著名人・専門家コラム
2023.07.04
かんぽ生命の加入率減少の理由は?【住宅FP関根が答える!Vol.59】
みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
最近、若い人たちを中心にして、生命保険不要論が叫ばれるようになってきたように思いますが、実は保険の加入者はそれほど減ってはいません。生命保険文化センターの調べによると、2009年における生命保険の加入率は90.3%なのに対し、2021年の加入率は89.8%と僅かな減少にとどまっているため、生命保険の加入率はほぼ横ばいに推移していることがわかります。
また最近は、民間の生命保険会社は割高で手数料が高いので、割安な県民共済に入っていれば十分という話もよく聞きますが、この部分を見てみると、2009年における民間の生命保険会社の加入率は76.2%だったのに対し、2021年の加入率は80.3%と民間保険会社への加入率は4%以上増えています。一方で、県民共済、生協など共済の加入率は2009年において28.8%だったのに対し、2021年は31.6%と若干の上昇となっています。
生命保険全体の加入率はほぼ横ばいとなっている一方で、民間生命保険会社の加入率は4%以上増えており、さらに共済の加入率も3%近く増えています。そうなるとどこの加入率が減ったのでしょうか。それは「かんぽ生命」の加入率です。
※参考:平成21年度「生命保険に関する全国実態調査」|公益財団法人生命保険文化センター
2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」|公益財団法人生命保険文化センター
かんぽ生命加入率低下の理由
2009年のかんぽ生命の加入率は30.9%だったのに対し、2021年の加入率は19.2%と10%以上下がっています。かんぽ生命の加入率が落ちた理由は何なのでしょうか?理由はいくつかあると思います。かんぽ生命のイメージを著しく落としたのは、2019年における不正販売問題があると思います。この不正販売問題というものは、かんぽ生命の保険を契約する社員が、激しいノルマに追われ、顧客ファーストではなく、募集人にとっての「販売手数料ファースト」で保険募集がおこなわれていたということが暴かれた事件です。
発覚した不正契約は、大きく以下の3つあります。
- 保険料を二重に支払わせていた
- 加入者を意図的に無保険状態にした
- 無保険状態時の健康トラブル
この3つについて詳しく説明していきます。
保険料の二重徴収
1つ目は保険料を二重に払わせていたケースです。現在保険に加入している人へ新しい保険を勧める場合、新しい保険の審査が通ったあとに古い保険を解約してもらうというのが通常の流れですが。この不正契約においては、新しい保険が成立しているにも関わらず、古い保険を解約させることなく半年間など、二重に保険料を払わせていたということです。これは二重に保険の手数料収入を得ることができるため、手数料狙いでおこなわれていました。
意図的な無保険状態
2つ目の不正契約は、保険に加入していない無保険の状態が発生していたという問題です。保険契約というものは通常、古い保険を解約すると同時に、新しい保険が成立するという流れを組んでいくのですが、古い保険を解約した後3ヶ月以内に新しい保険に加入すると「乗り換え契約」とみなされ、新しい保険の手数料が半分しか入らない場合があります。そのため、手数料が満額でもらえるようになるまでの3ヶ月間、あえて新しい保険に加入させずに、3ヶ月が経過した後に新しい保険に加入してもらうというやり方をとっていました。
無保険状態時のトラブル
そして3つ目は、この無保険状態の期間に被保険者に健康上のトラブルがあり、その後新しい保険に加入できないというトラブルが発生しました。こうした不正契約というのは、激しいノルマに追われるがために続けられていたようです。
その他のかんぽ生命離れの理由
かんぽ生命離れには、ほかにも理由があると思います。かんぽ生命は郵便局で契約をするため、契約者は郵便局で預貯金を預ける方が対象になります。郵便局をメインバンクとして金融機関の中心にして利用される方は、現在、比較的高齢な方が多く、普段の郵便局との付き合いの中で、保険募集人から養老保険などの貯蓄型保険を勧められ、加入するという流れが多かったです。
ただ若い方で郵便局をメインバンクにする方はあまり見かけません。若い方の郵便局の利用方法は郵便物を出す場合やフリマアプリで発送する場合など郵便機能として利用する人がほとんどで金融機関としていく人は少ないと思います。
また、かんぽ生命は学資保険が有名でした。20年ほど前までは子供が生まれれば郵便局に行き、学資保険に入るというのが一般的な大学資金の準備方法でした。かんぽ生命の学資保険が選ばれていた理由は満期保険金の利率です。
以前の学資保険は運用先である日本債券の利回りもよかったため、20年程度所有していると107%程度になりました。普通預金に預けているとお金を使ってしまいそうで不安、強制的に高値を貯めることができる学資保険という意味合いで選ばれる人が多くいらっしゃいました。
また外貨建て保険などもあったのですが、為替の影響も受けるため選ばれることは少なかったです。運用に関して保守的だった当時は無理をして大きな利益を上げるよりも確実に4~8%程度増やすことができる郵便局の学資保険が一番安心という選択をする人は多かったです。ただその後、日本債券の利率は落ち、学資保険として20年間預けても101%程度にしかならないなど、契約者からは教育費の準備方法としての学資保険は選択肢から外されていきました。
また、学資保険のリスクとして、20年程度の満期を迎える前にお金が必要になり、保険を解約し現金化する人が多くいらっしゃるということです。投資先が株式や投資信託などの場合、相場によってはプラスで売却できる可能性もありますが、保険の場合は契約時に解約返戻金が確定しており、中途解約の場合、支払保険料に対して70%程度となってしまうことが多く、中途解約リスクがあります。ここ20年程度、学資保険は極端に利回りが落ちたことにより、保険を販売する側も勧めにくい状態です。また契約者目線で考えても、以前のように「株はギャンブル、確実に増やせる日本国債が一番!」という人の割合も減ってきていると思います。
今は1億総運用時代となり、積立NISAも2024年からは新NISAへ変更され、貯蓄から投資へという動きは加速していくものと思われます。そうなると日本国債を使った貯蓄型保険のニーズは今以上に低くなっていくことと思います。
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。