保険の基礎知識
2022.04.27
医療保険でもがん治療に備えられる?【FP監修】
「医療保険には加入しているけれど、がん保険も必要かな?」
「医療保険でもがん治療に備えられる?」
このような悩みに本記事ではがん治療にかかる費用はどのようなものがあるか、また医療保険でも備えられるかを解説しています。
保険の見直しを考えている方はぜひ、参考にしてみてください。
がん治療にかかる費用
がんになった場合にがんの部位やステージによっても治療方法は異なり、そのため個人個人でかかる費用は違ってくるでしょう。
まずは、がん治療が必要になった場合にどのような費用がかかるか、みていきましょう。
保険適用の治療費
がん治療のほとんどは保険適用されるため70歳未満の現役並み所得者であれば窓口負担は3割になります。
また、がん手術などで入院した場合、医療費が高額になった際は高額療養費制度を活用することで自己負担額を軽減することができます。
70歳未満で年収が330~770万円未満であれば、例えば1ヶ月間(月初から月末)の医療費が100万円かかった場合、保険適用後は30万円です。
高額療養費制度を活用することで自己負担額は87,430円までが上限となるため、残りの212,570円は払い戻されます。
保険適用外の治療費
がん治療の中には保険適用されない治療で先進医療や自由診療を受ける場合があります。
保険適用される治療法で回復が見られない場合に本人が希望し、医師の承認を得ることで受けることができます。
先進医療は診察や検査などは保険適用されますが、先進医療の技術料に関しては保険適用されず全額自己負担となってしまいます。
自由診療の場合は混合診療が認められないため診察や検査なども含め、すべてが自己負担となってしまいます。
例えば、がんの先進医療では「陽子線治療」や「重粒子治療」がありますが、治療を受けた場合の先進医療の技術料は約300万円かかります。
※参考:令和2年度実績報告|厚生労働省
治療費以外の費用
がん手術などの入院した場合に治療費以外の費用として、入院中の食事代や個室を利用した場合の差額ベッド代、寝衣代、日用品代などがあります。
また抗がん剤治療の副作用で髪が抜けてしまった場合に医療用のウィッグが必要になってくる場合もあるでしょう。
がん罹患後の収入減
がん罹患後に就労状況に変化があった人の割合は半数以上おり、収入が減少した人の割合も全体の3割に及びます。そのうち収入が5~7割にまで減った人の割合は全体の60%ほどになります。
がん罹患前と同じように働くことが難しい場合が多く、収入も減ってしまうリスクがあります。
※参考:第2回治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会~がん罹患と就労問題~|厚生労働省
がんの治療方法
がんの治療方法は基本的にはがんと診断されると「手術療法」、「薬物療法」、「放射線療法」の三大療法と呼ばれる治療で保険適用されます。
医師が三大療法の中からがんの種類やステージ、患者の症状や環境などを考慮して適切な治療法を提案します。場合によっては2つ以上を組み合わせることもあります。
昔は手術療法によるものが主のため入院期間も長い傾向にありました。最近では抗がん剤治療や放射線治療が通院治療でも行われるようになり、通院治療へとシフトしてきています。
最近のがん治療の傾向
がん治療の傾向として入院患者数が年々減少しており、通院患者数が増加傾向にあります。
また入院日数も短くなってきており、厚生労働省の平成29年の調査ではがんの平均入院日数は17.1日となっています。
今後も通院でのがん治療が増えていくことが予想されるでしょう。
医療保険でもがん治療に備えられるか?
医療保険とは大きな病気やケガで手術や入院した場合に備えることができる保険です。
そのためがんで手術や入院した場合にも保険金を受け取ることができます。
しかし、医療保険ではがんの手術や入院した場合には備えることはできますが、がん治療にかかる費用や治療機関の長期化による収入減に備えることができるかと言われれば十分とはいえないでしょう。
また抗がん剤治療や放射線治療なども通院治療で行われるようになり、医療保険の通院保障では足りない可能性があります。
では、がん保険で備えた場合はどうでしょうか。
医療保険とがん保険では保障内容にどのような違いがあるのか見比べてみましょう。
医療保険とがん保険を比較
医療保険とがん保険の違いとして、がん保険は、入院給付金の支給限度日数が無制限であり、診断給付金やがん先進医療特約があることが挙げられるでしょう。
保障内容は保険会社によっても異なりますが、診断給付金はがんと診断されるとまとまった保険金を受け取ることができるため、治療費や生活費の補填としてさまざまなことに活用ができます。
また、保険会社によっては主契約や特約で抗がん剤治療や放射線治療を受けた場合に備えることができるものもあります。
そのためがん保険ではがん治療に十分にカバーできる可能性が高いといえるでしょう。
医療保険 | がん保険 | |
---|---|---|
保険加入の目的 | 病気やケガの保障 | がんの保障 |
入院給付金の支給対象 | 病気やケガによる入院 | がんによる入院 |
入院給付金の支給限度日数 | 上限あり | 無制限 |
がん診断給付金 | なし (特約付加可能) |
あり |
先進医療特約 | あり | あり |
がんに特化した保障 | ない場合が多い | 放射線治療特約 抗がん剤治療特約など |
がん治療に備えるためには?
医療保険だけでがん治療をカバーできるかと言われれば、十分といえない可能性がありますが、貯蓄額や働き方などによっても答えは変わってくるでしょう。
例えば会社員や公務員などが加入する社会保険では、入院中に傷病手当金や有給休暇を活用することである程度の収入を得ることができます。
医療保険にがん保障特約を上乗せする
医療保険にがん保障特約を付けることで、がん診断給付金やがん入院給付金などで保障を上乗せすることができます。
設定金額や付けられる保障内容も保険会社によって異なり、がん保険よりも保障が限定的である場合が多く見られます。
しかし、メリットとして医療保険とがん保険の両方に加入するより、保険料を抑えて備えていくことができます。
がん保険に加入する
貯蓄額に余裕がある場合はがん保険のみに、加入するという選択肢もあるでしょう。
医療保険よりも保障内容を選べるほか手厚く備えることができます。
がん診断給付金の設定金額も50~300万円と幅広く、さまざまなことに使うことができます。
また治療が始まれば治療の種類を問わず、毎月決まった金額が治療給付金として受け取ることができるものもあります。
入院・通院の長期治療に備えることができるので、がん保険のみに加入することも検討してみても良いかもしれません。
がん収入保障保険に加入する
自営業者やフリーランスなどが加入する国民健康保険には傷病手当金がありません。
そのためがんで入院した場合は収入が途絶えてしまいます。
がん収入保障保険であれば、がんと診断されれば毎月決まった保険金を年金形式で受け取ることができます。
がん罹患後に収入減に備えることができます。
まとめ
医療保険でもがん治療に備えられるかについて解説してきました。
抗がん剤治療や放射線治療が通院治療でも行われるようになり、長期化すれば医療がかさんできます。
またがん罹患前と同じように働くことが難しいことから、がん罹患前より収入が減る可能性もあります。
がん治療は長期的なる可能性や治療のためにかかるさまざまな費用、がん罹患後の収入減のリスクがあります。
このようなことに医療保険だけで備えることはやはり難しいと言えます。
貯蓄や働き方にもよりますが、医療保険に特約で保障を足したり、がん保険やがん収入保障保険で備えることも検討してみてはいかがでしょうか。
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。日本FP協会AFP認定者。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。
WRITER’S PROFILE
リアほMAGAZINE編集局
保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。