特集

2022.09.30

脱・一発逆転。「リスク」は世界中に分けて、散らばらせる|ポスト・ホケニズムの生活考

著:ヤマザキOKコンピュータ
挿絵:あけたらしろめ

「保険にさえ入っておけばよい」という盲目的な保険主義(ホケニズム)を脱却し、それぞれの人生に合った「楽しく、しなやかな生活」を考察する本連載。第3回では前回提案した「バックアップとしての資産運用」について、より具体的な実践方法について考察していきたい。

この連載を続けている間にも、世の中は日々刻々と変化を続けている。

例えば、うちの近所にある沖縄そば屋の『ソーキそば(中) 』が600円から700円に値上げされた件。約16.7% の価格上昇。突然のことでひと月経った今も、心の整理が付いていない。券売機の横には「原材料価格や配送料が上がり続ける中で価格をキープできなかった」という旨のコメントが添えられていた。

実際、私の経営している喫茶店でも食材の仕入れ値は上がり続けている。年初来で見るとナッツ類は5%、コーヒー豆は15%ほど高くなった。クラフトコーラを作るときに使っているスパイスの中には、価格が3倍に跳ね上がったものもある。

弊店はオープン以来、すべてのメニューを一律500円で提供してきたので、千円札と500円玉という2種類の貨幣だけでなんとかここまでやってこれたが、レジに50円玉が導入される日も近いかもしれない。

使いきれない50円玉が財布を埋め尽くし、最終的には穴にヒモを通して腰からぶら下げて歩くハメになるのだろうか。ちょっとかっこいい。流行るかも。

しかし、そんな冗談を書いていられるのも今のうちだけだ。このまま食材の価格が上がり続ければ、飲食店経営者にとっては死活問題に発展する。

一方、友人のE田くんにとって、この円安は追い風となった。彼は、越境系ECサイトを運営しており、メルカリやヤフオクといった国内ルートで国産ブランドの古着を仕入れて、海外の古着マニア向けに販売している。

例えば、国内のフリマサイトから7000円で仕入れた服を、アメリカの個人へ100ドルで販売したとする。送料や決済手数料などのコストを無視した場合、1ドル/100円なら3000円の利益だが、1ドル/130円なら6000円の利益となる。あまりにも雑な例だが、30%の円安によって利益が200%まで上昇した。

とはいえ、実際は原油高で輸送や梱包のコストが上がっているし、彼の生活費自体も上がっている。また、今後相場が円高に反転した場合、E田くんの利益は縮小されていく可能性が高い。

もし現段階から円高のリスクに備えるならば、現在とは真逆のビジネスモデルを作って併走させるという案が思い浮かぶ。つまり、今のECサイトを続けつつ、アメリカから古着を仕入れて日本人に販売するルートも確保するのだ。運営コストも手間も増えるが、社会情勢に対する安定感は大幅に増すはずだ。

この考え方はいわゆる「分散」の基本であり、ポスト・ホケニズム的なビジネス術だと言ってもよい。

「一発逆転」ではなく、「一発逆転を必要としない暮らし方」

しかし、ビジネスの分散には初期投資が必要で、リスクもある。会社の規模もいくらか大きくしなければならないし、ポスト・ホケニスト的には、嫌になったときに辞められない仕事なんか、本当はあんまりやるべきではない。

そうなると、お金に余裕が出たタイミングで資産を海外に分散するのが低コストかつ手軽で、基本的に誰にでもオススメしやすい選択肢となる。

私は投資家と名乗ってはいるものの、特に大金持ちでもなければ、一発逆転も狙っていない。そのような個人が資産運用するにあたって注意すべきポイントは二つ。それは税金と手数料をできる限り払わないこと、そして充分に分散することだ。

税金と手数料は、投資家にとって“事前に判明している確実な損失”と考える。突然の株安や通貨危機を事前に予測するのは不可能に近いが、税金や手数料はほぼ100%あらかじめ把握することができる。分かりきっている以上避けるのが賢明な判断だ。

では、どうすれば避けれるのか?簡潔に言えば、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)といった制度をうまく利用すれば、支払う税金を軽減できるし、取引コストが低くて品揃えのよい証券会社を選び、商品をきちんと比較すれば最小限まで手数料を抑えることができる。ときには例外もあるが、これらの考え方は資産運用の基本姿勢としておさえておくとよい。

ふたつ目の分散に関しては、諸説ある。専門家でも意見の分かれるところだが、ポスト・ホケニズム的には「世界中に広く分散する」という選択肢が最適だろう。

具体的な商品名を挙げるなら、投資信託の『eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)』などはポスト・ホケニスト向きだと言える。

この商品は、ローコストで分散投資していくことに特化している。信託報酬(=実質的な手数料)がとにかく安く、分散効果もかなり高い。つみたてNISAでこの商品を少しずつ集めていくだけでも、資産の強度は増していく。

「分散しろと言う割に金融商品は1種類でよいのか?」と疑問に思われる方もいるだろうが、そもそも『投資信託』とは、株式や債権などを組み合わせて作られたアソートセットのような商品なので、1種類買うだけでも私たちのお金は複数の株や債権などに分散される。

商品ごとに運用方針や手数料はさまざまだが、『eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)』の場合は、三菱UFJ国際投信という会社が私たちから集めたお金を元手として、日本を除く先進国22か国と新興国23か国の中〜大型株、約2480銘柄に分散して運用する。

この商品は直近の成績が特別よいわけでもないし、何が起きても「1番儲かる銘柄」には成り得ない作りになっている。だが、むしろそのほうが都合がいい。とにかく世界中に分散されている分、爆上がりもしないが、暴落もしない。

株式系投資信託としてはトップクラスに信託報酬(=投資信託の手数料)が安く、分散効果も十分に高い。非課税制度も使える。一見地味に見えるが、コツコツと合理的な手段で資産を強化していく様は、まさに「一発逆転を必要としない暮らし方」を目指すポスト・ホケニズムにピッタリと言えるだろう。

こういったものを積み重ねて大抵のことでは動じないような、強くしなやかな生活を作り上げたい。

第1回〈「保険要る要らない論争」からの脱出〉
第2回〈貯金さえあれば安心か? 貯金主義の危険性〉
第4回〈定住でも、放浪でもない。古代人類に学ぶ「半遊動生活」のすすめ〉
第5回〈移住は考察から。統計データとハザードマップで暮らしを読み解く〉
第6回〈これから先もどうせ激動。「弾力ある暮らし」でやり過ごしたい〉

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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Huuuuはローカル、インターネット、カルチャーに強い編集の会社です。 わかりやすい言葉や価値観に依存せず「わからない=好奇心」を大切に、コンテンツ制作から場づくりまで、総合的な編集力を武器に全国47都道府県を行脚中。 企業理念は「人生のわからない、を増やす」。

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