著名人・専門家コラム
2025.02.26
正常性バイアスに騙されない!医療保険が必要な理由をFPが解説【住宅FP関根が答える!Vol.137】
みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
いまだに医療保険はいらないと言われることもありますが、私はほとんどの方に必要だと思います。今回は、私が医療保険は必要だと考える根拠について解説していきたいと思います。
2024年12月10日の共同通信のニュース「106万円の壁、撤廃へ、厚生年金、年収問わず加入」というものです。106万円の壁とは要するに社会保険料を支払うことになる年収の壁になります。その社会保険料を支払う必要が出てくる106万円の壁を撤廃することになりました。つまり、年収が100万円でも50万円でもこれからは会社に勤めている人には社会保険料の負担をさせるということです。103万円の壁の議論は、喧々諤々大変なのに、106万円の壁はあっという間に決まってしまいました。
この変更により、今後の日本は大変な競争社会になっていくことが予想されます。よりアメリカ的になっていくと思いますし、働かずにのんびりと生きることが出来なくなっていきます。日本は、良い意味でも悪い意味でも狭い世界で、国の中での助け合いで成り立っています。それが、この106万円の壁撤廃において、圧倒的な競争社会になっていき、所得格差もより進んでいくと思います。
今まで払っていなかったものを払うようになるというのはかなりの負担感があると思います。しかしながら、今までに比べると106万円を超えて働く人も増えていくことが予想されます。今までは年収要件のため週に15時間程度の労働に抑えていた人も、年収の壁がなくなれば収入を気にせず、週20時間まで働けるようになります。時給が上がったことで働き控えをしていた人にとっては、106万の壁撤廃は年収を増やせるチャンスになるともいえるかもしれません。そうすると、所得の低い人は低く、さらに所得のある人はより稼ぐようになり、所得格差は促進していくものと思われます。
そしてここからは医療保険の話をしていきたいと思います。何度も言いますが、医療保険は必要だと思います。僕自身、心から思って保険を販売しています。ここ4~5年で、医療保険はいらないという人がずいぶんと増えましたが、私は同意できません。こういったことを唱える人は、多少なりとも正常性バイアスが働いているのではないかと思います。
まずは医療保険が必要な理由を整理していきます。現在の医療費負担は、健康保険適用で3割負担となっています。さらには毎月の医療費の限度額となる高額療養費制度、会社員であれば傷病で会社を休むことになってしまった場合には傷病手当金制度もあります。傷病手当金は標準報酬月額の3分の2が休んでいた期間に合わせて最長1年半まで支給されます。こういった制度はたしかに日本が誇る素晴らしい社会保障制度です。しかし、こういった制度が今後も永遠に続くとは限りません。
ここで今回のニュース、会社の社会保険に加入する年収要件、106万円の壁の撤廃です。これは、労働力不足を補完するため、100万円程度で収入調整に入る人に、もっと働いてもらい、それにより労働力不足を補うという目線と、それと同時に、より多くの厚生年金保険料を徴収しようという流れから制度が変えられたと考えられます。
今後の社会保障制度は、大きく変わってきます。現在の総人口は約1億2,000万人で、そのうち生産年齢人口(15歳~64歳)が約60%います。一方で、今後は国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」によると、2045年の生産年齢人口は53.6%、そして高齢者人口が36.3%と言われています。さらに2065年の予測は生産年齢人口52.5%、高齢者人口38.4%となっており、ここからは横ばい予想です。そして2070年の日本の総人口は約8,700万人と予想されています。現在よりも45年後の未来は3000万人以上もの人口が減り、全体を見たときには、さらに若者が減り、高齢者は増えるという構図となります。
※参考:令和6年版 高齢社会白書|内閣府
日本の将来推計人口(令和5年推計)|国立社会保障・人口問題研究所
今後、少子高齢化はますます加速していくということが予想されている中で、現在のまま国が成り立つわけがありません。そう考えると、今回は106万円の壁に手を付けたわけですが、今後も様々な制度の見直しや撤廃が行われていくことはほぼ間違いありません。これは健康保険制度に関しても同じことが言えます。そうなったときには窓口で負担する金額は確実に増えていきます。
そういった現象が身近に迫っていてもなお、正常性バイアスが働いてしまうのが現状です。日本は健康保険制度が整っているから、いざということがあってもそういった制度を使えば安心だ、自分は健康だし、病気になったとしても老後で、いつ亡くなってもよいと考えるころだろうと、その安易な考えがいざというときに困ってしまうことになるかもしれません。
基本的にはお金がない人ほど、医療保険は必要です。どれだけのお金がかかろうと預貯金に余裕があり、困らないのであれば必要がないです。しかし、多くの人は病気になってしまって、長期間働くことができなくなってしまっては生活を維持することは難しくなってしまうと思います。そんな中、健康保険制度が見直しあるいは撤廃されてしまっては、お金がない人は病気になっても、お金がかかるからと、病院に行かないという人も増えてしまいます。
これからの日本は今までとは形が変わっていきます。それは健康保険制度も例外ではありません。アメリカのように健康保険制度に代わるものを民間の保険会社にて補う必要が今後さらにでてくると思います。健康保険制度は変わらない、自分は病気にならない、いざ亡くなるときにはぽっくり亡くなるだろうと考えている方、正常性バイアスに騙されないでください。いざというときにまとまったお金をすぐに用意できない方は保険加入を検討することをお勧めいたします。
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。