著名人・専門家コラム
2022.08.30
会社員ならまずやるべきiDeCoとNISA【さんきゅう倉田コラムVol.6】
会社員の方と会って、話すことがなくなったら、「iDeCoやってる?」と聞いています。iDeCoをやってる人には「NISAもやってる?」と聞いています。
どちらもやっていない人には、「おお、会社員よ、iDeCoも NISAもやらないとはなにごとじゃ」と、ドラクエの「おお、勇者よ、死んでしまうとはなにごとじゃ」みたいに言っています。
東証1部に上場しているような大きな会社に企業研修で伺うことがあります。参加者からの事前のアンケートで目立つのは、「会社員でもできる節税はありますか」という質問。
基本的に、会社員は税金のことをほとんどわからなくとも生きていけます。源泉徴収と年末調整があるため、申告納税制度を採用している日本においても確定申告が不要だからです。
でも、少しお金の勉強をするようになると毎月納めている源泉所得税と住民税が気になります。もう少し税金が少なくならないかなぁなどと考えます。
賢い人ほど、節税への道を模索します。Googleで検索していたら出てきた足場節税とかInstagramで表示された不動産購入による所得税の還付に魅力を感じてしまいます。
「しまいます」なんですよ。会社員ができる節税などありません。そんなものがあったら、みなさんが毎日出勤する会社の総務が教えてくれるし、SNSで活躍する税理士さんが発信してくれるし、メディアの頂点であるテレビが紹介してくれます。
そうなってないのは、会社員の節税が存在しないからです。
ぼくも、数ヶ月に1回、「会社員の節税はありますか」と取材で聞かれます。
その度に、困ってしまいます。
そんなとき、沈黙に耐えかねて言うのが
「強いて言うならば、医療費控除と雑損控除とふるさと納税ですかね。節税とはちょっぴり異なるけれど、iDeCoとNISAはやはりおすすめですよね」です。
iDeCoとは
毎月掛け金を払って、そのお金を運用してもらって、貯まったお金を仕事を辞めた60歳以降に受け取るという制度です。それだけではありません。
掛け金として払ったお金を、収入から(厳密には所得から)引くことができます。個人事業者でいう経費のように扱えます。
払ったお金を収入から引くことができると、みなさんが納める所得税が減ります。
所得税は累進課税なので、iDeCoによって支払った金額の5%の所得税が減る人もいれば、10%や33%、45%の人もいます。払っただけでなく、それが定年後に増えて戻ってくるならば、お得感をご理解いただけると思います(でも、iDeCoは元本割れのリスクがあるよ)。
iDeCoで預けたお金は投資信託によって増えたり減ったりします。どんな投資信託に変わるかはみなさんの選択次第ですが、一般的にはインデックスに充てて長期で利益を出すことを目指すと思います。
NISAとは
一般NISAと積立NISAがあって、どちらも投資の利益が非課税です。一般的には投資で得た利益には20%程度の税金がかかります(所得税と住民税)。
20%の所得税が賦課されるには会社員であれば少なくとも年収700万円以上が必要なので、平均年収から考えるとほとんどの方が20%未満の税率を適用されています。
そう考えると、株式投資の税率20%は高い。
富裕層は所得税45%と住民税10%を合わせて55%とすると、およそ20%は低い税率と感じるかもしれません。
投資をこれから始めるならば、そんな素晴らしい制度を使わない理由がない。
それでも、NISAを勧めるとテレビマンからは「デメリットはなんですか?」とデメリットがある前提で質問されます。
メリットがあるならばデメリットもあると考えるのは、社会人として当然なのかもしれません。どんなときでも、メリットにばかり目を向けると痛い目に遭うと分かっているのだと思います。
強いて、デメリットを言うならばNISAで購入した株が損失を出しても、利益を出した他の株と損益通算ができないことぐらいでしょうか。
しかし、最初から買った株が下がると思って買う人はいません。こんなとき、猪木さんが質問者を引っ叩いた映像を思い出します。
「猪木さん、今回の試合負けたらどうしますか?」
ビンタ
「戦う前から負けること考える馬鹿いるかよ!」
(言葉のニュアンスが多少異なるかもしれません)
試合をする前、みんな勝つと思って試合に望んでいます。負ける可能性を考慮して質問するなんて失礼極まりない。同様に、株を買う前から下がると思う人に投資をする資格はない。勝つために汗水たらして働いて得た大切なお金を投入するんだから、必ず勝つという気概を持つべきです。
一方で、失っても耐えられる程度の資金に留めるのもリスクを考慮すると必要といえます。
会社員ができる節税が限られています。iDeCoもNISAもまだの方は、まずこちらから始めて、そのあと副業を模索すると良いと思います。ゆめゆめ、よくわからない不動産投資に手を出さないように。
WRITER’S PROFILE
さんきゅう倉田
芸人。ファイナンシャルプランナー。1985年神奈川県生まれ。 大学卒業後、国税専門官試験を受けて東京国税局に入庁。中小法人を対象に法人税や消費税、源泉所得税、印紙税の調査を行ったのち、同局退職。吉本興業の養成所NSCに入学し、芸人となる。