著名人・専門家コラム

2024.08.22

「学資保険は運用率が悪いから解約した」に思うこと【住宅FP関根が答える!Vol.112】

みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
みなさんは子どもの教育費、どのように準備していますか。20年ほど前までは、子どもが生まれたら郵便局に行き学資保険に加入するというのが一般的な大学資金の準備方法でした。

当時、郵便局の学資保険が多くの人に選ばれていた理由は満期保険金の利率の良さです。当時の学資保険は運用先である日本債券の利回りもよかったため、18年程度所有していると107%程度になりました

普通預金に預けているとついついお金を使ってしまいそう。それならば強制的に学費を貯めることができる学資保険に加入をしようと、学資保険を選ぶ人が多くいらっしゃいました。運用に慎重な日本人は長年「株=博打」、「保険=手堅い運用」だとされ、保険を使った積立運用は保守的な日本人に合った教育資金の準備方法とされていました。

ただ2000年代に入り日本債券の利率は落ち、学資保険に加入しても18年間で101%程度にしかならないなど、ここ10年くらいは教育資金の準備方法としては選択肢から外されることが多くなりました。

一方で、日本におけるNISA口座を活用した運用熱が高まり始めたのは、積立NISAが開始された2018年以降になると思います。2024年3月末時点のNISA口座における累計買い付け額が、2023年12月末時点の一般NISA、つみたてNISA合計額から約17%増え、約41兆円となり、口座数は約9%増え、約2,322万口座となっています。これは2024年1月に始まった新NISAをきっかけに、預貯金から投資に振り向ける動きが広がってきたといえます。

またNISA口座を扱う金融機関での買い付け額をみると、投資信託が全体の約57%と上場株式を上回り、年代別の買い付け額では40代、50代の割合が最も大きく約19%、30代が約18%と続いています。政府が新NISAという制度を採り入れ、貯蓄から投資への動きが高まったことにより、投資への参入者が急増したといえると思います。

※参考:NISA口座の利用状況調査|金融庁

日本証券業協会が発表している「NISA口座の開設・利用状況(5,000人アンケート・2024年2月上旬時点)」によると、NISA口座を活用しているのは40代で23.2%、50代で19.8%、30代で25.1%、社会人になったばかりの20代でも20.6%となっており、こういった数字を見るとやはりまだまだ、低いような気もします。ただ長年FPをやっている私の感覚だと、投資意欲の低い日本において、よくここまで投資を広めることに成功したなと、つくづく考えてしまいます。

※参考:NISA口座の開設・利用状況|日本証券業協会

この貯蓄から投資への動きはとても良い傾向だと思うのですが、そんな中、SNSやブログなどで「学資保険は運用率が悪いから解約してNISAに切り替えた」という投稿を見ることがあります。私自身はこういった動きには疑問を感じています。

そもそも学資保険を中途解約する場合、多くの場合で元本割れをしてしまいます。加入している年数にもよりますが支払保険料の70%程度になることが多いため、30%程度の損失を出すところからスタートしてしまいます。つまり学資保険を中途解約してNISA運用で大学資金を準備するということは、運用期間中に最初に損失を出した30%を取り返し、さらにそれを上回る運用益を上げなければいけないという考え方になります

現在のNISA枠の利用は多くの場合、全世界株式や全米株式系のインデックスファンドを積み立てていることと思います。こういったファンドの基準価格はリーマンショック以降、倍以上になっているため、子どもが生まれてすぐのタイミングからインデックス投資を始めていれば、大きな利益を上げることに成功していたといえるのかもしれません。

しかし、この強烈な上昇を引っ張っていたのはリーマンショック後の金融緩和と、コロナ後の金融緩和、そして歴史的な円安です。株式相場というものは上がる時期もあれば下がる時期もあります。

リーマンショック時には世界株においても約6ヵ⽉間下落が続き、約44%も下落しました。 その後、リーマンショック前の⽔準を回復するのに約2年かかっています。日本株式は回復にさらに長い期間を要しており、こういった株価の急落がいつ起こるのかはわかりません。

ただ、株式の上昇相場しか知らない人は今後も上がり続けるだろうという心理「正常性バイアス」が働いてしまいます。この正常性バイアスとは、自分にとって都合の悪い情報を無視し、過小評価をしてしまう心理です。

個人的には運用期間を子どもが生まれた直後から大学入学までの18年間準備できるとした場合、NISAによる運用も十分にメリットを出せるのではないかと思いますが、一方で教育費は使う時期が決まっています。教育費が必要な時期にNISA運用で含み損が出ているということが無いように、投資期間は長い期間取りたいものです。しかし、子どもが生まれ数年が経ち、学資保険では運用率が悪いからと30%の損失を出しながら解約をする、そしてNISA口座に振り分けるものの、運用期間が短すぎて十分な利益を出すことができなかったということがないように、しっかりとした運用計画を立てることをお勧めしたいです。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直

ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。

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