著名人・専門家コラム
2024.03.08
薬価の値上げや手術技術の向上により医療費は大きく上昇する!【住宅FP関根が答える!Vol.92】
みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
先日は介護保険制度の今後を考えながら、民間生命保険会社による介護保険の必要性の話をさせていただきました。
介護保険に関して、今後少子高齢化が進む中、介護ニーズの高まりと、介護を必要とする老人人口の増加により、現在の財政では賄えなくなることが予想されています。そのため介護保険制度の改正が進んでいくと思われます。現在40歳以上の人が負担している公的介護保険料を20歳以上からの負担にするなど、財源確保に向けて政府は動いていくのではないかと予想しています。
また、介護サービスを受けた際の自己負担額も、原則1割から2割、最終的には3割負担へ増加していく可能性も考えられ、今後は介護状態になったときの負担が増えていくことが予想されます。それらのリスクに備えるために、介護保険も必要な時代になってくるといったお話をしました。今回は入院や手術などによる、健康保険制度と、民間の医療保険の関係を考えていきます。
健康保険制度の今後
健康保険制度は、国民の窓口負担は原則3割となっております。75歳以上の後期高齢者の場合には原則1割、年収によっては2割、3割と増えていくのですが、今後はこれら窓口負担が増えていく可能性が高いと考えます。これらの前提となるのは、医療費の値上げです。大きく分けると薬価(薬の価格)の値上げと、最先端医療の進化が考えられます。
薬価の値上げ
現在は薬の開発費用が高くなっています。薬価は製薬会社が決めることができず、厚生労働省が決めています。価格の決め方として新薬の場合、原材料費や製造開発費等の原価をもとに決めていくのですが、今は薬の開発費用がどんどん高くなっているため、薬の価格も高くなっています。
ちなみに1番高い薬だと、1回の投与で1億6707万円です。ここまで高い薬はレアではありますが、乳がんの薬でCDK4/6阻害薬という全く新しいタイプの薬があり、大きな治療効果も認められているのですが、こちらも高額の治療薬となります。乳がんの治療はホルモン治療が10年続きますが、このCDK4/6阻害薬は従来のホルモン治療と並行して2年間投与されます。月額の薬代は50万円ほどとなります。もちろん高額療養費の扱いになりますが、一般的に高額療養費は5万円から8万円程度になることが多く、それが2年間続くことになり、患者さんにとっても健康保険組合にとっても、双方に大きな費用負担となっていきます。
従来のホルモン治療でしたらジェネリック薬が使えるため、それほどお金はかからないのですが、こういった新しいタイプの薬、俗にいうゲームチェンジャー系の薬の開発が各メーカーで進められており、以前と比べて治療費が大きく増加しています。
最先端医療の進化
また、治療費が上がっていく原因の1つとして、手術技術の進化も挙げられています。ロボット支援手術で有名なダヴィンチは、4本のロボットアームが付いており、1本には内視鏡カメラ、残り3本は操作をするためのアームなのですが、これらを患者の体内に挿入し、手術室内に置かれたコンソールと呼ばれる操縦席に座って、医師が3Dモニターを見ながら遠隔でロボットアームを操作して行う手術なのですが、通常の手術と比べ、患者さんの負担を大きく減らすことができるため、医療現場で採用されることもありました。
以前はこのダヴィンチによるロボット支援手術は、前立腺がんや腎臓がんの手術のみ保険適用となっていました。それがダヴィンチの特許切れにより、医療用機器の製造メーカーが自由に手術支援ロボットを開発することができるようになり、今まで制限されていた他の手術にも幅広く採用されることになりました。
今までダヴィンチを使ったロボット支援手術において、健康保険適用外の治療を受けた場合、自由診療だったため高額な費用がかかっていたのが、現在は健康保険適用になったことにより、手術の実施数も増えております。もちろんこちらも高額療養費の扱いになるため、高額療養費適用後の窓口負担は5万円から8万円程度といえますが、健康保険組合の負担は増していく一方です。
これらゲームチェンジャー系の薬や、ロボット支援手術の普及により医療費全体が高額化していき、窓口負担は高額療養費により変わらないかもしれませんが、健康保険組合の負担はどんどん増していきます。
ここまでで何度も健康保険料の値上げを繰り返されており、当初3.6%から始まった健康保険料は、現在10%にまで上がっています。今後さらに健康保険料の値上げも予想されますし、窓口負担の増加も考えられます。現在、75歳以上の後期高齢者の方ですと、原則1割負担、年収によって2割、3割と負担が増えていきますが、今後はおそらく、後期高齢者といった縛りもなく、原則3割負担という時代になっていくのではないかと予想しています。
そして大きく改正されることが予想されるのが高額療養費制度の限度額の金額です。ゲームチェンジャー系の薬や、ロボット支援手術の普及により、医療費が爆発的に増していく中今までと同じような負担額でいけるはずはありません。今後は窓口負担が増え、それに備えるためには国の高額療養費制度に期待するのではなく、民間の生命保険での入院給付金や、手術給付金で備える時代に変わっていくと思っています。これからは益々、民間の生命保険会社による医療保険、介護保険の社会的役割が増していくものと考えます。
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。