されます。特別縁故者もいなければ、財産は最終的に国庫へ帰属、つまり国のものになります。
まとめ
この記事では、法定相続人の意味と決め方について詳しく解説しました。
配偶者以外の法定相続人は血族のなかから、順位という被相続人との関係の近さによって決まります。
また、被相続人の戸籍謄本を取り寄せることで誰が法定相続人となる可能性があるのかがわかります。
突然の相続に慌ててしまうこともあるかもしれませんが、この記事が参考になれば幸いです。
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リアほMAGAZINE編集局
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