保険の基礎知識

2023.02.11

老後2000万円問題を夫婦・一人暮らしのケース別に検証!解決策も紹介します【FP監修】

監修者情報

株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。日本FP協会AFP認定者。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

老後生活を送るのに公的年金以外に2,000万円が必要だと金融庁が言及した「老後2000万円問題」は大きな話題になりました。

金融庁の試算は夫婦二人世帯を対象としていましたが、現代では一人暮らしの人は少なくありません。そこで、この記事では、夫婦および一人暮らしそれぞれのケースにおいて、老後資金のシミュレーションを行いました。

自分や家族の老後資金の準備について考える参考としてください。

老後2000万円問題とは?

老後2000万円問題とは、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が2019年に発表した報告書に「老後30年間を過ごすには公的年金などのほかに夫婦で約2,000万円の貯蓄が必要」との記載があったことで注目を集めた、老後資金の準備に関する問題です。

年金などの公的保障だけでは老後資金が不足すると金融庁が指摘したことに多くの人が衝撃を受けました。そして、

  • 本当に老後資金は足りないのか
  • 2,000万円という金額は妥当なのか
  • どうやって老後までに2,000万円の資産を作るのか

といった議論が巻き起こりました。

そこで、次の項目では夫婦二人世帯・一人暮らし世帯それぞれにおいて、老後資金のシミュレーションを行います。自分や家族の将来の生活を思い浮かべながら、読み進めてみてくださいね。

夫婦・一人暮らしの老後資金のシミュレーション

老後資金が不足する理由として、金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書は長寿化や退職金の額が減少傾向であることなどを挙げています。

なお、報告書における約2,000万円という数字の根拠は2017年に総務省が行った「家計調査」です。このデータでは、高齢夫婦無職世帯の1カ月の実収入と支出を比較すると、毎月約55,000円の赤字が発生していました。そこで、同額の赤字が30年続くという計算により、老後資金の不足は約2,000万円とされたのです。

しかし、言うまでもなく2,000万円という数字はあくまでも試算の結果、導き出されたものです。実際には、夫婦なのか一人暮らしなのか、年金収入額やライフスタイルによって老後に必要な金額は変わります。ここでは、公的年金という収入面と、夫婦なのか一人暮らしなのかという支出面から老後資金をシミュレーションします。

老後の収入源:厚生年金か国民年金か

多くの人にとって、老後の収入の柱は公的年金でしょう。現役時代の職業によって年金制度は異なり、会社員や公務員は厚生年金、自営業やフリーランスは国民年金から年金を受け取ります。

20歳から40年間、夫婦とも国民年金に加入していた場合、65歳から受け取れる年金額は一人あたり1カ月最大約6.5万円、夫婦で合計約13万円です。一方、厚生年金は現役時代の報酬額によって受給額が変化します。厚生労働省による「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の1カ月あたりの平均受給額は約14.6万円です。したがって、夫婦二人とも厚生年金に加入していた場合は29.2万円を毎月受け取れると考えられます。夫婦のどちらかが厚生年金、もう片方が国民年金なら約21.1万円です。

夫婦の場合

2020年の「家計調査」のデータによると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の1カ月の支出は約25.5万円でした。そのため、夫婦とも厚生年金を受給する場合は、毎月の年金だけで足りるかもしれません。

しかし、厚生年金と国民年金を受給する夫婦や夫も妻も国民年金を受給する夫婦では、毎月赤字が発生する計算です。特に夫婦とも国民年金に加入していた場合は、月あたり約12.5万円、30年で約4,500万円が不足する可能性もあります。

さらに、生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人でゆとりのある老後生活を送るのに必要な金額の平均は毎月36.1万円です。夫婦とも厚生年金を受給していても、老後資金として十分とはいえないことがわかります。

一人暮らしの場合

一人暮らしの場合、夫婦の場合よりも必要な生活費は少なくなるため、老後資金の不足額は2,000万円より少なくなるのでしょうか。

2020年の「家計調査」のデータによると、65歳以上の単身無職世帯の1カ月の支出は約14.5万円でした。夫婦世帯の支出額が約25.5万円でしたので、一人暮らしだからといって支出が半分になるわけではないことがポイントです。

すでに解説した年金受給額の平均と比較すると、厚生年金受給者でも収支はほぼトントン、国民年金を受給している場合は毎月約8万円の赤字が発生します。一人暮らしの場合、老後資金の不足額は2,000万円を大きく超えてしまう可能性があるのです。

老後2000万円問題の解決策は?

夫婦および一人暮らしの老後資金をシミュレーションした結果、どちらのケースでも2,000万円以上が不足する可能性があることがわかりました。時間をかけて計画的に資産形成を進めないと、これだけの金額を準備するのは簡単ではありません。「老後2000万円問題」の解決策となりうる方法を3つ紹介しますので、老後資金を準備する参考にしてください。

生活費を下げる

生活費を下げることは、現役のうちにできるだけ資産を増やすためにも、老後に資産を長持ちさせるためにも効果的です。ただし、節約のしすぎで日々の楽しみがなくなってしまっては本末転倒です。収入を増やす努力などと並行することをおすすめします。

収入を増やす

収入を増やすには、昇進や転職で収入アップを目指す方法と、定年を迎える年齢になっても再雇用や再就職などで長く働いて収入を得る方法があります。収入アップを目指してスキルを磨くことは自分自身のためにもなります。また、年を取っても働き続けることが健康を保ち、生き生きとした老後を送るのにつながるかもしれません。ただし、体を壊しては元も子もないため、くれぐれも無理のし過ぎは禁物です。

資産を増やす

貯蓄や投資などで老後資金を増やす方法です。数千万円単位のお金を貯蓄だけで用意するのは誰にでもできることではないため、ある程度資金ができたら投資にもチャレンジしましょう。ハイリスク・ハイリターンを狙わず、時間をかけてじっくりと資金を増やすのが理想です。早く始めれば、もし失敗しても取り返せる可能性があるというメリットもあります。投資信託のように100円などの少額から投資できる手段を使い、早いうちから慣れておくことをおすすめします。

まとめ

「老後2000万円問題」といいますが、実際には夫婦・一人暮らしとも老後に不足する金額は2,000万円を超える可能性があることを解説しました。

いまの年齢にかかわらず、老後に経済的に困らないようにするには早い段階から資産形成を始めることが大切です。この記事で示した解決策を参考に、できることからチャレンジしていきましょう。

この記事が老後資金について改めて考えるきっかけとなれば幸いです。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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リアほMAGAZINE編集局

保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。

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