保険の基礎知識
2023.05.17
生命保険の解約返戻金の計算方法!税金はかかるの?【FP監修】
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。
生命保険によっては、解約した際に解約返戻金が受け取れることがあります。自分が加入している保険で解約返戻金が受け取れることを知っていても、実際にどの程度の額を受け取れるか知らない人もいるのではないでしょうか。また、将来期待できる解約返戻金の額をもとに保険加入を検討したい人もいるでしょう。
この記事では、解約返戻金の計算方法や税金がかかるケースなどについて解説します。保険に入っている人も検討中の人も、この機会にぜひ理解を深めてください。
解約返戻金の計算方法
解約返戻金がある保険の場合、保険料として保険会社に支払うお金は保障部分と貯蓄部分に分けて考えられます。保険料のうちの貯蓄部分を積み立てたものから、経費などを差し引いたものが解約返戻金として戻ってくる仕組みです。
そのため解約返戻金は基本的に保険の加入年数が長いほど、受け取れる金額が多くなります。一方で加入期間が短い場合は、解約返戻金がごく少額であったり、まったく受け取れなかったりすることもあります。
解約返戻金の額を確認するには
自分が受け取れる解約返戻金の額を確認する方法を、保険加入前と加入後に分けて解説します。
保険に加入する前であれば、保険のパンフレットや設計書を確認するか、営業担当者に質問しましょう。保険のパンフレットや設計書には、解約返戻金の額を計算するうえで重要な返戻率(へんれいりつ)が記載されています。また、解約返戻金が支払った保険料の総額を超えるタイミングや、早期解約時にはどのくらい解約返戻金として保険料が返ってくるのかなど、保険を選ぶうえで大切な情報が載っています。
一方、保険加入後に現在の解約返戻金の金額について確認した場合は、保険会社に問い合わせすることも可能です。問い合わせの際には、保険証券の番号などが必要です。また、保険会社によっては、インターネットの会員サービスなどから確認することも可能です。
返戻率とは
返戻率とは、支払った保険料に対して、保険を解約した際に戻ってくる金額が占める割合を表す数字です。返戻率と解約返戻金、支払った保険料の総額の関係は、以下のような数式で表せます。
返戻率(%)= 解約返戻金 ÷ 支払った保険料の総額 × 100
たとえば、これまでに合計で100万円の保険料を支払った人が、保険の解約時に70万円を解約返戻金として受け取った場合、返戻率は70%です。返戻率が高いほど、支払った保険料に対して、受け取る解約返戻金が多いことを示します。
返戻率は、保険選びの参考になる情報です。しかし、返戻率だけを基準に保険を選ばないようにしましょう。返戻率が高いほど、保険料が高い傾向にあるため、保障内容と保険料のバランスや、支払い続けられる予算などを十分に考慮することが大切です。
解約返戻金による保険のタイプ
保険を解約返戻金の割合で分類すると、3つのタイプがあります。
従来型
解約返戻金がある保険のうち、最も一般的なタイプです。加入から年数が経つほど、解約返戻金として受け取れる金額が増えます。満期のある保険や定期保険などでは満期が近づくほど、終身保険などの満期がない保険では、加入期間が長くなるほど、多くの解約返戻金を受け取れます。
低解約返戻金型
低解約返戻金型とは、保険料を支払っている期間の解約返戻金が従来型よりも少ない代わりに、保険料が抑えられている保険です。保険料払込期間中に保険を解約すると、従来型の70%程度の解約返戻金しか受け取れません。ただし、保険料の払込期間を終えると、従来型と同程度の返戻率になることが一般的です。少ない保険料で保障を受けつつ、将来のための貯蓄ができる保険です。
無解約返戻金型
解約返戻金がない、いわゆる掛け捨て型の保険が無解約返戻金型です。解約返戻金がないため、保障部分に対しての保険料しかかかりません。そのため、従来型や低解約返戻金型といった、解約返戻金がある保険よりも保険料が抑えられるのが特徴です。
解約返戻金にかかる税金
解約返戻金が支払った保険料の総額よりも多い場合、その差額に対して税金がかかります。
また、保険料を負担する人と解約返戻金を受け取る人との関係性によって、所得税または贈与税の対象となることに注意が必要です。
- 保険料を負担する人と解約返戻金を受け取る人が同じ:所得税
- 保険料を負担する人と解約返戻金を受け取る人が違う:贈与税
所得税がかかる場合、解約返戻金の受け取り方によっても税金の種類が分かれます。一括で受け取った場合は「一時所得」、年金として受け取る場合は「雑所得」です。
ただし、一時所得には年間50万円の控除があるため、解約返戻金を含む利益が50万円以上の場合に、課税されることを覚えておきましょう。つまり、解約返戻金以外に一時所得がない人は、解約払戻金と支払った保険料との差が50万円以下の場合、税金を払う必要はありません。
一方、保険料を払った人と解約返戻金を受け取る人が異なる場合に対象となる贈与税は、年間110万円の控除額があります。控除額が一時所得(所得税)よりも大きいため、解約返戻金が実際に課税対象になることは少ないかもしれません。しかし、もしも対象となる場合は一般的に、贈与税の税率は所得税の一時所得よりも負担が大きい点に注意しましょう。解約返戻金を使って資産形成を考えている場合は、税負担も考慮して毎月の保険料などを決めるのもおすすめです。
まとめ
解約返戻金として保険料のうち、どの程度の割合が戻ってくるかを表す返戻率は、加入する保険商品や契約年数などによって異なります。解約返戻金の計算方法は、保険の設計書を確認したり、保険会社に直接問い合わせたりすることで知ることができます。
また、従来型や低解約返戻金型などの解約返戻金のタイプによる保険の分類も、解約返戻金の金額を知る参考になるでしょう。なお、解約返戻金が支払った保険料の総額を上回る場合、一定の金額以上は税金がかかることに注意が必要です。
解約返戻金がある保険に入っている人や、解約返戻金がある保険を選ぼうと考えている人にとって、この記事が参考になれば幸いです。
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リアほMAGAZINE編集局
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