保険の基礎知識
2022.03.22
医療保険で本人以外が受取人になれるときとは?給付金が課税されることもある?
医療保険では病気やケガによる入院などの際に給付金を受け取る人(受取人)を自由に指定できるのでしょうか。被保険者以外の家族が医療費の支払いをする場合などを想定すると、被保険者と受取人は別にしておきたいと考える人もいるのではないでしょうか。
ところが、医療保険では原則として給付金の受取人に被保険者以外を指定できないとされています。それでは、病状などによって被保険者が給付金を請求できない場合はどうすれば良いのでしょうか。また、死亡保険金のような被保険者が受取人になれない保障が医療保険に含まれている場合もあります。
この記事では医療保険の受取人となれるのは誰かを詳しく解説します。また、給付金や保険金を受け取った際に重要な税金の取り扱いについても紹介します。
医療保険の受取人は原則として被保険者
保険の受取人とは、被保険者(保険の対象になっている人)にもしものことがあった際に、保険金を受け取る人です。医療保険で受取人に指定できる人には制限があるのが一般的です。
医療保険の給付金の受取人は被保険者
多くの医療保険では、受取人は原則として被保険者本人とされており、たとえ配偶者や子供であっても受取人にはなれません。また、保険加入後に受取人を被保険者以外に変更することもできません。
ただし、死亡保険金については、被保険者以外の人を受取人として選べ、配偶者や子供などの家族が受取人になるのが一般的です。
被保険者以外が受取人になる場合
医療保険の給付金は原則として被保険者本人が受取人になりますが、なかには被保険者以外が給付金を受け取るケースもあります。代表的なものが、被保険者が給付金を請求する前に亡くなってしまった場合です。このケースでは、遺族が受取人となります。また、かつては医療保険でも被保険者以外を受取人に指定できるものがありました。その場合はもちろん、受取人に指定されている人が給付金を受け取ります。
そのほかに、被保険者以外で受取人になる可能性があるのは指定代理請求人です。多くの医療保険では、被保険者が存命ではあるものの給付金の請求ができない状況に備えて指定代理請求制度があります。指定代理請求制度については次の項目で詳しく解説します。
指定代理請求制度とは
医療保険は病気やケガの際による入院や手術で給付金が支給されるしくみです。そのため、給付金の受取人である被保険者が病気やケガのために保険金を請求できる状態にないこともあるかもしれません。
そのような状況に備えて、多くの医療保険では指定代理請求制度を採用しています。指定代理請求制度とは、被保険者が給付金を請求できない場合に、加入時に指定した指定代理請求人が被保険者に代わって請求できる制度です。なお、指定代理請求人は途中で変更が可能です。
指定代理請求人になれる人
指定代理請求人は保険加入時に指定できますが、誰でも指定できるわけではありません。保険会社によってルールは異なりますが、一般的に指定できるのは被保険者と以下のような関係性にある人です。
- 戸籍上の配偶者
- 直系血族
- 3親等内の親族
上記の通り、原則として指定代理請求人は被保険者と血縁関係がある人に限られ、友人・知人などの第三者は指定できません。しかし、最近では家族の形が多様化していることにあわせ、一部の保険会社では血縁関係がなくても指定代理請求人に指定できることがあります。
被保険者との関係を証明する書類の提出が条件ではありますが、たとえば
- 内縁関係(事実婚)のパートナー
- 同性のパートナー
- 婚約者
- 介護や財産管理などをしている人
- その他、特別な事情があると保険会社が認めた人
も指定できます。
代理請求ができる場合
指定代理請求人が給付金を請求できるのは主に被保険者が以下のような状況にあるときです。
- 寝たきり状態など、症状が重いために、意思表示ができない
- がんなどにかかっているが、病名や余命を告知されていない
上記のようなケースでは、指定代理請求人が被保険者の代わりに給付金の請求や受取を行えます。
医療保険の給付金が課税されるケース
医療保険の給付金を被保険者やその家族が受け取る場合、基本的に税金はかかりません。しかし、被保険者が亡くなったあとに被保険者以外の人が受け取った給付金や保険金は課税対象です。
医療保険の給付金と死亡時の保険金のそれぞれについて、非課税・課税になるケースについて解説します。
給付金が非課税になるケース
所得税法により、個人が受け取る保険の給付金は非課税です。そのため、医療保険の受取人である被保険者が受け取る給付金には税金がかかりません。それだけでなく、指定代理請求人など被保険者以外の人が受け取った場合でも給付金は非課税です。
また、古い医療保険などでは配偶者や子供など、被保険者以外が受取人に指定されていることがありますが、この場合でも給付金は課税対象になりません。
給付金が課税されるケース
医療保険の給付金が課税されるケースとしては、給付金をもらえる条件を満たしていたのに、受取人である被保険者が受け取らないまま亡くなってしまった場合があります。
この場合、被保険者に支払われるはずだった給付金は、被保険者の死後は被保険者の相続財産とみなされます。そのため、実際には給付金が直接、遺族に支払われたとしても、相続税の対象になります。
もともと被保険者以外が受取人として指定されていた場合は、給付金が非課税になるケースで紹介した、受取人が被保険者以外である場合と同じで給付金は課税されません。
死亡保険金は課税されるが、税金の種類が違う
医療保険で死亡保障がついているものの場合は、やや複雑です。この場合では死亡保険金は必ず課税対象となりますが、契約者・被保険者・受取人の関係によって税金の種類が変わるのです。以下で3つのケースを紹介します。
契約者と被保険者が同じ場合
【例】契約者=被保険者:夫、受取人:妻
死亡保険金は相続税の対象です。
契約者・被保険者・受取人がすべて異なる場合
【例】契約者:夫、被保険者:妻、受取人:子
死亡保険金は贈与税の対象です。
契約者と受取人が同じ場合
【例】契約者=受取人:夫、被保険者:妻
死亡保険金は所得税の対象です。
実際には控除などを含めて課税額は計算されるため、受け取る保険金の額によっては税金の支払いがない場合もあります。
まとめ
医療保険の受取人は原則として被保険者ですが、被保険者が給付金の請求ができない場合は指定代理請求人が受け取ることもあります。また、死亡保険金の場合は被保険者と血縁関係がある人や家族同然の関係にある人を受取人に指定できます。
医療保険の給付金はほとんどの場合、非課税ですが、被保険者が亡くなっているケースなどでは相続税の対象になるので注意しましょう。また、死亡保険金は常に課税対象ですが、契約者・被保険者・受取人の関係によって税金の種類が異なります。
この記事を読んで、医療保険の受取人に関する疑問が解消されれば幸いです。
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リアほMAGAZINE編集局
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