持たざる者は自らつくる。編集者・徳谷柿次郎を支えた“生存戦略”としての保険

「保険」という言葉に、あなたはどんなイメージを抱いていますか? 人生という冒険を歩んでいく上で、リスクを恐れず立ち向かうこと、そして万が一に備えて「保険」をかけることは重要です。各業界のトップランナーがいかにしてリスクと向き合ってきたのかを語る本企画。彼らの自由な発想が、あなたに合った保険との付き合い方を見つける一助になるかもしれません。
ウェブメディア『ジモコロ』の編集長として全国をめぐり、ローカルに眠る価値や才能を発掘。マスメディアに後追いされた実績は数知れず。 2017年には長野に移住。代々続く築100年を超える金物屋を改装し、全国で掘り出した人と物が集う場・シンカイとして、店舗経営にも挑戦中。 ほかにも畑仕事、コワーキングスペースの運営など……。徳谷柿次郎さんは、型を破り、次々と活躍のフィールドを広げる広義の「編集者」です。
そんな柿次郎さんは、これまでの人生で「一度も保険に入ったことがない」のだそう。「持たざる者」として、26歳で遅すぎる上京。保険について学ぶ機会も、営業を受ける機会もなかったと言います。 「保険に入ったことはない。その代わりに自分なりの”保険”をつくってきたのが、ぼくの半生だったと言えるかもしれません。攻めの人生を送るには、やっぱり守りも必要。これまでの人生そのものが、攻めるための、自分なりの保険をつくる道程だった気がします」 柿次郎さんの言う「攻めるための保険」「自ら保険をつくる」とは、どういうことなのでしょうか。
話を聞いた人:徳谷柿次郎(とくたに かきじろう) 株式会社Huuuu代表/編集者。1982年大阪生まれ。長野県在住。コンテンツメーカー「有限会社ノオト」、「株式会社バーグハンバーグバーグ」を経て、2017年に「株式会社Huuuu」を設立。全国47都道府県のローカル領域を軸に活動している。どこでも地元メディア『ジモコロ』編集長7年目。長野県の移住総合メディア『SuuHaa』を立ち上げたり、善光寺近くでお土産屋『シンカイ』を運営したり、自然と都会の価値を反復横とびしている。

生きるために必要なものは、自分でかき集めるしかなかった

―― 「人生を通して自分なりの”保険”をつくってきた」って、どういうことですか? 破天荒に見えるかもしれないですけど、案外慎重派なんですよ。攻めるためにはリスクヘッジ(危機回避)しておかないと、というのが自分の考え方で。 たとえば、長野に移住したのもリスクヘッジの一つ。昔から災害に対しての好奇心が強かったんですけど、ジモコロで地震学者みたいな人に取材していくうちに、だんだんと「やばいぞ、東京」となっていって。 そもそも誰かの作った仕組みに依存して生きる以外にないのが都市じゃないですか。平常時は良くても、災害が起きて水道やガスといったインフラが死ねば、トイレも風呂も使えなくなる。 そんな場所に1000万人が集まって暮らしていることに違和感を募らせていました。そのタイミングで、たまたま縁ができたのが長野だったんです。 もちろん、長野だから絶対に安全という話ではないですし、自然災害や事故で死ぬのは仕方ないと思っています。ただ、集団のパニックに巻き込まれて死ぬのだけはゴメンだなって。 移住してからのここ3年くらいは、取材を通じて水や土への関心が高まっています。自分で畑をやってみたりもしました。災害でトイレが使えなくなっても、自分の家の庭に土があれば、そこでウンコもおしっこも処理できるんですよ。自然ってすごくないですか?
自宅の庭を耕す柿次郎さん
―― 自分なりに安全・安心を考え抜いて出した答えが移住だった、と。 そうです。でも、これは住む場所に限った話じゃない。取材を通じて得た文化資本も、全国で酒を酌み交わして築いた人間関係も、Huuuuという会社にしても同じことが言えます。 自分の人生は、不安をかき消し、安心して攻めに出るために必要なものをかき集めることでできている。それを一種の保険と見立てることもできるんじゃないか、ということです。 ―― 普通はその安心を既存の仕組み、既存の保険商品に求めるものだと思うんですけど。 自分には保険の営業を受ける機会なんてなかったので……。保険に限らず、ぼくの生まれ育った環境は、みんなが当たり前に経験すること、当たり前に獲得する思考のフレームワークから逸脱したところにありました。 金がない、親父が闇金で云々……貧乏エピソードには事欠かない。だから、生き延びるために必要なものは、自分でかき集めたり、自分で考えて作ったりする以外になかったんです。

