著名人・専門家コラム

2023.07.18

日本で保険テックが遅れている理由【住宅FP関根が答える!Vol.61】

みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
2023年6月15日の日本経済新聞に「保険テックのユニコーン、日本はゼロ データ開放に遅れ」という記事が掲載されました。保険テックとは、インシュアランス(保険)とテクノロジーとを組み合わせた言葉です。記事の内容としては以下になります。

保険テック分野には世界で3,000社を超すスタートアップがあり、うち約40社はユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の非上場企業)です。一方で世界有数の保険市場である日本は、ユニコーン企業がゼロとなっています。日本において保険テックが進まない理由ですが、ソフトウエアをお互いに利用できるデータ開放システム、いわゆるAPIが十分に使われておらず、サービスの開発で保険会社と組みたいスタートアップにとって高い壁となっています

例えばアメリカのUSAA生命保険では、ベンチャー企業と組み、病院などから医療・健康データを集め、患者などの同意を得た上で保険会社などに提供、それにより告知において簡単に保険加入ができる仕組みをもっています。

日本でもNTTデータが生保向けAPIを開発し、2022年から段階的に運用を始めたサービスで、第一生命はこの仕組みを使い、傘下のネオファースト生命保険の契約者がIDなどを入力しなくても契約情報を確認できるようになっていますが、正直、保険テックと呼べるような内容とは思えません。

現在、保険テック分野において、日本はかなり遅れています。本来保険テックというのは、病院等から提供される医療・健康データなどをAIが瞬時に判断することにより、スムーズに加入できるといったものが中心となるはずですが、第一生命の取り組みは、契約者情報の閲覧という極めて事務的なものに限られています。

なぜ日本における保険テックは遅れてしまっているのでしょうか。
私の考えとしては、生命保険業界というものは、古い会社が多く、経営も保守的であり、なかなか新しいことに挑戦しようとしない傾向があるように思います。古くからある日本の企業はこの保険の業界に限らず、家電メーカー、自動車メーカー、ハウスメーカーなどもサービス全体を自社において完結させる傾向がありました。例えば、車を1台作るにしても、大元の会社を頂点にし、その下にグループ会社を携え、自動車の部品の製造、供給なども、同じグループ会社内で行い、自社グループ及び関連会社で一台の車を作ろうとします。

家電製品も同じです。1つの家電製品を作る場合も、そこの会社内で設計から部品の調達、組み立てから販売網まで自社で全て完結するビジネスモデルを長年続けていました。

ただ、そのビジネスモデルも今では崩れており、家電製品においてはODMといって、設計は大手家電メーカーがやるものの、組み立ては海外の下請け会社に依頼をするのも当たり前になってきています。

そして保険の世界というのも、今までは保険の設計から販売、保険料の集金や、保険金の支払いなどの保全業務をすべて自社で行うのが当たり前でした。そういったビジネスモデルを長年続けてきた保険業界において今の時代になり「保険テックを進めるためベンチャー企業と組んで、新しいサービスを生み出そう!」という流れはできにくいのだと感じます。

ただ現在のIT技術の進化スピードは、過去にないくらい早く、今までのような古い経営のまま進められるわけがありません。次の時代に生き残っていくためには、IT技術に特化したベンチャーと組みながらサービスを提供する必要があります。

日本において保険テックが進まない理由はもう一つあると思います。生命保険業界は、日本国内のみで完結することができるサービスで、世界と戦う必要がない産業だからだと考えています。

例えば、日本の自動車メーカーは大変優秀な会社が多数ありますが、世界で戦う必要があります。世界での戦いに敗れてしまうとアメリカや、中国などの、新興メーカーにシェアを奪われてしまいます。過去、バブルの頃、日本の家電製品は世界を席巻しましたが現在は競争力を失い、韓国や中国などの外国メーカーとの戦いに敗れてしまいました。これら世界で戦う必要があるサービスは海外での戦いに敗れるとシェアを奪われてしまいます。

一方で、生命保険会社というものは、国内のみのサービス提供で事業が成り立つ仕組みになっており、世界と戦う必要がありません。世界で勝つためには、どういった新しい仕組みを取り入れたらいいのかという発想をもたなくても、日本人向けにサービス提供していれば産業が成り立ってしまうため、世界と比べ、ガラパゴス化しやすい分野だといえます。

ただここで重要なのは、日本国内でサービス提供をしていれば産業が成り立つというのも、日本の産業規模が大きかったから成り立っていたといえます。日本における50年先、100年先のことを考えると、人口が減少していき、さらにその中でも若い人の人数は減っていきます。

これからはどの分野においてもデジタル化は避けて通ることはできません。ましてやデジタル化と相性の良い保険が世界的に見て大きく遅れているというのは心配が残ります。日本に生命保険会社が誕生してから140年余り、保守的な経営を続けてきた生命保険会社もいよいよ変わらなければいけない時なのかもしれません。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直

ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。

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