保険の基礎知識
2022.12.13
複数のがん保険を上手に組み合わせるポイントと注意点は?【FP監修】
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。日本FP協会AFP認定者。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。
複数のがん保険に入ることには手厚い保障が受けられるなどのメリットもありますが、組み合わせ方によっては保険料負担が重くなったり、保険料が無駄になったりすることもあります。この記事では、複数のがん保険に加入する際のポイントや注意点を解説します。
より手厚い保障を受けたい場合や、いま入っているもの以外にも気になるがん保険がある場合などには、2つ以上のがん保険に入ることを検討してみましょう。がん保険にはさまざまな特徴があるため、複数のがん保険に入ることで保障を充実させられます。しかし、組み合わせ方に注意しないと保険料が無駄になる可能性も高いため、複数加入する際のがん保険選びは特に慎重にする必要があるでしょう。
この記事では、複数のがん保険を上手に組み合わせるポイントと注意点を解説します。がん保険の加入や見直しを検討している人は、参考にしてください。
複数のがん保険に入る際のポイント
複数のがん保険に加入していれば、支払事由に該当する場合にそれぞれの保険契約から給付金を受け取れるため、保障が手厚くなるなどのメリットがあります。ここでは、複数のがん保険を組み合わせる際に押さえておきたいポイントを3つ解説します。
- 足りない保障を補う
- 必要な保障だけを手厚くする
- 異なる保険会社の商品を組み合わせる
足りない保障を補う
特に、がん保険を契約してからしばらく見直しをしていない人におすすめなのが、いま入っている保険に足りない保障を洗い出し、いまの保険契約はのこしつつ足りない保障を補える保険にも加入する方法です。
たとえば、以前はがんの治療といえば入院・手術がメインだったため、がん保険の保障も入院保障や手術保障に重点が置かれていました。ところが、最近はがんによっては外来だけで治療することも可能になり、通院保障の重要性が増しています。そのため、いま入っている保険で入院の医療費に備えつつ、通院保障が手厚いがん保険に追加で入るのがおすすめです。
必要な保障だけを手厚くする
一口にがん保険といっても、商品によって保障内容にさまざまな特徴があります。そのため、それぞれの保障の強みを生かし、組み合わせることでがんの幅広いリスクに備えられるでしょう。
たとえば、
- 通院保障や入院保障はあるが、診断給付金として受け取れるのは数万円だけのがん保険
- がんと診断されると診断給付金として50万円が受け取れるが、ほかの保障はないがん保険
の2種類のがん保険があるとします。もしもの時にどちらかひとつだけでは保障が十分でないと考える場合は、両方に加入することで経済的な負担を幅広くカバーできるでしょう。
異なる保険会社の商品を組み合わせる
がん保険に複数加入するメリットは、手厚い保障が受けられることだけではありません。異なる保険会社の商品を組み合わせることで、加入している保険会社が破綻してしまった際に保障が受けられなくなってしまうリスクに備えられます。
複数のがん保険に加入するときの注意点
複数のがん保険に入ることにはメリットもありますが、注意すべきポイントもあります。ここでは、2つ以上のがん保険に入る際の注意点を3つ解説します。
- 保険料支払いや請求手続きの負担が増える
- 意図しない保障の重複に注意
- 公的医療保険制度について知っておく
これらのポイントを押さえておけば、複数のがん保険に入る必要性を判断できるようになります。また、複数のがん保険に入る際も保険料の無駄を抑えられるでしょう。
保険料支払いや請求手続きの負担が増える
複数の保険に加入する場合、当然のことながらそれぞれの保険に対して保険料を払わなければいけないため、保険料負担が大きくなります。がんに備えるために保障を手厚くすることは大切ですが、保険料の支払いが家計を圧迫することは避けなければいけません。保険料を払い続けられなくなり、途中でがん保険を解約してしまうことになっては本末転倒です。
保険に入る際は、まずは1カ月に保険料に充てられる金額を明確にしてから、保険を検討すると良いでしょう。また、そもそも複数のがん保険に入る必要があるのか、貯蓄やほかの保険の保障などでカバーできないかをよく検討してから加入手続きすることをおすすめします。同一の会社で主契約と特約に加入した方が保険料が抑えられる場合も多いです。
また、複数の保険に加入していると、もしもの時にそれぞれの保険に対して給付金などを請求する手続きが必要です。保険会社によって請求方法や必要書類などが異なる可能性もあります。元気な時であればまだしも、体調がすぐれないなかでいくつもの手続きを進めるのは負担に感じるかもしれません。
がん保険に複数加入していると、手間だけでなく、費用の面でも負担がかかる場合もあります。保険会社に給付金を請求するには医師の診断書が必要ですが、診断書は1部につき5,000円前後の発行手数料がかかるのが一般的です。保険会社によってはコピーではなく診断書の原本を必要とする場合もあり、発行手数料だけでそれなりの費用がかかってしまうかもしれません。
意図しない保障の重複に注意
2つ以上の保険に入っており、どの保険にも入院保障がある場合などを保障が重複しているといいます。手厚い保障を受けるためにあえて似たような保障がある保険に入る場合を除き、保障の重複は保険料の無駄につながります。
特に、がん保険と医療保険の両方に加入している場合は、医療保険の保障内容にも注意しましょう。がん保険と重なりやすい保障として、入院や先進医療の保障などがあります。保障が重複する場合は、ほかの保険を選ぶか、特約であれば該当する保障だけを解約できないかなどを確認してみましょう。
公的医療保険制度について知っておく
がん保険に入る前に、治療で利用できる公的医療保険の制度を把握しておきましょう。特に、1カ月の自己負担限度額を超えた医療費が戻ってくる高額療養費制度は、がん治療による医療費負担を軽くできるため、かならず押さえておきたい制度です。また、会社員や公務員で健康保険に加入している人は、がん治療のための休職中に傷病手当金を受け取れる可能性があります。
ただし、入院中の差額ベッド代や先進医療にかかる費用など、公的医療保険制度ではカバーできない費用もあります。がん保険に複数加入する際には、自分に必要な保障額を把握しておかなければいけません。公的医療保険制度について知っておくことで、がん保険で備えるべき保障額をより正確に計算できるようになります。
まとめ
がん保険に複数加入する際は、足りない保障を補ったり、手厚い保障を受けたりできるような組み合わせを選ぶことが大切です。ただし、多くの保険に入ればそれだけ保険料などの負担は増えるため、保障の重複などには注意しましょう。がん治療で利用できる公的医療保険制度を把握しておくことも、保険料の無駄を省くのに役立ちます。
これからがん保険に加入する人や、いま入っているがん保険だけでは保障が不十分だと感じている人は、複数のがん保険を組み合わせることを検討してみましょう。
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リアほMAGAZINE編集局
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