著名人・専門家コラム

2023.10.18

会社のグループ保険があれば民間の保険に入らなくてもいい?【住宅FP関根が答える!Vol.73】

みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
お客様と面談をしているとたまに「会社のグループ保険(団体保険)に加入しているので、民間の生命保険に加入をする必要はないのでは?」という人がいますが、この考え方は正しいのでしょうか。今回はこのグループ保険(団体保険)と民間の保険に関して解説していきます。

グループ保険(団体保険)がおすすめな保険種類

比較的規模の大きい会社や官庁などになると、社内の福利厚生で従業員用にグループ保険(団体保険)に加入している場合があります。これらの多くは掛け捨てタイプの保険となっており死亡保険、医療保険、3大疾病の保険や、傷害保険などいろいろなタイプの保険があり、また配偶者も加入できるプランもあることが多いです。これらのグループ保険(団体保険)は1年間の更新型となっていることが多く、保険料も同じ保障内容であれば民間の生命保険よりも割安です。こういったグループ保険(団体保険)に加入していれば民間の生命保険に加入する必要はないのでしょうか。

私の考えとしては死亡保険の場合、会社のグループ保険(団体保険)をすすめることが多いですが、医療保険や3大疾病の保険などではグループ保険(団体保険)ではなく民間の保険に加入することをおすすめしています。 

死亡保険はグループ保険(団体保険)がおすすめである理由

グループ保険(団体保険)で加入する死亡保険は多くの場合、遺族の生活保障を加入目的としており、そしてその遺族の生活保障は、子供の成長と共に必要がなくなっていくことが多いです。

仮に30歳で第一子、32歳に第二子が誕生した場合、下の子が大学を卒業する22年後は親の年齢は54歳です。仮に35歳、37歳でお子様が誕生したとした場合でも、下の子が大学を卒業するのは59歳です。こういった家族の年齢を考えると、遺族の生活保障として加入する数千万単位の大きな死亡保障はご自身が定年退職を迎える頃に必要なくなっていく可能性もあります

また、この時期になれば、会社で積み上げられた退職金や、iDeCoなども十分な額になっていることもあり、それらの資産を考えると60歳以降の遺族生活保障は必要ない場合も多いです。グループ保険(団体保険)は一年更新になっていることが多いため保険料は徐々に上がっていくことが多いですが、それでも保険料は比較的民間の保険に比べ高くないことも多く、このことからも死亡保険はグループ保険(団体保険)で賄うという考え方はありだと考えます。

医療保険・3大疾病保険は民間保険会社がおすすめである理由

一方で、医療保険や3大疾病の保険をグループ保険(団体保険)で賄うという考え方に関しては、あまり賛成はできません。医療保険や3大疾病保険は働いている現役時代ではなく定年退職をした後に必要になることが多いです。

例えばがんの罹患年齢を見てみましょう。「がん」の罹患リスクを表すときに年齢階級別累積罹患リスクという言葉があるのですが、このデータは年齢別にその年齢から一定年数経過後、どれぐらいの確率でがんになるかという指標です。国立がん研究センターの調べによると、2019年における年齢階級別累積罹患リスクでは、40歳男性における10年後のがん罹患リスクは約1.6%、50歳男性の場合、約5.2%であるにもかかわらず、60歳男性の場合、約15.7%と罹患リスクが高まります。また70歳男性の場合、約31.3%が10年後、がんに罹患するリスクがあると発表されています。現役世代である20代から50代まではがんの罹患率は非常に低く、60歳を過ぎると急激に上がっていくのがわかります。

※参考:最新がん統計|国立がん研究センター がん情報サービス

つまり、若い年齢におけるがんの罹患リスクは低いのですが、60歳、70歳と年齢を重ねるうちに、がんのリスクが高まっていくのが分かります。そのため同じグループ保険(団体保険)といっても、遺族の生活保障が必要なのは多くの場合60歳前後までとなることとは異なり、医療保険や3大疾病の保険は、むしろ退職後に必要になってきます。

まとめ

グループ保険(団体保険)の場合、定年退職まで加入できるというものが多いですが、逆に定年退職後は保障を外れてしまうことも多いです。また仮に退職後に契約を更新できたとしても、保険自体が一年更新で年齢が上がるにつれ保険料は値上げされていきます。そのため老後は保険料の値上げに苦しめられる人も多くなってしまいます。

老後の収入源は多くの場合、年金収入です。年金収入となり収入が下がった後にやってくる更新型の医療保険は、保険料を払うことができず、支払いを断念してしまう人も多くいらっしゃいます。

ちなみにこちらの考えは住宅ローン団信にもいえます。住宅ローンの特約として以前から人気だった3大疾病団信、また最近流行りのがん団信とラインナップも増えていきますが、これらの団信は住宅ローンを支払っている間のみ保障されるため、住宅ローン完済後は保障も消滅してしまいます。こういった年齢別の罹患リスクを含め検討いただけたらと思います。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直

ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。

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