著名人・専門家コラム
2025.04.04
がん保険が必要な理由をFPが徹底解説!【住宅FP関根が答える!Vol.142】
みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
実は日々多くのライフプランを作成していると、よくいただくご質問があります。それは、がん保険に加入していないお客様で、「住宅ローンを組むのだから、がん保険はいらないのではないですか」というものです。もちろん無理強いすることはありませんが、住宅ローンを組むとがん保険がいらなくなるということは決してありません。今回はこの疑問について、徹底解説していきます。
以前、私のところにいただいたご相談と近しいものがあるのでこちらの例でお話していきます。ご相談内容は35歳女性、がん保険を検討したいと考えていますが、契約中の住宅ローンの団信(団体信用生命保険)に「配偶者が、女性特有のがんと診断されたら100万円の一時金が支払われる」という保障内容があり、乳がんに関してのみなら別でがん保険に加入しなくても保障は足りるのではないかといったものでした。
住宅ローンのがん団信は、とても良い制度だと思います。最近は金利上昇に合わせて改変もされ始めていますが、いまだに金利上乗せなしでがん50%団信に加入できる金融機関も多いです。乳がんや子宮がんなどの女性のがんの場合には100万円の診断一時金が支払われる場合もあります。
私は今までにも女性のがん保険は必要という話をしています。男性と女性ではがん保険の考え方は大きく異なります。それはいったいなぜなのでしょうか。女性のほうががんにかかりやすいからという意見もありますが実は違います。
国立がん研究センターのデータによると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性62.1%、女性48.9%と、男性の方が多いということが分かっています。そして、がんによる死亡率も男性24.7%、約4人に1人、女性17.2%、約6人に1人と、がんによる死亡率も男性のほうが高いことが分かっています。今までにもがん保険は女性にとって必須という話をしていますが、罹患率や死亡リスクだけを見ると、男性の方がリスクは高いです。それなのに、なぜ女性にとってがん保険は必要なのでしょうか。
女性は男性と比べると、がんに罹患しにくいです。しかしながら、約2人に1人はがんになるというのも事実です。そして女性のがんでとくに怖いのが、女性の約9人に1人が、一生涯のうちに乳がんに罹患するということです。そして、その乳がんの罹患率は、40代の半ばから急激に上がり、その後65歳くらいまで、ほぼ横ばいの罹患リスクとなります。
ここでは仮に、50歳の時に乳がんに罹患したとしてみます。30歳、32歳で子供を産んだ場合、50歳の時の子どもの年齢は20歳と18歳です。さらに、35歳で家を購入したとします。50歳というと、わずか15年の経過です。この時にはまだまだ、住宅ローン残債はある状態です。そして、子どもが大学生となり、子育てで一番お金がかかる時期です。超早期発見できたのなら幸いかもしれませんが、今回の例の乳がんで言っても発見時の進展度は現局約61%、リンパ節転移約22%、隣接臓器浸潤約4%、遠隔転移約7%であり、領域進行(リンパ節転移と隣接臓器浸潤の合計)約26%と、ある程度進行してから発見されることも少なくありません。(残りは不明)
※参考:令和3年 全国がん登録 罹患数・率 報告|厚生労働省
抗がん剤治療になると、身体の負担が大きいので、仕事に支障がでてしまう場合が多いです。そのため治療後は、仕事を休む人も多いそうですし、毛が抜けたり、体重が落ちたり、外見が変わることも多く、肉体だけではなく、精神的にも疲弊してしまうことが多いです。そんな状態になってしまっては当然収入も落ちますし、仕事の部署を変えられる可能性もあります。
子どもの教育費はかかる、住宅ローンもまだまだ残債がしっかりとある、しかし、肉体的にも精神的にも疲弊してしまいなかなか前と同じように働くことができない、さらには一度完治しても再発したらどうしようという不安は一生付きまといます。そして大事なのは、がんという病気は、最終的に死んでしまう可能性がある病気であるということです。乳がんは女性の約9人に1人が罹患し、その病気のリスクが40代後半と若い年代から上がるのは、高齢になってから罹患する確率が高いがんとは大きく異なります。
よく日本は3割負担、高額療養費があるから医療保険やがん保険はいらないといった話を聞きます。そこだけを切り取ればその通りなのですが、がんという病気は、仕事の制限がかかる可能性もありますし、最終的に死に至る病気という恐怖を知らない人が多すぎるような気がします。
そして、住宅ローンの団信があればいいのかという部分についてです。住宅ローン団信は、住宅ローンの支払期間が終わってしまうと、そこで保障が終了してしまうということが最大のデメリットです。女性の乳がんと子宮がんの罹患率は、40~50代くらいで急激に上がりますが、そのほかのがんは65歳を超えてから罹患率のピークがきて、年々上昇し、70代を超えてから急激に上昇します。そのため、比較的年齢の低い状態で罹患してしまいやすい女性特有のがんと、その他のがんでは考え方が異なります。
そして、高額療養費制度ではカバーしきれない費用があります。自己負担の限度額にも問題はあります。この自己負担の限度額は月ごとの限度額になります。そのため、入院日程が月をまたがってしまう場合などは、月内で退院できた場合より自己負担額が多くなってしまうこともあります。
先進医療や自由診療も高額療養費制度は対象になりません。医療費だけでなく、入院以外の費用も実際にはかかってくる場合がほとんどです。通院費、食事療養費、家族の付き添い費用など、かなり大きな金額となってきます。
そして、なんといっても収入面です。内閣府の発表によると、現在は65歳を過ぎても働く男性の割合が60%以上、70歳を過ぎても働く男性の割合が40%以上に達しています。つまり、定年退職後も働く可能性が高いということです。そんなときにがんになったら、働くことができません。さらには年を取ると、回復にも時間がかかります。皆さんも今一度、がん保険の必要性を考えてみませんか。
※参考:令和6年版高齢社会白書|内閣府
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。