著名人・専門家コラム
2025.01.31
年収1000万円でも貯蓄なし世帯が約18%|貯蓄ができない4つの理由【住宅FP関根が答える!Vol.134】
みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。昔は年収1,000万円を超えるかどうかで成功者か否か、判断されるような時代もありました。今では年収1,000万円を超えても、一定の達成感はあっても自分は成功者だと考える人は少なくなったと思います。年収1,000万円の人ってどれくらい貯金があるのかご存じでしょうか。今回のコラムでは一昔前まで成功者と言われた年収1,000万円の現実についてお話いたします。
金融広報中央委員会が発表している令和5年の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、20代~30代の世帯年収1,000万円~1,200万円の場合で平均1,046万円程度の金融資産を保有していると言われています。ここで見ていきたいのは金融資産を保有していないの割合です。金融資産非保有者という言葉があって、それは全く金融資産をもっていない人のことを指します。この金融資産非保有者は20代~70代の世帯年収1,000万円~1,200万円の方々のなかの17.9%もいます。つまり、6人に1人の割合で貯金がないという状況です。ちなみにこの上に貯蓄額100万円未満という項目があり、それが3.4%なので、非保有者というのは本当にまったく貯蓄はない人のことです。
※参考:令和5年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]|金融広報中央委員会
年収が高いのに貯金ができない理由
なぜ、ある程度稼いでいるにも関わらずお金がないのでしょうか。理由を考えていきたいと思います。まず1つめの理由としては、意外と使えるお金が少ないということです。日本の所得税は超過累進課税です。所得が高ければその分、所得税が増えます。住民税は一律10%ですが、所得が増えればその所得に対しての10%と計算されるため、当然住民税も高くなります。そして、健康保険料や厚生年金保険料も収入ごとに金額が決まりますので、収入が高ければ各種保険料も増えていきます。社会保険料は会社員の場合、会社との折半ですが、それでも負担は小さくありません。
稼ぐにも、1,500万円、2,000万円とさらに稼ぐことができれば社会保険料には上限があるので負担感も減りますが、税金は増える一方です。1,000万円をちょっと超えたくらいの社会保険料の負担感は1番大きいです。そのため、年収1,000万円と言っても、実際に使えるのは750万円程度と言われています。そして社会保険料額の変更などにより、昔に比べると手取り額が減っているのが現状です。
年収1,000万円でも生活が苦しい理由の2つ目は、補助金が対象外になっていくということです。たとえば、まだ残っている所得制限です。私立高校授業料の実質無償化がありますが、無償化対象の目安は年収910万円未満となっています。
そして、貯蓄がない理由の3つ目には住宅費が上がる傾向にあるということです。住宅を購入する場合、ライフプランなどを立てて、そこから買える金額を算出する人は少ないです。実際のところは年収から考えて、いくら借りられるという計算で購入予算を決めてしまう人が多いです。そもそもの住宅費が上がっているので、なかなか希望の物件に手が届かないという状況になることが多く、そうなると、今の自分たちの年収だといくらの物件が買えるのかというより、いくら借り入れできるのかという考えにシフトチェンジしていく方が多いです。年収がそこまでなければ多額な住宅ローンを借りることはないのですが、みなさんどうしても、年収から予算を組み立ててしまう傾向にあります。
そして貯蓄が貯まらない理由の4つ目は、生活費全般が高くなりがちということです。年収1,000万円というと、そこに達したという一定の精神的なバーを越えることになります。そこで自分は成功したのだと思ってしてしまう人がいます。こういうタイプの人は、過去に何人も見てきました。仮に、年収1,000万円稼いでいたとしても、年収1,200万円の人の使い方をしてしまっては赤字になってしまいます。また、年収1,200万円の人が年収1,500万円の人の使い方をしていると同じく破綻をしてしまいます。
こんなこと分かり切ったことだと思われるかもしれませんが、実際にそういう人は存在しています。そして、そういう人は何にお金をかけているということではなく、何にでもお金をかけているという人が多いです。食費、外食費、趣味、旅行、そしてなんといっても教育費です。そういう日々のお金の使い方をすべてにおいて、ちょっとワンランク上のもので選ぶ傾向があります。本人も知らず知らずのうちに、使ってしまっています。お金の使い方には正解はありません。しかしながらそうした積み上げが、いつの間にか「こんなに稼いでいるのに、なぜこんなにお金がないの?」という状況に陥ってしまいます。この辺りは意識して気を付けたいところです。
ただそうは言っても、この年収に対して貯蓄がないという状況は年収1,000万円~1,200万円の人に1番多いです。それでは老後に向けてどのように資産を形成していけばいいのか、新NISAと生命保険の活用、それぞれの話を次週させていただきます。
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。