利他と利己は表と裏。関係性への投資を惜しまないワケ

―― 取材を通じて知った相手に惜しみなくお金を使ったり、実績のない若手にいきなり大きな仕事を任せたり。柿次郎さんは利他の人というイメージなんですけど、自分が生きるのに必死な人は普通、利他的に振る舞えないものじゃないですか? 利他と利己は表と裏だと思っているので。外から見て利他的に映っているとしたら、それは全部、自分のためを思ってやっていることが、結果としてそう見えているだけだと思います。会社の中でも社員によく言うんですよ。「この会社はお前らのためにやっているんじゃない。自分の好奇心と、心の穴を愛でるためにやっているんだ」って。 その昔、友達が「0人」になったことがあって。家に引きこもって、インターネットに必死でかじりついていました。友達のいる状態といない状態、その両方を経験しているからこそ「友達がいるといいことがある」という、人生のシンプルな法則を深いところで理解しているんだと思います。 ――だからそこへの投資は惜しまないということ? そう。金払いが良かったり、明日のことも考えずに飲み明かしたりするのも、そうしたほうが関係性を作りやすいと、経験上知っているから。 シンカイだってそうです。思いつきで始めたように見えるかもしれないですけど、東京の編集仕事をしているだけではつながれない人とつながるための装置が、シンカイというお店なんです。
長野市善光寺から徒歩10分ほどの場所にある店舗「シンカイ」
農業に詳しいおっちゃん。自分で家を作れる建築士。地方にはかっこいいと思える人がたくさんいます。彼らとの関係性を深める方法として、お店を運営することが自分にとっては最適解に思えたんですよ。店をやっている人には、やっている人の間にしか生まれない信頼のようなものがある気がするから。 だから長野の人たちからすれば、「ジモコロの柿次郎」というより「シンカイの柿次郎」のイメージのほうが圧倒的に強いんじゃないかな。 ―― 365日、そこにあることの持つ意味は大きいですよね。 そうそう。そうすると地元の人だけでなく、「長野に行ったらシンカイに寄ろう」というかたちで、全国の若くて面白い人が集まってくる。 いまはまだ良くても、50歳になった自分が、これまでのように稼げているとは限らないじゃないですか。若い彼ら彼女らとつながることは、未来に向けた投資であり、将来の不安をなくすための保険とも言えるんじゃないですかね。

