特集

2022.06.22

「保険要る要らない論争」からの脱出|ポスト・ホケニズムの生活考

著:ヤマザキOKコンピュータ
挿絵:あけたらしろめ

世界はふたつに分かれてしまった。

医療保険や生命保険を信じ抜き、加入を推進し続ける保険主義者「ホケニスト」。対して、保険への加入を断固として拒む「アンチ・ホケニスト」

どちらも安心で幸福な暮らしを求めているはずなのに、人生のリスクに対してどう備えるべきかという主義主張、通称「ホケニズム」をめぐる争いは、家族愛や死生観といった大きなテーマも巻き込んで、巨大な論争に発展している。

私もまた、投資家として執筆活動を続けるうちに、アンチ・ホケニスト側の意見に染まってしまっていたような気もする。

何かに染まる、というのは簡単だ。先人たちが舗装した道を、ただ歩いて行けばいい。考える時間や労力を節約できるし、誰かの評価に晒されることもない。そこで温存したエネルギーは、自分の専門分野の道を切り拓くために活用できる。こうやって我々人類は分業しながらやってきた。

しかし、我々の生きる世は混迷を極めに極め、日々新時代へと突入し続けている。「ホケニストかアンチ・ホケニストか」というような旧時代的二元論ではどうにも太刀打ちできないリスクが襲いくることもあるだろう。

まして、ホケニズムは人生を切り拓く上で非常に重大な要素となり得るものだ。ひとりひとり求めるものが違う以上、真摯に幸福を求めるならば自分のホケニズムだって自分で作り上げていくしかない

そこで私はこの対立構造から距離を置き、新たな形を模索してみようと思う。既存のホケニズムに囚われない新しい形……。その名は「ポスト・ホケニズム」。保険主義と反保険主義、両者からの脱却をここに宣言する。

そもそも人々はなぜ保険に入るのか。何を恐れているのだろうか。

「恐れ」と言われてはじめに思い浮かぶのは「死」であるが、死亡保険に入ったからといって、もう一度生き返るというようなことはない。死亡保険で防げるのは、葬儀費用で親戚に迷惑をかけることや、資金不足で子供が大学に行けなくなるなど、あくまで金銭的なリスクに限られる。

また、日々細心の注意を払って暮らし、いくつもの保険をかけ合わせ、地震、雷、火事、親父……あらゆる危機に備えたとしても、倒産、暴落、インフレに、春は花粉のアレルギー。降りかかる危機は尽きることを知らず、葬式費用を用意して自動車保険にさえ入っておけば全て安泰! というような単純な話では決してない。

最近は人生100年時代などと言われていて、長生きを前提とした人生設計が求められる。

厚生労働省が発表した「簡易生命表(令和2年)」によると、日本人の平均寿命は男性が81.64歳で、女性が87.74歳とある。平均寿命はまだまだ伸びる余地があるし、平均以上に長生きする可能性も十分考えられる。

こんなに長いかもしれない人生を、不安を持って生き続けるのはあまりにもきつい。

ポスト・ホケニズムの生活考

「明日死んでも、100年生きてしまっても良いという生き方が理想」。この言葉は私が数年前に別のメディアのインタビューで答えたものだ。とっさに発した言葉だが、気に入ったのでいまだにこすって使ってる。

命ある以上、もちろん悔いなく生きたいし、やりたいことはやっておきたい。とはいえ、100年生きる可能性がある中で、この先のリスク対策を全て投げ打つというのはなかなか厳しいものがある。楽しみながらも保険を各所に打ち込んで、安心して未来を迎えられる、しなやかで丈夫な暮らしを作り上げていきたい。

そこで、保険という概念自体を考え直し、新たな解釈を作り上げよう。ここで言うポスト・ホケニズム的な「保険」とは、資産の持ち方を工夫することや、外国の言葉を覚えること。会社から解雇されても大丈夫な状態や、すぐに引っ越せる態勢を作ることなど、その他さまざまな形が考えられる。

私は一応投資家なので、やっぱり資産に関する保険の掛け方が真っ先に思い浮かぶ。資産運用に関する話は次回で詳しく取り上げようと思っているが、掻い摘んで説明すると、私は投資信託や個別株などを利用して、資産の半分以上が海外資産になるよう調整している

例えば、資産が500万円あったとしても、全て銀行預金に入れていた場合、日本経済が破綻したときは運命を共にするハメになる。もし大幅なインフレが発生し、牛丼1杯1万円の時代に突入した場合、500万円の貯金では2ヶ月も待たずに底を突くことになるだろう。

一方で、日本円がどれだけ暴落しようと、海外株の価値にそこまで大きな影響はないはずなので、私の資産が受けるダメージも限定的なものとなるはずだ。ちょっとずつ株を切り売りすれば、1〜2年は生活を守り抜けるかもしれない。

この例では、投資というものを「お金を増やすため」ではなく「リスクに備えるため」に活用している。投資はお金を増やすためのものでしかないと思われがちだが、使い方によっては保険となり得ることがわかる。その他にも保険を広義で捉えれば、森での暮らし方や野菜の作り方も人生の保険として充分機能する可能性があるわけで、ポスト・ホケニストとしてはそのあたりも無視したくない。

というわけで、本稿より”ポスト・ホケニズムの生活考”を開始する。当連載は、あくまで生活考なので、私の考えをツラツラ述べるだけではなく、身の回りの人や歴史上の人物まで様々な人々の生活からホケニズムを発見し、考察を進めていこうと考えている。

「保険にさえ入っておけば良い」というような盲目的な”ホケニズム”を脱却した上で、反保険主義にも染まらない。あらゆるものを横並びに捉え、それぞれの人生に合った保険の形を模索したい。

楽しくこの世を生き抜くために、”ポスト・ホケニズム”的な生活を考える。

第2回〈貯金さえあれば安心か? 貯金主義の危険性〉
第3回〈脱・一発逆転。「リスク」は世界中に分けて、散らばらせる〉
第4回〈定住でも、放浪でもない。古代人類に学ぶ「半遊動生活」のすすめ〉
第5回〈移住は考察から。統計データとハザードマップで暮らしを読み解く〉
第6回〈これから先もどうせ激動。「弾力ある暮らし」でやり過ごしたい〉

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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Huuuuはローカル、インターネット、カルチャーに強い編集の会社です。 わかりやすい言葉や価値観に依存せず「わからない=好奇心」を大切に、コンテンツ制作から場づくりまで、総合的な編集力を武器に全国47都道府県を行脚中。 企業理念は「人生のわからない、を増やす」。

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