著名人・専門家コラム
2022.05.31
老後大丈夫?介護にかかる費用を確認しましょう【住宅FP関根が答える!Vol.9】
みなさんこんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
今回のコラムでは介護保険についてお話させて頂きます。介護はなんとなくお金がかかると分かってはいるものの、なってみないことには実際にどの程度のお金がかかるのか想像がつきにくいのが現状です。現在は人生100年時代です。100年生きられても実際に介護が必要な状況になってしまうのは大体何歳くらいからなのでしょうか。介護費用や介護期間について具体的な金額を挙げながら解説いたします。
人生100年時代
みなさんも「人生100年時代」聞いたことがあると思います。
ここ最近でも平均寿命が非常に延びてきており、一昔前より高齢期が長くなりました。厚生労働省の「令和2年 簡易生命表の概況」によると90歳まで生存する人の割合はなんと、女性52.5%、男性28.4%となっております。すごい確率ですよね。女性は約2人に1人が、男性は約3人に1人が90歳以上生存することになります。
では平均寿命は現在いくつになるのでしょうか。それは女性で87歳、男性で81歳になっています。少し前に男性の平均寿命が80歳を超えたことで話題になりましたね。
平均寿命が延びるということは嬉しいことですが、一方で、考えなければいけないのは「健康寿命」です。健康寿命という言葉自体はみなさんも聞いたことがあると思います。健康寿命は日常生活に制限がない状態と定義されています。要するに、心身ともに自立し、健康的に生活できる期間を言います。厚生労働省の「平成30年 第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料」によると女性は74歳、男性は72歳となっています。つまり平均ですが女性は12年、男性で8年間、生活に制限がある状態で老後を送ることとなります。
公的介護保険制度
こういった状態になったときに頼れるのは公的介護保険です。
ただ一口に介護保険といっても第1号被保険者と第2号被保険者の2種類があることはご存知ですか。第1号被保険者は65歳以上の方が対象となり、第2号被保険者は40歳以上65歳未満が対象となります。
また介護保険の対象となる特定疾病が異なります。第1号被保険者は要介護、要支援の認定を受けていればサービスの対象となりますが、第2号被保険者は末期がんや脳血管疾患をはじめとする指定の16疾病のみがサービスの対象になります。16の疾病を詳しく知りたい方は下記に厚生労働省で出しているパンフレットのリンクを貼り付けておりますのでそちらをご参照ください。
※参考:介護保険制度について|厚生労働省
介護にかかる費用と期間は?
では実際に介護にかかる費用はいくらくらいになるのでしょうか。
介護費用には2種類あり、毎月かかる介護費用と一時的にかかる介護費用があります。(公財)生命保険文化センターの「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、一時的な介護費用は要支援1から最も介護が必要な要介護5までの平均で69万円となっております。初期費用だけでも突然の出費にしてはとても大きな金額となります。また、毎月かかる介護費用は在宅介護の場合で平均4.6万円と施設利用を行った場合平均11.8万円とされています。貯金を取り崩している老後で毎月のこの金額の出費は厳しいですね。
(公財)生命保険文化センターの「平成19年度 生活保障に関する調査」「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」により比較します。
1998年では介護期間の平均は33か月でした。しかし、2018年では介護期間の平均は54か月とわずか20年で介護期間は2倍弱と増えております。
なぜこれほど介護期間は増えてしまったのでしょうか。答えはとてもシンプルで、平均寿命の伸び率に、健康寿命の伸び率が追い付かないという状況が長く続いてきたためです。
厚生労働省が出している「平均寿命と健康寿命の推移」によると、2001年における女性の平均寿命が84.93歳、男性が78.07歳、健康寿命は女性が72.65歳、男性は69.40歳でした。
対して2016年の平均寿命は、女性が87.14歳、男性が80.98歳です。健康寿命は女性が74.79歳、男性が72.14歳でした。この15年で平均寿命は、女性で2.21年、男性で2.91年上がっています。
一方で健康寿命は、女性で2.14年、男性は2.74年の上昇となっており、平均寿命の方が健康寿命に対して上昇しているところから毎年少しずつ、少しずつ差を広げている状況となっております。
用意しなければいけない介護費用は?
具体的に介護にかかる総額を計算してみましょう。
まずは在宅介護の場合から考えていきます。
69万円(一時金)+4.6万円(毎月の介護費用)×54か月(介護期間の平均)=317万円
となり、あくまでも平均ですが300万円以上が必要になります。
次に施設を利用した場合の介護費用の総額です。
69万円(一時金)+11.8万円(毎月の介護費用)×54か月(介護期間の平均)=706万円
となり、なんと介護費用だけで700万円以上が必要になります。
こちらは平均なのでこちらよりも安い場合もありますが高い場合もあります。この金額を現金で用意することができるのであれば保険に加入する必要はありません。ただ現在は、比較的リーズナブルな価格で、医療保険の特約等で一時金100万円などのプランもあり、初期費用などに充てられるだけでもとても楽になるのではないでしょうか。心配な場合には、検討するのもいいのかもしれません。
住宅FP関根前回のコラムはこちら
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。