保険の基礎知識
2022.03.18
保険料が戻ってくる医療保険のしくみや注意点は?掛け捨て型よりお得なの?
掛け捨て型が一般的な医療保険ですが、最近では一定年齢に達したときに支払った保険料が戻ってくる医療保険が増えてきました。
健康に自信があり、医療保険を利用する可能性が低いと考えている人のなかには、保険料が無駄にならないので掛け捨て型よりも魅力的だと感じる人もいるのではないでしょうか。
しかし、保険料が戻ってくる医療保険は一般的な医療保険と比べて、本当に得なのでしょうか。利用するにあたって注意点などがあるのかどうか、気になる人もいるでしょう。
この記事では、保険料が戻ってくる医療保険について、そのしくみや特徴、加入する前に知っておきたい注意点などを解説します。
保険料が戻ってくる医療保険のしくみ
最近増えてきた「保険料が戻ってくる」医療保険について、
- どのようなしくみで保険料が戻ってくるのか
- 保険会社はどのように利益を得ているのか
という2つの気になる疑問を解説します。
健康なら保険料が全額戻ってくる
保険料が戻ってくる医療保険では、
- 保険に加入後一定の年齢に達したとき(50歳〜70歳の間が多い)
- それまでに払い込んだ保険料と、受け取った保険金などの合計額との差額を健康還付給付金として受け取れます。
健康還付給付金が受け取れる年齢は保険に加入した年齢に応じて決められており、還付金が受け取れる年齢に達するまで最低でも10年〜15年程度、保険料を支払い続ける必要があります。
また、一定年齢に達した際に支払われる健康還付給付金のほかに、入院給付金などの保険金を受け取っていない人に定期的にお祝い金が支給される商品もあります。
健康還付給付金を受け取ったあとも、保険を継続(=保険料を支払い続ける)ことで、引き続き保障を受けることが可能です。
保険会社はどうやって利益を得ている?
払った保険料が全額戻ってくるなら、保険会社はいったいどのように利益を得ているのか気になりますよね。
保険料が戻ってくる医療保険では、保険会社は加入者が支払った保険料をさまざまな方法で運用しています。そしてその運用益から経費を捻出し、残りを利益としているのです。そのため、保険料を全額還付しても保険会社は利益を得られるのです。
保険料が戻ってくる医療保険の特徴
医療保険は万が一の病気やケガの際の経済的リスクに備えて、公的保障の補完として加入するものです。そのため、お得かどうかだけでなく、もしものときに十分な保障があるかどうかも保険選びのポイントです。
ここでは、保険料が戻ってくる医療保険について
- 保険料
- 保険期間
- 保障内容
を、一般的な医療保険と比較しながら解説します。
保険料が割高
保険料が戻ってくる医療保険は、一般的な医療保険と比べると保険料が割高な傾向があります。なぜなら、保険会社は加入者から集めた保険料を運用することで利益を出しているため、できるだけ多くの資金を必要とするからです。
保険期間は一生涯つづく終身タイプ
保険料が戻ってくる医療保険は、保障が一生涯続く終身医療保険であることが多いです。終身医療保険には以下のような特徴があります。
- 保険期間は亡くなるまで続く
- 保険料も一生涯払い続ける必要がある
- 年齢が上がっても保険料は加入時から一定
終身医療保険は、保険期間も一生涯ですが、保険料の支払いも一生涯続きます。また、定期医療保険よりも保険料は高めですが、保険料が年齢につれて上がる定期医療保険に比べて、保険料は一定な場合が多いため、長期で加入すると定期タイプよりも保険料の総額が安くなる場合が多いです。
保障内容は一般的な医療保険と同様
保障内容は入院給付金や手術給付金などで、一般的な医療保険と変わりません。健康保険などの公的保障では不足する医療費や治療中の生活費などに備えられます。
- 入院給付金:病気やケガで入院したときに給付金が受け取れます。
- 手術給付金:病気やケガで手術を受けたときに給付金が受け取れます。
また、先進医療特約などの特約を付帯させられる点も一般的な医療保険と同様です。
保険料が戻ってくる医療保険の注意点
健康に自信がある人にとって、支払った保険料が戻ってくる医療保険はお得に見えますが、本当にそうなのでしょうか。ここでは、保険料が戻ってくる医療保険に加入を考える際に知っておきたい注意点を解説します。
保険料が戻ってこないこともある
保険料が戻ってくる条件は、一定年齢に達するまでに保険から給付を受けていないか、受け取った額が支払った保険料の総額を下回っていることです。これらの条件を満たしているときにだけ、保険料の還付を受けられます。
そのため、長期入院などを経験し、支払った保険料を上回る給付金を受け取ったことがある人は健康還付給付金は受け取れません。すべての人が保険料の還付を受けられるわけではないので注意しましょう。
また、保険料が戻ってくる医療保険では途中で解約した場合に解約返戻金がもらえるものもありますが、解約するタイミングによってはそれまでに支払った保険料の総額を解約返戻金が下回ることや、解約返戻金がないこともあります。
掛け捨て型の方が得なこともある
保険料が戻ってくる医療保険は、60歳などの一定年齢に達した際に健康還付給付金を受け取ったあとも保険料を払い続けることで保険契約を継続できます。
ここで、40歳から85歳まで医療保険を継続した場合のシミュレーションをしてみましょう。
条件は以下の通りです。
- 保険料が戻ってくる医療保険の保険は月額4,000円で一定
- 健康還付給付金が受け取れるのは60歳
- 途中で病気やケガなどによる給付金の受け取りはなし
- 一般の医療保険(掛け捨て型)の保険料は月額2,000円で一定
【保険料が戻ってくる医療保険の場合】
60歳までに支払う保険料の総額
4,000円×12カ月×20年=96万円
60歳以降85歳までに支払う保険料の総額
4,000円×12カ月×25年=120万円
健康還付給付金で戻ってくる額
96万円
40歳から85歳までに支払う保険料の合計
96万円+120万円−96万円=120万円
【掛け捨て型の医療保険】
40歳から85歳までに支払う保険料の総額
2,000円×12カ月×45年=108万円
40歳から85歳までに支払う保険料の合計
108万円
このように、保険料や保険に加入するタイミング、また、保険を何歳まで継続するかによっては掛け捨て型の医療保険の方が支払う保険料の総額が少なくなります。
保険料が戻ってくる医療保険は、健康還付給付金を受け取ったタイミングで解約すれば実質的に保険料なく利用も可能です。しかし、一般的に、高齢になるほど医療機関を受診する確率が高くなり、それだけ医療保険を利用する機会も増えるので、解約しない人が多いのではないでしょうか。
一方、払った保険料が無駄になると考えられやすい掛け捨て型ですが、長い目で考えると掛け捨て型の方が支払う保険料が少なくなることもあるのです。
まとめ
保険料が戻ってくる医療保険は一定年齢に達した際に健康還付給付金が受け取れます。利用方法によっては保険料負担を少なくできるのでお得ですが、保険料や加入期間次第では一般な医療保険の方が支払う保険料の総額が抑えられることもあります。
保険料が戻ってくるしくみを理解して、自分に合った保険を選びましょう
WRITER’S PROFILE
リアほMAGAZINE編集局
保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。