著名人・専門家コラム

2023.02.13

我が子が回転寿司店で企業に迷惑をかけるリスクを親はどのように予防するか【FPコラム】

全国の親世代がニュースを見て、回転寿司の会社からどれくらいの賠償を請求されるのだろうと思ったことでしょう。大手回転寿司チェーンである少年が茶用のコップなどを汚損する故意の行為が撮影され、またたくまに全世界に配信されました。SNSでもお店にもう通いたくないという声が散見され、一時期は数十億円の時価総額が毀損しました。当然ながら企業側は少年に対し刑事・民事の両方で告訴準備に入っていると報じられています。

当該少年にはどのような賠償請求が待っているのか

筆者は弁護士ではないため詳しい言及は控えますが、当該少年にはまず刑事裁判で企業の活動を阻害した信用棄損罪(業務妨害)の可能性があります。少年に対する刑事罰を定めた少年法を曲解し、少年は罪に問われないとしているコメントもSNSなどでは目立ちますが、既に少年法は改正されており、家庭裁判所によって逆送(検察官送致)となった処分は刑事罰の対象となります。法務省の発表では対象は1年以上の懲役刑か禁固刑が想定されるものとあり、今回の告訴が該当する可能性も残されています。

もう一方は民事事件です。少年の行為によって毀損された回転寿司店の売上やブランド力が賠償の対象となります。また今後の対策にアクリル板を導入したとも報じられており、これらの設置費用や事件後の洗浄費用も対象となるでしょう。回転寿司は生鮮品を扱うため、売上が回復すればいいというものではなく、短期間の売上急落は多大な仕入損を誘因します。裁判所がどのような判断をするかはわかりませんが、少年の行為は多大な影響を残したことは間違いありません。

また損害賠償とは離れますが、少年の氏名や通っていた学校がSNSで拡散されました(公開される是非については本筋と離れるため論じません)。ある報道によると少年は学校に迷惑がかかると自主退学を選んだとのことです。インターネットで永遠と残るネガティブな情報は「デジタルタトゥー」と称され、将来の再起の道を阻害するものとして問題視されています。

この事件は親世代にとって「対岸の火事」か?

さて、本記事が掲載されるリアほMAGAZINEの主な読者層は30代から40代の親世代が多いです。このニュースを見て我が家には関係ないと思った方より、「もしウチの子が同じことをしてしまったらどうしよう」と思った方の方が多いのではないでしょうか。

子どもが飲食店などで故意による粗相をした場合、年齢によって賠償責任が免除されることはありません。違いがあるのは子どもの行為が故意か過失かの違いです。今回の事件による故意と過失の違いを表で説明します。

故意 自分の意志で茶碗を汚損するケース。汚損するとどうなるかを理解している。
重過失 自分の意志で茶碗を汚損したが、汚損によってどうなるかはわかっていない。一般常識で考えて汚損によって通常利用はできないことは明確なため、過失とは異なる。
過失 自分の意思では茶碗を汚損していない。不注意で茶碗を汚損したケースなど。

故意や重過失の場合、少年は単独で損害賠償責務を負います。現実的に支払えるか否かの論点は除くと、親が連帯責任を負うことは法律上ありません。過失の場合、一方で子どもの年齢によっては、親の連帯責任という面で違いが生じます。年齢別にみていきましょう。

子どもが12歳以下の場合

子どもがお茶を持ってテーブルに寄りかかっていて、何かの弾みで隣席にお茶がかかった場合、過失に該当する可能性があります。一般的に子どもが12歳までの場合は行動を起こしたことに対する理解ができないとされ、過失責任が無くなる場合があります。これは「事理弁済能力」とされ、ニュースでよく話題になる責任能力の前段階です。事理弁済能力が認められない場合は、子どもの代わりに親が責任を負うケースが多くなります

子どもが13歳以上の場合

子どもが13歳から15歳の場合は、子どもと親の両方に責任が問われるケースが多いです。15歳を超えた場合、子どもが単独で賠償責任を負うという区分けが一般的です。いずれにしても経済的には多大な影響があり、何年かけても支払うことのできない賠償額を課せられる可能性はとても高いでしょう。

過失による賠償責任は、普段入っている保険の一種によって予防することができます。それが個人賠償責任保険です。

積極的な個人賠償保険への加入を

個人賠償責任保険は、日常生活で誤って他人にケガをさせたり、他人のモノを壊してしまった際に生じる、法律上の賠償責任を補償する保険です。「損害保険」のなかの一種です。野球をしていて、振ったバットが当たってしまった場合などに適用されます。高額の賠償が課されるリスクを予防する自転車保険が自治体で義務化されるなど注目されていますが、この保険も個人賠償の一種です。

個人賠償責任の特徴は、親が加入すると生活をともにする子どもに賠償責務が生じた際、補償範囲になる保険があることです。今回の事件は故意ですが、仮に過失だとしたときにあらかじめ想定することは困難です。何かあってから加入しても保険の効果はないので、親としては今回の事件を他山の石として、加入しておくことをお勧めします。保険のなかには昨今大きな問題となっている、SNSなどで他人を中傷したり、名誉を棄損することに対する補償が含まれているものもあります。

今回の件は保険で予防できるのか、と思いがちですが、相手の態度硬化に対するリスクがあります。今回、短期間で回転寿司店のほかにカラオケなどで悪戯し、店側が損害賠償前提の厳しい態度で臨む事案が報道されています。過失だからと許容するのではなく、被害者(社)サイドの態度が硬化し、思わぬ賠償責任を負うことも想定されるでしょう。子どもに元気に育ってもらうためにも、保険を活用してのリスク摘み取り策を準備していきましょう。

個人賠償保険は単独で加入できるもののほか、自動車保険などに付帯でつけられています。我が子に少しでもリスクのある親の皆様は、何かが発生してから頭を抱えるよりも、摘み取れるリスクを可視化し、予防していきましょう。

故意の行動をどのように予防するか

さて、この行動が今回の事件のように「故意」だった場合にどう考えるかです。子どもに繰り返し、店舗で悪戯をすると大変なことになると伝えたところで、予防効果は薄いように思えます。今回友人と悪ふざけして撮影したうえの拡散を鑑みるに、友人とのコミュニティ内での盛り上がりが社会規範を超え、取り返しのつかない行動を取らせたと分析できます。何かしらの理由で注目されたい、という感情があったのかもしれません。

親にとってリスクをまったく無くすことは難しいものです。そのなかで最も効果的なのは、子どものデジタルリテラシーを上げることでしょう。

とても表現が難しくはありますが、今回の件もSNSによる拡散が無ければ、ここまでの事件にはなりませんでした。画面に映った当該学生だけではなく、面白がってSNSに載せた友人?も損害賠償の対象になる可能性が高いです。前述したデジタルタトゥーの懸念もあります。ともすれば家庭の教育で、面白がって悪戯を全世界に拡散すればこのようなリスクが懸念されること、それは一生を左右することも伝えていくことです。面白がって短期的な視野で行う行動より大切なものがある。デジタルが身近になったからこそ、親子でしっかりと話し合っていきましょう。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤崇

FP-MYS代表。ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。(執筆実績はこちら:https://fori.io/takashi-kudo)

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