著名人・専門家コラム

2022.10.31

ぼくが国税局員になったワケ【さんきゅう倉田コラムVol.10】

こんにちは。元国税局員さんきゅう倉田です。

吉本興業で芸人をしています。今年で芸歴13年目。
週に1回くらい取材のお仕事を頂戴することがあって、必ず聞かれます。

「どうして、国税局を辞めて芸人になったんですか」

答えはいつも同じです。

「働くなら自分がたのしいと思っている仕事に就くべきだと思っています。その方が、残業や休日の自己研鑽も苦ではない。仕事に関する本を読み、勉強会に参加するのもたのしい。そうしていると、能力が伸びて、所得も上がっていく。だから、自分がたのしいと思っている仕事を選んだ方がいい。国税局の仕事はたのしかったけれど、もっとたのしい仕事を探したときに、それが芸人だったんです」

それを聞いた相手は、とくにコメントをすることなく、話は終わっていきます。静寂。静寂を破るために、ぼくはいつも次の話題を話します。

「では、どうして国税局に入ったんですか?」と聞かれることはありません。

どうして国税局に入ったのか?

国税局は全国に10以上あります。ぼくは東京国税局にいましたが、大阪や名古屋、広島などにもあって、国税の賦課・徴収を担っています。

国税局の職員は、国家公務員です。公務員試験を受けて合格しないと入ることができません。高校卒業程度と大学卒業程度で受けられる試験が異なりますが、どちらにせよ、落ちたら働くことができないので複数の公務員試験を併願します。

毎年4月〜9月くらいにかけて、さまざまな自治体や専門職の試験が行われているので、希望に合わせて願書を提出します。
ぼくは5つの試験を受けました。日程が重なっているため、実施されているすべての試験が受けられるわけではありません。

国税局に入るための国税専門官試験は、裁判所事務官2種と同じ日程だったと記憶しています。どちらでもよかったけれど、ぼくはなんとなく国税専門官試験を選びました。

このときの選択がぼくの人生を決めたと言っても過言ではありません。人生は無数の選択の積み重ねによって形成され、変化していきます。大きな変化もあれば、小さな変化もある。
試験を選ぶという2択は単純、かつ、影響の大きなものでした。国税局に入っていなかったら芸人になっていなかったし、なっていたとしてもとっくに諦めて、何のスキルもない状態で転職して、出世も昇給も見込めない仕事に就いて、定年までいやいや働いていたかもしれません。
ワインも飲めないし、東京にも住めないし、女性と知り合う機会もないからずっと独り身だったかもしれない。

1年以上にわたる受験勉強の結果、無事に1次試験を突破し、2次試験の面接にも合格して、内定の電話をもらって国税局に入ることにしました。このとき、合格した中で就職先を選びます。国税局を選ばないという選択もありました。複数の官庁から話を聞く中で、興味があったのがたまたま国税局だったので、内定を承諾させていただいたと記憶しています。

結局、2年と1ヶ月で辞めてしまいますが、入ってよかった。国税局から内定をもらった大学生から相談がくれば、「国税局おすすめだよ」といつも答えています。

国税局に入るための試験はどんな試験?

1次試験は択一式の試験が主で、6月の日曜日に行われます。当時は7割程度の正答率で合格し、7月に面接を受けられます。面接は平日に行われるので、すでに働いている人は仕事を休まなければいけません。

公務員試験は、現役の学生だけでなく社会人も受けることができます。さらに、民間の会社と異なり、卒業後に無職の時期があっても評価が下がりません。そのため、転職や就職浪人を経ている人も多くいました。

公務員試験の面接では、圧迫面接が行われることがあります。噂では、大きな声を出されたり、不快な表現で質問をされたりするそうですが、圧迫面接が実施されて平静を維持したまま対応できると、合格すると言われています。
ぼくも、面接中に消しゴムを机に叩きつける音が聞こえましたが、反応することなく乗り切って、合格を得ました。

各公務員試験の合格発表日は決まっていますが、成績の良い順に、発表前に内定を伝える電話があります。一緒に受けた仲間が内定の連絡を受ける中、自分の鳴らない電話を見つめる日々を過ごしていると、「自分はなんてダメな人間なんだ。このまま公務員になれなければ、今から就職活動をして全然やりたくない仕事に就くことになる、大学まで行ったのに結局そんな風に勤め先を決めるのか」などと考えて、将来を不安視します。結局、電話をもらって合格しましたが、そのときの喜びは甚しかった。返事を待たせた方が、相手は感謝すると学びました。
試験科目を紹介しましょう。

筆記試験は、①基礎能力試験と②専門試験、③記述試験で構成されています。

①基礎能力試験(公務員として必要な基礎的な能力についての筆記試験40題)

  • 文章理解11、判断推理8、数的推理5、資料解釈3
  • 自然、人文、社会13

②専門試験70題

  • 民法・商法、会計学から2科目16題
  • 憲法・行政法、経済学、財政学、経営学、政治学・社会学・社会事情、英語、商業英語、情報数学、情報工学から4科目24題選択

③記述試験

  • 憲法、民法、経済学、会計学、社会学から1科目

試験科目が多いのが、公務員試験の特徴です。多様な知識を身につけて公務員になるので、重層的で広範な出来事に対応できる職員が多くなる傾向があります。みなさんも、勉強が苦でなければ公務員試験を受験してみてはいかがでしょうか。

官庁や自治体によりますが、30歳くらいまでは受験できることが多いようです。きっと合理的な仲間とやりがいのある仕事、そこそこの給与があなたを待っています。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

さんきゅう倉田

芸人。ファイナンシャルプランナー。1985年神奈川県生まれ。 大学卒業後、国税専門官試験を受けて東京国税局に入庁。中小法人を対象に法人税や消費税、源泉所得税、印紙税の調査を行ったのち、同局退職。吉本興業の養成所NSCに入学し、芸人となる。

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