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2025.01.25

映画ジョーカーから見えてくるアメリカの分断は世界へ広がる【住宅FP関根が答える!Vol.133】

みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
みなさんは、映画『ジョーカー』をご覧になったことはありますか。ここで話すジョーカーは昨年公開された『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』ではなく、2019年にアメリカで公開された最初のジョーカー、日本においても大ヒットした映画です。2020年アカデミー賞では、くしくも作品賞は逃しましたが、11部門ノミネートと過去最多を記録し、主演男優賞などを受賞しています。今回のコラムではこの映画から読み取ることができるアメリカの分断、そしてこの分断はアメリカだけでなく、世界各国にも広がりつつあるということについてお話していきたいと思います。

映画『ジョーカー』のあらすじ

まずは映画『ジョーカー』のストーリーについてざっくりお話しします。主人公のジョーカーとなるアーサーは、貧しい地域で病気の母親を介護しながら大道芸人として生活しています。アーサーは緊張したり興奮したりすると、笑いが止まらなくなってしまう病気をもっています。人から誤解を受けることも多く、苦難な人生を送っていました。メモを取るシーンでも誤字が多く、アーサーには教養もないことがうかがえます。

ある日、アーサーが電車に乗っていると、女性をナンパしているエリート会社員、3人組と出くわします。女性は嫌がるのですが、ここでアーサーの病気が出てしまいます。ナンパをするエリート会社員たちは見るからに貧困層であるアーサーに大笑いされたことで激昂し、揉み合いになったすえに、興奮したアーサーは護身用でもっていた銃で3人を射殺してしまいます。

帰宅するとテレビのニュースでは、エリート社員を批判する声、同時にジョーカーが取った行動を称賛する貧困層からの圧倒的支持が報道されます。これを見たアーサーは、人生で初めて自信をもつことができました。ここから悪のヒーロー「ジョーカー」が誕生しました。この後もストーリーはまだまだ続くのですが、映画を見ていない方へネタバレにならないように今後の展開に関してはぜひご自身でご覧いただきたいです。

なぜジョーカーはヒーローになったのか

なぜジョーカーがヒーローになっていったのでしょうか。ジョーカーは貧困層で、殺人犯です。そして、その殺人被害に遭った人はウォール街のエリート会社員というところにポイントがあります。これはハリウッド映画、つまりアメリカの映画です。アメリカはヒーローの国です。ジョーカーという悪役が、本来なら支持されるはずがありません。そんななかでも支持された理由はアメリカによる貧困問題、所得格差、そして障害者差別でした。

アメリカの格差問題

アメリカは、市場原理主義といわれる国です。市場原理主義というのは、政府が市場にあまり口を出さずに、個人や企業の自由な経済活動を認める国ということです。そのため国が用意する社会保障制度は最低限に抑えているため公的医療保険制度も充実しておらず、今でも無保険状態の人はたくさんいます。市場原理主義により力がある人はどこまでも勝ちあがり、力がない人、競争に敗れた人はどこまでも落ちぶれていきます。アメリカとは、極端にいうとそういう国です。

近年所得格差もどんどん進み、所得格差の指標であるジニ係数も先進国では1位です。それもどんどん数値が悪化していて、格差が年々拡大している状況です。2019年のデータでは、アメリカでは上位1%の人が国全体の富の3分の1を保有しているといわれています。逆の立場から見ると、アメリカでは、下位50%の世帯の資産はアメリカ全体の2%にしか過ぎないということです。

※参考:Trends in the Distribution of Family Wealth, 1989 to 2019|連邦議会予算局(CBO:Congressional Budget Office)

また人種間の格差もあり、アメリカでは黒人の労働者が、ブルーワーカー系についていることが多く、もともと黒人の貧困率は白人の2倍以上といわれ、さらにコロナでより比率が高まりました。

アメリカでは貧困層のことを「樽の底」と表現することがあるそうです。それは樽の底に落ちていて、這い上がりたくても手を差し伸べてくれる人もいない、結局この環境から、抜け出すことができないという表現です。そういった社会的な歪みが、ここ数年、大変大きく取り上げられるようになっていました。こういった所得格差という歪みとアーサーの非情な運命に、アメリカ中で同じ怒りを持っている人に大変支持されました。

アメリカには「インセル」という言葉があります。不本意な「禁欲・独身主義者」のことで、具体的に言うと「結婚していない中年の白人男性」のことです。本来、白人男性という強い立場であるはずなのに、金もなく、家族ももてないみじめな立場、この歪んだコンプレックスから、女性や同性愛者、黒人、ヒスパニック系というマイノリティに対して、差別意識を強くもつ人たちのことを指します。そういう人たちが、自由主義の名の下で所得格差に苦しみ、自由主義では、自己責任と呼ばれてしまう。貧困層は絶望感を感じながら食べていくのに必死に生きています。抜け出せない貧困に絶望をした人たちはオピオイド鎮痛剤、オキシコンチン、フェンタニルを服用し、ドラッグに走り、そのドラッグを買い求めるために、銃犯罪に手を染めるものもいるインセル、不本意な「禁欲・独身主義者」という現実です。

世界に広がる格差問題

そしてこの流れは、世界的に起きています。ジョーカーは、2020年のアカデミー賞で11部門ノミネートしていますが、この年の作品賞って何だったか覚えていますか。それがアカデミー賞の歴史上初めて外国語作品が作品賞を取った『パラサイト 半地下の家族』です。韓国も所得格差が広がる国です。一部の成功者に富が集まり貧困層人口が増えています。貧困層の若者は、目先の生活だけに必死で地味に暮らしています。若者が就く仕事で期間限定労働があるのですが、そういった仕事をティッシュインターンと呼んでいます。ティッシュのように使い捨てられるだけという意味合いです。そんな社会の不満が蔓延しているときに公開されたのがパラサイト、半地下の住民たちを物語とした映画です。

話題の映画から近年の所得格差を実感することができると思います。日本もその所得格差が広がってきている国の一つです。前回のコラムでお話した白人層での死亡率の上昇はアーサーが物語っており、貧困と健康は密接に関係しています。日本においてもお金がないから保険に加入しない、保険料を払うより、高額療養費制度もあるから何かあったときに治療費を払えばいいという話を耳にすることがあります。それはどうでしょうか。そういった方がいざというときにまとまったお金を用意することができるでしょうか。保険に入っておらず、治療さえも満足に受けられないということにならないように、保険に加入することをお勧めします。今回はストーリーもお話したので長くなりましたがぜひ、映画『ジョーカー』、『パラサイト 半地下の家族』を見てみてはいかがでしょうか。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直

ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。

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