保険の基礎知識
2022.03.16
特定疾病保障保険と介護保険の特定疾病は違う!メリットやデメリットを紹介
特定疾病という言葉は介護保険などの保険制度から、特定疾病保障保険のような民間の保険商品まで、さまざまな場面で使われます。
しかし、制度によって特定疾病が意味するものは異なります。そのため、特定疾病保障保険は介護保険の特定疾病を保障するものではありません。
この記事では、特定疾病に指定されている病気を制度ごとに解説し、特定疾病保障保険のメリットやデメリットを紹介します。
特定疾病が指すものは制度によって違う
特定疾病という言葉は、各種の制度において、他の疾病とは違う取り扱いをする疾病を指すのに使われます。しかし、具体的にどの疾病を指すかは制度によって異なります。
ここでは
- 一般的な健康保険
- 介護保険
- 特定疾病保障保険
について、それぞれで特定疾病とされている疾病を解説します。
同じ特定疾病という用語を使っていても、その意味するものがまったく違うことがわかります。
健康保険での特定疾病
健康保険制度では長期間にわたって継続しなければならず、著しく高額な医療費が必要となる疾病を特定疾病とし、医療費の負担を減らす特例制度があります。
健康保険での特定疾病とは、法令により定められた次の3つです。
- 人工腎臓が必要な慢性腎不全
- 血友病
- 抗ウイルス薬を投与している後天性免疫不全症候群(HIVなどを含む)
申請により特定疾病療養受療証を受け取った人は、医療機関の窓口で提示することで医療費の自己負担額の補助を受けられます。
介護保険の特定疾病
介護保険では、特定疾病とは加齢に伴う心身の変化に起因し、要介護状態の原因である心身の障害を生じさせると認められる疾病と定義されています。
特定疾病には以下の2つの要件があり、具体的には下記の16の疾病が指定されています。
- 65歳以上の高齢者に多く発生しているが、40歳〜64歳の人にも見られる、加齢との関係が認められる疾病
- 3~6ヶ月以上続けて要介護状態もしくは要支援状態となる割合が高い疾病
【16の特定疾病】
- 末期がん
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護保険制度を利用できるのは、原則として第1号被保険者とされる65歳以上の高齢者です。しかし、16の特定疾病のいずれかにかかっており、要介護状態にある40歳〜64歳の人は、第2号被保険者として介護認定を受けることで、介護保険制度を利用できるようになります。
特定疾病保障保険の特定疾病
民間の保険会社が提供する保険商品の一つに、特定疾病保障保険があります。
特定疾病保障保険で特定疾病と呼ばれるのは以下の3つです。
- がん
- 急性心筋梗塞
- 脳卒中
特定疾病保障保険の概要については次の項目で解説します。
特定疾病保障保険とは
特定疾病保障とは、特定疾病によって亡くなったり、障害が残ったりした場合に保険金が支払われる保険です。保険会社によっては取り扱いがない場合や、特定疾病特約として他の保険と一緒に販売されていることもあります。
保障内容は以下の2つが多いです。
- 死亡した場合、死亡保険金
- 一定上の障害が残った場合、高度障害保険金(保障内容に含まれないものもあります)
死亡保険金・高度障害保険金は100万円〜1,000万円など、まとまった金額で支給されることが多く、もしものときに経済的なダメージを減らすのに役立つでしょう。
なぜ、がん・急性心筋梗塞・脳卒中が特定疾病なのか
特定疾病保障保険では、以下の3つが特定疾病とされています。
- 上皮内がんや皮膚がん(悪性黒色腫を除く)以外の悪性新生物(がん)
- 狭心症等を除く、虚血性心疾患のうちの急性心筋梗塞
- 脳血管疾患のうちくも膜下出血、脳内出血、脳動脈の狭窄(脳血栓・脳塞栓)などのいわゆる脳卒中
では、なぜこの3つの疾病が特定疾病とされているのでしょうか。厚生労働省の「令和2年人口動態統計月報年計の概況」によると、実はこれらは老衰を除いた日本人の死因の1位から3位を占めているのです。そのため、この3つをまとめて3大疾病と呼び、特定疾病保障保険は3大疾病保障保険と呼ばれることもあります。特定疾病保障保険は、日本人が特にかかりやすい病気に特化した保険なのです。
特定疾病保障保険のメリット
ここでは特定疾病保障保険に入るメリットを2つ紹介します。
もしものときにまとまった金額が受け取れる
特定疾病保障保険では、もしものときに100万円から1,000万円程度と、一般的な医療保険などよりも大きな金額が受け取れます。
受け取った保険金の使い道は指定されていませんので、入院などでかかる医療費や生活費として自由に活用できます。
死亡保障の代わりになる
3大疾病が日本人の死因に占める割合は比較的大きいことを踏まえると、いずれかを発症して保険金を受け取ることになる可能性は低くないでしょう。そのため、特定疾病保障保険は生命保険の死亡保障の代わりとして考えることもできます。
しかも特定疾病保障保険には、一般的な生命保険の死亡保障と違い、3大疾病が原因で所定の高度障害状態になったときにも死亡時と同額の保険金が受け取れるというメリットもあります。
特定疾病保障保険のデメリット
3大疾病に備えられる特定疾病保障保険ですが、以下のようなデメリットもあります。
保険金は一度しか受け取れない
特定疾病保障保険は一度保険金を受け取ると、契約が消滅します。たとえば、がんは再発の可能性が高い病気ですが、再発した場合でも保険金を2回以上受け取ることはできません。
支払要件が厳しく、保険金を受け取れないこともある
特定疾病保障保険では、特に脳卒中や心筋梗塞になった場合に、保険金が支払われる要件が限定されていることがあります。
たとえば、心筋梗塞では初診を受けてから60日以上、労働に制限が必要な状態が続いていることが要件です。
60日以内に、制限がないほど回復した場合は保険は受け取れません。
まとめ
介護保険制度で特定疾病に指定されているのは、加齢に伴って増加しやすい16の疾病でしたが、特定疾病保障保険では日本人の3大死亡原因とも言われるがん・脳卒中・心筋梗塞です。
日本人ならかかりやすいとも言える3大疾病に対し、手厚い保障がある特定疾病保障保険はもしものときにまとまった金額が受け取れ、死亡保障の代わりにもなる、便利な商品です。
一方で保険金が一度しか受け取れないなどのデメリットもありますので、他の保険とも比較しながら加入を検討しましょう。
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リアほMAGAZINE編集局
保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。