保険の基礎知識
2022.04.19
損をしない!がん治療中に利用できる制度を知ろう【FP監修】
がんの治療中に利用できる公的制度についてご存じですか?
公的制度を利用すると、がんの治療中にかかる費用を抑えることができるため、貯蓄次第ではありますが、がん保険に加入する必要性が少なくなります。
公的制度はご自身で申請しないと利用できないものもあるため、がんになった時に備えて把握しておく必要があります。
本記事では、がんの治療中に利用できる公的制度について解説します。
公的制度と貯蓄を踏まえた上で、がん保険の必要性を検討してください。
高額療養費
日本では公的健康保険により、保険適用される医療費の自己負担が1割〜3割に抑えられます。
加えて、公的健康保険が適用される医療費に限定されますが、私たちが負担する月の医療費には上限額があります。
その上限額を定めている制度が高額療養費制度です。
高額療養費の上限額は年齢や所得によって異なります。
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数回該当の場合*1 |
---|---|---|
年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% | 140,100円 |
年収約770~1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% | 93,000円 |
年収約370~770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% | 44,400円 |
~年収約370万円 | 57,600円 | 44,400円 |
市区町村民税非課税者等 | 35,400円 | 24,600円 |
*1多数回該当:同一世帯で直近12ヶ月に3回以上上限額に達した場合、4ヶ月目以降多数回該当となり、自己負担額が軽減されます。
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数回該当の場合 | |
---|---|---|---|
通院(個人) | 入院および通院(世帯) | ||
年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
140,100円 | |
年収約770~1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
93,000円 | |
年収約370~770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
44,400円 | |
年収約156~370万円 | 18,600円 | 57,600円 | 44,400円 |
市区町村民税非課税者 | 8,000円 |
24,600円 | 同左 |
うち所得が一定以下 | 15,000円 |
例えば、年収550万円の方が、がんの入院手術により、50万円の医療費(公的医療保険適用分)の支払いが生じた場合の上限を考えます。
80,100円+(500,000-267,000)×1%=82,430円
この例では、公的健康保険が適用される医療費の支払いは82,430円です。
本来であれば、約15万円の医療費の負担が約8万円に抑えられます。
高額療養費の利用方法
高額療養費の利用方法は2種類あります。
1つ目は窓口で医療費を支払った後に、後日支払い過ぎた部分(上限額を超えた部分)の払い戻しを受ける方法です。
加入している公的医療保険制度の保険者、健康保険組合や共済組合、市区町村などに高額療養費の申請をすると、数ヵ月後に払い戻しを受けられます。
窓口での支払いが困難な方は、高額療養費貸付制度を利用すると、無利子で資金を借り受けられます。
返済は高額療養費の払戻金で行います。
2つ目は限度額適用認定証を提示することです。
事前に、高額療養費が適用されるとわかっているとき(長期の入院前)に、公的医療保険の保険者に申請すると交付されます。
限度額適用認定証を窓口で提示すると、窓口での支払いが高額療養費の上限額までに抑えられます。
また、マイナンバーカードを健康保険証として利用をできるようにしておくと、マイナンバーカードを使える医療機関では、限度額適用認定証の提示が不要です。
傷病手当金
傷病手当金は病気やケガが原因で、入院・自宅療養など、長期間働くことができない場合に予想される収入減少を保障する制度です。
この制度は、会社員や公務員などが加入する健康保険のみにある制度なため、自営業やフリーランスが加入する国民健康保険にはありません。
傷病手当金は最長1年6ヵ月、直近1年間の収入相当額の約2/3が支給されます。
なお、支給されるためには以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 業務外の事由による病気やケガによる休業であること
- 仕事をすることができない状態であること
- 病気やケガによる療養のために、休んだ日から4日以上仕事ができていないこと
- 病気やケガによる療養のために仕事を休んでいる期間、給与の支払いがないこと
医療費控除
1年間(1月1日〜12月31日)までの医療費が10万円を超えた場合、確定申告をすることで所得税が還付されます。
医療費控除における医療費には、病院の窓口で支払った医療費や薬の費用のほか、公的医療保険の対象外となる、通院するための交通費(タクシーは基本的に対象外)や入院中の食事代なども対象となります。
確定申告の手間はありますが、所得税の還付によって、実質的には医療費の負担が軽減されているため、年間の医療費が高額になった方は確定申告をすることをおすすめします。
まとめ
がんの治療中に利用できる公的制度をまとめました。
特に高額療養費の制度を知っていると、月の医療費の上限が予測しやすいため、貯蓄で備える際に役立ちます。
公的制度を知っているか、知らないか、ではがんを含む病気やケガのリスクに対する備え方が変わります。
本記事では治療中に利用できる公的制度を紹介しましたが、治療後に利用できる公的制度もあるため、一度調べてみてはいかがでしょうか。
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。日本FP協会AFP認定者。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。
WRITER’S PROFILE
リアほMAGAZINE編集局
保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。