著名人・専門家コラム
2022.05.09
いざというときの就業不能保険って?【住宅FP関根が答える!Vol.6】
みなさんこんにちは、ファイナンシャルプランナーの関根です。
前回のコラムでは「がん保険に入るなら今」というテーマでお話しました。現在は様々な検査の技術が発展しており、少し前までより遥かにがんの早期発見ができるようになってきました。がん罹患後の生存確率が高まった一方でがんの再発リスクが高まり、保険会社にとって保険金の支払事由が増えてきています。保険会社にとって元が取れない状況になっており、今後がん保険の改悪が進むことは間違いありません。がん保険に入るなら保障内容も良く、保険料の安い今のうちがおすすめです。
みなさんにぜひお考えいただきたいことがあります。それは自分になにかあった場合というのは病気になり入院、手術をする、事故にあってしまい死亡してしまう。そういった状況を想像する方が多いのではないでしょうか。入院をしていれば入院保険が入ります。死亡した場合、死亡保険金を受け取ることが出来ます。ですが、入院をしていない、死亡もしていない、でも仕事はできない、そういった時の備えはしていますか?という考え方です。
「いやいや、そんな時は、傷病手当金があるから大丈夫でしょ。」といった意見をよく目にしますが本当に大丈夫なのでしょうか。休職や退職により収入金額は減るが今までの生活費に加えて、治療費などが必要になる場合が多く家庭に大きな負担となります。今回はそういった働けない場合に保障される就業不能保険について具体的にお話をしていきたいと思います。
傷病手当金のみで本当に大丈夫?
傷病手当金というのは会社に勤めていて、その会社で社会保険に加入している人が対象となります。そのため自営業者やパートタイムの労働者は適用となりません。また傷病手当金は支給基準日から1年6か月が支給の最終期限となっております。そして、傷病手当金支給期間にその会社を退職する場合には、退職までに社会保険の被保険者期間が1年以上ないと退職後の傷病手当金の支給はなく、1年6か月満期で受給することはできません。
就労不能状態での収入
では傷病手当金で支給される金額はいくらくらいになるのでしょうか。
障害年金の金額も含めて就労不能状態発生後のお金の流れを具体的に計算します。
今回の場合には前提条件として、会社員、年収の中央値を約400万円として計算をします。年収400万円のうちのボーナス部分は傷病手当金支給の計算対象とはなりませんので今回、ボーナスを年2回、1回20万円の支給ということで、ボーナス以外の支給金額は360万円とします。
よって標準月額報酬は30万円ということになります。
4歳の子どもが1人、障害等級2級に該当する場合で計算していきます。
傷病手当金は標準報酬月額の2/3の金額が支給されますので、今回の場合には月20万円の支給となります。傷病手当金は支給されてもボーナスもなくなり、月の収入が10万円の減少というのは家庭にとって大変大きな負担となるとは思いませんか。
また、障害年金の支給は審査に時間がかかることから、就労不能状態の発生時から傷病手当金受給期間終了後の1年6か月後に支給開始となります。障害年金は子どもの数や年齢によって支給金額が変わりますが今回の場合には障害基礎年金で子の加算もあり月8.3万円の支給となります。障害厚生年金は月7.2万円の支給となり合計で15.5万円の支給となります。
子どももいて月20万円、15.5万円で生活していくことができるでしょうか。生命保険文化センターが発表している平均的な生活費が月26.3万円、年間300万円以上かかります。月6.3~10.8万円のマイナスとなります。非常に厳しい数字となっており、この分は貯金から補うしかありません。
そして就業不能となってしまったのが自営業者である場合には傷病手当金の支給はないため、障害年金の支給開始まで収入はありません。また、障害年金も障害基礎年金のみとなり、障害厚生年金がない分金額は少なくなってしまいます。傷病手当金や障害年金だけでは生活していくことはできませんね。
身近な就業不能
実はこういった就業不能状態になってしまう方はたくさんいます。厚生労働省による「厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、平成14年度末時点では障害基礎年金1級・2級受給者数は約44.5万人でした。しかし、平成27年度末の障害年金基礎年金1級・2級受給者数は約77.7万人と13年間で約1.7倍に増加しています。他人ごとではありません。
(公財)生命保険文化センターが行った「平成27年度生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯主が万一の場合の資金準備ができている世帯は47.4%、世帯主の病気やケガの治療や入院した場合の医療費の準備ができている世帯は54.3%、一方で、世帯主が病気やケガのため長期間働くことができなくなった場合の生活資金の準備ができている世帯は20.6%と非常に少ないです。
就労不能保険で備えよう
就労不能保険の支払事由は2つあります。
1つ目が「国民年金法にもとづく障害等級1級または2級の状態に該当していると認定され、障害基礎年金の受給権が生じたとき」。つまり、就労不能保険というのは住宅ローンの団体信用生命保険のように保険会社が支払う条件を設定するのではなく障害基礎年金の支払事由と連動して支払われる形となっています。
また2つ目の支払事由は「当社所定の就労不能状態に該当したとき」となっています。先ほど就労不能保険は障害基礎年金の支払事由と連動して支払われると解説したのに「当社所定の就労不能状態ってどういうこと?」と思うかもしれませんがこれも同じことです。
少し前に障害基礎年金は審査に時間がかかるため1年6か月後から支給が開始するとお話ししました。就労不能保険の場合にはまだ障害者等級の認定がされていなくても障害基礎年金の支払事由にあたる場合、障害基礎年金支給前の1年6か月の間も保険金が支払われることが多いです。
就労不能状態になってからの一生涯、貯金があり破産する心配がない方には必要ないかもしれませんが、若いうちなどに働けなくなってしまっては残された長い人生、非常に心配が残ると思います。こういったリスクに就業不能保険で備えましょう。
今までは病気になってしまった場合に備える保険についてお話してきましたが、そもそもですが健康に過ごせることが一番です。次回のコラムでは自分で「予防しよう、生活習慣病」「生活習慣病に備えるには?」というテーマでお話させて頂きます。
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。