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2024.03.04
生命保険の必要性~老後の年金収入は落ちていく~【住宅FP関根が答える!Vol.91】
みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
前回までの2回のコラムでは、健康保険制度、介護保険制度改定により医療、介護サービスを受けるときの自己負担分は増え、受けられるサービスは縮小していくことが予想され、そのため入院保険や介護保険は必要になっていくという話をさせていただきました。今回は老後における収入源の柱となる年金収入に関して考えていきたいと思います。
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年金制度の歴史
日本における年金制度の始まりは1941年(昭和16年)になります。年金制度ができた当初、年金を受給できるのは男性のみ、受給開始年齢は55歳でした。その3年後に厚生年金保険法が改正され、被保険者の範囲が女性へ拡大されました。
そして1954年(昭和29年)に厚生年金保険法が改正され、年金の受給開始年齢は55歳から60歳に変更され、徐々に引き上げられていきます。現在の年金制度に変わったのは2000年(平成12年)の法改正で、老齢厚生年金の支給開始年齢がそれまでの60歳から65歳に引き上げられることになりました。
2004年(平成16年)には少子高齢化が進む日本において、年金制度を長期にわたり保つ事は難しいと、マクロ経済スライドという物価や賃金の改定率を調整し、穏やかに年金の給付水準を調整する仕組みを作ります。このマクロ経済スライドの制定により、それまで物価上昇に連動して年金の受給額も増えていた制度が廃止になり、賃金や物価が上昇してもそれに連動するように年金の受給額が増えていかないという状況になっていきます。
今後の年金制度
日本の年金制度ができた頃は団塊世代が生まれたころです。そしてその後、団塊世代がたくさんの子供を産み国の人口は増え、産業が成長していった頃でした。しかしながらその後訪れる少子高齢化や、高度経済成長期からバブルにかけて日本経済は世界をリードしていたもののバブル崩壊後、産業は伸び悩み、今も世界的に見たときにIT分野、イノベーションに分野において世界をリードしているとは言い難い状況です。
マクロ経済スライドは物価が上昇する局面において年金受給者を苦しめることになるのですが、ここ30年間は物価がほぼ上がっていなかったため、マクロ経済スライドの影響はあまり受けていませんでした。しかしここ数年、輸入物価を中心に物価は上昇、一方で年金受給者の収入は増えず年金受給者の購買力は下がってきています。
今後も継続的に物価が上昇することが予想され、物価が上昇してもマクロ経済スライドにより年金受給額は抑えられるため、ますます老後の生活は苦しくなっていくことが予想されます。
所得代替率
年金の受給額を考えるときに、所得代替率という言葉が使われます。これは現役世代の手取り収入の何%をもらうことができるのかという数字なのですが、2019年における所得代替率は61.7%となっています。今後、年金の受給額はマクロ経済スライドにより減らされることが予想されるのですが、政府は所得代替率50%以上を目指していこうと動いています。
それではこの所得代替率を改善させるにはどうしたらよいのでしょうか。60歳から受給できていた年金を、65歳まで延長したことにより所得代替率の改善はみられました。先進国においてはどの国も少子高齢化に苦しんでおり、欧米を見ると多くの国で65歳受給から、68歳受給に引き上げられています。日本は男性、女性ともに世界一の長寿国であるということを考えると、他の先進国よりも遅いタイミングで受け取るようになってもおかしくはありませんが、現在はそういった議論すら起こっていない現状です。
少子高齢化と日本の年金制度
日本における年金制度で、なぜ少子高齢化がここまで問題になるのかというと、日本の年金制度は賦課方式という制度を取り入れているからです。今働いている人たちは年金保険料を払っていると思いますが、それのほとんどの部分が、自分たちが将来受け取る年金に回されているのではなく、今実際に年金をもらっている年金受給者の人に回っています。
この制度が維持できたのは、安定的に子どもが生まれ続けるという前提のもとに成り立っています。子どもが生まれない、しかし老人が増えていくという国になってしまうと、賦課方式による年金財政は圧迫されてしまいます。
日本において少子高齢化が叫ばれ出したのは、2000年代に入ってからのことです。この少子高齢化の問題は、世界の多くの先進国が抱えている問題点です。これを解決するには、生産年齢人口と呼ばれる現役で働く人たちの人口を増やし、さらにその次の世代である子どもたちをたくさん産んでもらえる社会を目指さなければいけません。子育て世代へのサポートを充実させ、さらに世界から移民を受け入れなければいけないのですが、現状として単身世帯が増えており、現在は男性の4人に1人は生涯一度も結婚しない、生涯未婚といわれています。2040年には男性の約3人に1人が生涯未婚になり、女性の約5人に1人が生涯未婚になるといわれています。このことからも今後はさらに少子化が進むものと思われます。
※参考:令和2年 国勢調査|総務省
日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計|国立社会保障・人口問題研究所
今までマイナーチェンジを繰り返してきた日本における年金制度ですが、これからはダイナミックに変えていかなければいけません。医療や介護による自己負担額は増えていきます。一方で、年金受給年齢はおそらく引き上げられ、受け取ることのできる年金額は抑制されていくでしょう。年金における収入減、医療費負担の増加、これからは民間の医療保険や介護保険の必要性がより高まっていく時代になっていくと思われます。
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。