自分で作れば、既存のどんな仕組みより自分にフィットする

―― もともと恵まれているとは言えなかった人生。でも、人や環境、仕組みのせいにせず、必要なものを自分なりに考えて必死にかき集めてきたからこそ、いまがあるってことなんですね。 そう。だから最初は致し方なくという話ではあるんですけど。 でも、そうやって自分の好奇心に従って集めたり、自分なりに考えて作り上げたりしたものだからこそ、結果的に強みになっている。どんな既存の仕組みより自分の人生にフィットするのかな、とは感じていますね。 40歳を目前に控えたいま、そうやってかき集めたものが、ようやく揃いつつある感覚があります。その中にいれば、自分だけでなく友達や家族もひっくるめて、仕事も遊びもうまく回る、というような。 ―― ひとつのエコシステムとして回り始めている。 会社があり、お店がある。47都道府県に実家と呼べるような関係性の友達もできた。ちょうど最近、信濃町という長野の豪雪地帯にある平屋を買って、大掛かりなリノベーション工事をしているところなんですが、ここにはいい土と水もある。 だから、40代で初めて人生のピークを迎えられそうな手応えがあります。これは30代を迎えるときにはなかった感覚ですね。 20代のころは自分の時間を使える状況になかった。30代は金と体と時間のすべてを捧げて、必要なものをかき集めてきた。その自信があるから。 ―― 時にはしんどい思いもしながら。 正直しんどいですよ(苦笑)。頭がおかしくなるようなスピード感覚で全国を飛び回って、毎晩酒を酌み交わして仲良くなって。おかげで面白い知り合いはどんどん増えるけど、「もうちょっとこの輪を小さくしてもいいんじゃないか」と思うこともある。でも、なかなかちょうどいいところでは止められないものなんですよねぇ。 47都道府県に友達ができた結果、いまでは「これから先、ものすごい数の葬式に呼ばれるぞ」と言われます。我が事のように喜べることも増えたけど、同じだけ悲しみの数も増えました。でも、それは背負うべき業であり、保険料だと思っているので。
ジモコロ編集長として、全国各地を飛び回り取材を行ってきた30代(写真:小林直博)
何年か前にひょっこりシンカイに現れた若い子が成長して、向こうから仕事を依頼してきてくれたりすることも最近は増えました。もちろんその裏には、その子自身の努力があるってことなんですけど。それは自分にとって何物にも代えがたい、嬉しい瞬間ですよ。 まあ、お店は相変わらず赤字で大変なんですけどね。

人生は積み重ね。誰かをなぞることなんてできない

―― 保険があるから安心して前に進める。なければ自分で作ってしまえばいいという、一貫した姿勢がよくわかった気がします。 でも、ちゃぶ台を返すような話ですけど、一方で保険が「ない」からこそ前に進めるという考え方も、実はあるんじゃないかとも思っていて……。 ―― えっ? どういうことですか? 北海道の津別にシゲちゃんという、ジモコロでも取材したヤバいアーティストがいて。その72歳のシゲちゃんは、60歳過ぎまでずっと保険に入ってなかったんです。ここ数年は歳も歳ということもあって、ご家族に説得されてしぶしぶ入ったらしいですけど。
「シゲちゃん」ことイラストレーター/造形作家の大西重成さん(写真:小林直博)
「保険をかける動物なんて人間だけだ」「保険に頼ると人間は弱くなる」とシゲちゃんは言う。保険がないからこそ自らを鍛えて、健康的に生きようという動機が働く。そういう本能が動物には備わっているはずだって。 すごくかっこいいし、面白い。そっちのほうが合理的なのかもしれないな、とも思うんですよね。 ―― であれば、柿次郎さん自身もなぜそっちに振り切らないんですか? 自分にはシゲちゃんのような生き方は無理だとわかっているので。 シゲちゃんがそのように振る舞えるのは、60年以上に渡ってそれ相応の人生を送ってきたから。そんなシゲちゃんに憧れはするけれど、自分はシゲちゃんのような人生の積み重ね、パラメーターの振り方はしていない。 自分には自分の身体性を信じられていないところがあるんです。長年のコンプレックスだし、加齢とともに落ちているのも実感する。このままリリーフランキーのような、酒飲みの体になっていくかもしれない。そんな姿にも憧れるんですよね。信濃町という田舎に土地を得て、雪かきや畑仕事に精を出している姿は、矛盾しているように映るかもしれませんが。 でも、一方では東京の編集仕事をし、一方では長野でフィジカルな関係性にも身を投じる。その仕込みの幅がHuuuuという会社を成り立たせていると思う。それ自体がぼくの”保険”でもあるんだろうなと思っています。 取材・執筆:鈴木陸夫 撮影:西 優紀美 編集:Huuuu

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER'S PROFILE
Huuuu
Huuuuはローカル、インターネット、カルチャーに強い編集の会社です。 わかりやすい言葉や価値観に依存せず「わからない=好奇心」を大切に、コンテンツ制作から場づくりまで、総合的な編集力を武器に全国47都道府県を行脚中。 企業理念は「人生のわからない、を増やす」。

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