保険の基礎知識

2024.10.30

数字で見る「生命保険」。8割以上の加入事実が示す必要性とは。【FP執筆】

生命保険に加入しているでしょうか。一般的に生命保険という言葉は、亡くなったときに保険金を受け取れる死亡保障、病気やケガをして入院・通院をしたときに給付金をもらえる医療保険が対象となります。

日頃ファイナンシャルプランナー(FP)として活動していると、生命保険の独特な立ち位置を実感します。有価証券の運用は資産を殖やすため、不動産は居住するためという意識を持って所有しますが、生命保険は「なんとなく周囲が入っているから」加入している人も少なくはありません。それでいて生命保険は、高い加入率を維持しています。

死亡保険の加入状況

生命保険の加入率を調べている公益財団法人生命保険文化センターによると、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は約89.8%です。つまり、5世帯中4世帯が何かしらの死亡保険に加入しています。昔から日本人は保険が好きだといわれますが、統計結果からも日本人の保険好きを証明しているといえるでしょう。

※参考:2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査|公益財団法人生命保険文化センター

終身型の死亡保険の特徴は、万が一の保障と並列して「貯蓄性」があることです。保険商品にもよりますが、20年間保険料を支払い続けると、投じた保険料の総額よりも高い解約返戻金が受け取れるものがあります。当然、そのあいだに死亡・高度障害となったとき、所定の保険金を受け取れる「セーフティネット」が付加されています。生命保険の貯蓄性を議論するときは、この貯蓄性がほかの運用方法と比較して、どれくらい効果があるのかを考えることが重要です。

よく聞く生命保険不要論者のなかには、保険金相当額の貯蓄があれば保険は必要ない!という方もいます。ただ、何が起こるかわからない人生において、当初のライフプラン通り貯蓄を継続するのは難易度が高いものです。特に子どもが大学に入学する際に必要となる教育費は、とても大きな負担となるでしょう。教育費のほかにも住宅購入費や老後資金を、生命保険を使って準備している人は数多くいます。

医療保険の加入状況

一方、病気やケガで入院・通院した場合に保険金が受け取れる医療保険の加入状況は、29歳以下から65〜69歳までのいずれの年齢帯も90%を超えています。

※参考:2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査|公益財団法人生命保険文化センター

日本には国民皆保険制度があります。健康保険の保険料を支払っていれば、現役世代で医療費総額の3割の自己負担で抑えられます。そのなかでプラスワンとも言うべき医療保険を検討するニーズはどこにあるのでしょうか。

公的保障があれば医療保険は不要?

ここまでの分析でわかることは、死亡保険と医療保険のニーズはまったく別物ということです。両者を合わせて8割という統計がありますが、保険を検討するにあたっては、自分が必要としているのが死亡保障なのか医療保障なのか、しっかり判別するようにしましょう。また本記事では詳しく紹介していませんが、収入を保障する保険やがんなど特定の病気を重点的に保障する保険もあります。トータルで考えて、自分にはどのような保障が必要なのかを考えることで、「周囲が加入している」という右にならえ状態を超えて、自分にとっての保険ニーズを顕在化させることができます。

公的保障があれば、医療保険は不要と考える意見もあります。会社員の場合、会社がある程度保障をしてくれる場合もあるため、会社の制度について調べておきましょう。

また公的保障のなかには、高額療養費制度という一定額以上の医療費の負担については、国が保障してくれる制度もあります。このように医療保険以外にもさまざまな保障がありますので、医療保険に加入する際は複数の視点から検討するようにしましょう。

先進医療は公的保障の対象外

先進医療とは、厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養のうち、公的医療保険の対象になっていないものを指します。先進医療は高い治療効果が期待できる場合も多いですが、保険の適用外ですので、治療法によっては数百万円から数千万円以上を自己負担する必要もあります。

この先進医療は、公的保障の対象に含まれていません。公的保障は、保険加入者が均等に受けられるべき保障内容を対象としており、一部の人が受ける可能性がある先進医療は保障の対象にはなりません。

8割の人は「万が一の事態」に不安がある

数字で見たとき、8割以上の人が生命保険に加入しています。

その理由としては預貯金だけでは心許ないという点です。現時点で預貯金を想定通り貯めているか、不足しているかに関わらず、万が一の病気やケガには支給された保険金で対応したいということがいえます。

この答えに至るまでの解像度は様々です。保険加入の際に多くの人が組成するライフプランのうえで保険が必要と考えた方もいれば、何となく必要だと感じたから、周りが入っているからで保険加入を決断した方もいるでしょう。なかには保険の営業マンに猛プッシュを受け、いたたまれなく不安になって保険に加入した方もいると考えられます。

ただ、保険金を受け取った方のなかに、「別に保険金は要らなかった」という声はあまり聞かれません。たとえ保険に加入する理由が漠然としたものであったとしても、支払う保険料と必要な保障額に納得したうえで加入した保険であれば、万が一の際の助けになるといえるでしょう。

保険の解約か、適切な保険への見直しか

もうひとつの論点は、加入し続ける保険をライフプランのタイミングで見直すとき、「解約」までを考える人は少ないのではないかという指摘です

たとえば20代で終身型の医療保険に加入し、結婚や子育て期間に保険料節約のため、保険の見直しを考える方がいます。このとき「保険料の安い保険に加入したい」「いま入っている保障を見直したい」という希望をよく聞きますが、「もう保険なんて不要だから、すべて解約したい。公的保障だけでいい」という極論まではあまり聞きません。

やはり保険に加入していた多くの方にとって、何かしら生命保険に加入しているのは安心材料であることがわかります。前述した先進医療の有無に限らず、公的保障のみは何かしら不安であり、生命保険のニーズに繋がっているのではないでしょうか

加入すべき保険を決めるには専門家に相談を

とはいえ細かい保障内容を聞くと、何が自分にとって適切なのかわかりません。そもそも自分にとって、どれくらいの保険料負担が適切なのかにも自信が持てないことでしょう

死亡保障や医療保障は、各家庭の状況によって必要な金額がまったく異なります。適切な保障を用意するために、まずは家族のなかで話し合いを行うことが重要でしょう。しかし、生命保険の適切な選び方と、適切な料金がわからないなかで相談しても、答えが導きだせるとは限りません。

保険に精通した専門家に相談することによって、それぞれのタイミングに合致した最適の保険を検討することができます。ぜひ気軽に、専門家に相談してみましょう。

まとめ

保険の加入率から見て備えるべき、死亡保障と医療保障についてお伝えしました。

手厚い保障が用意できるに越したことはありませんが、日々の生活を圧迫してしまうほどの保険料を「万が一のため」に支払っては、保険に加入する意味はありません。

ぜひ今回の記事を参考にして頂き、保険についてあらためて向き合うようにしましょう。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤崇

FP-MYS代表。ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。(執筆実績はこちら:https://fori.io/takashi-kudo)

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