手続きQ&A
2023.11.24
保険金受取人が先に死亡した場合、どうなるの?【FP監修】
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。
生命保険の死亡保障では、被保険者が亡くなった場合に保険金を受け取る受取人を指定します。しかし、もし受取人が被保険者より先に死亡したらどうなるのでしょうか。たとえば、被保険者が亡くなったときには受取人である配偶者がすでに故人である場合などが考えられます。
この記事では、死亡保険金の受取人が先に亡くなってしまった場合の対処法や、受取人を変更しない場合に誰が保険金を受け取るのかなどを解説します。
受取人が先に死亡した際にやるべきこと
医療保険などは、被保険者と給付金や保険金を受け取る人(受取人)は同じです。一方、死亡保険は被保険者が死亡したあとに保険金が支払われるため、被保険者以外の人物を受取人に指定する必要があります。
ここで問題になるのが、受取人が被保険者よりも先に亡くなってしまうケースです。受取人に指定していた人が亡くなったことを知ったらすぐに受取人変更の手続きをしましょう。
本来はのこされた家族の生活を守るために死亡保険に加入する人が多いでしょう。ところが、受取人を変更せずにいると想定しない人に保険金が支払われてしまう可能性もあります。詳細は下記「受取人が死亡していたら保険金は誰が受け取るのか」の項目もご覧ください。ここでは、受取人変更の手続き方法や受取人になる資格がある人を解説します。
受取人変更の手続方法
受取人が先に死亡したときは、速やかに保険会社に連絡して受取人を変更しましょう。
ただし、保険契約者と被保険者が異なる場合は、被保険者の同意が必要です。たとえば、夫が契約者、妻が被保険者の場合では夫と妻の両方が同意していれば受取人を変更できます。なお、受取人の同意は必要ありません。
受取人になれる人
受取人になれるのは、一般的に配偶者もしくは2親等以内の血縁者(親や子ども・兄弟姉妹・孫など)です。保険会社によっては3親等以内の親族(甥や姪など)も指定できることもあります。
また、複数人を指定することも可能です。その場合は例として配偶者に70%、子どもに30%というように割合も指定します。
内縁関係や同性パートナーが受取人になれる場合がある
受取人になれる人の項目で解説したように、基本的には血縁関係がない他人は受取人になれません。しかし、家族の形が多様化していることを受けて内縁関係(事実婚)や婚約者でも一定の条件を満たしていれば受取人に指定できる保険会社もあります。
保険会社によっては、同性のパートナーも指定できる場合もあります。指定できる条件や必要書類などの詳細は保険会社へ問い合わせてみてください。
受取人が死亡していたら保険金は誰が受け取るのか
受取人が先に亡くなっていたのにもかかわらず受取人変更の手続きをしなかった場合、保険金はどうなるのでしょうか。
ここでは受取人の代わりに保険金を受け取るのが誰なのかを、ケース別に詳しく解説します。
受取人の法定相続人が保険金を受け取る
保険金の支払事由が発生した時点で受取人が死亡していた場合、受取人の法定相続人が保険金を受け取ります。
法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。法定相続人になるのは、被相続人に配偶者がいる場合はその人です。配偶者がいない場合、被相続人の血族から以下の順位にしたがって決められます。
第1位 子(死亡している場合は孫などの直系卑属)
第2位 父母(死亡している場合は祖父母などの直系尊属)
第3位 兄弟姉妹(死亡している場合は甥や姪)
同じ順位の人が複数いる場合は、全員が法定相続人になります。ただし、先の順位の人がいる場合は、後の順位の人は法定相続人になれません。
受取人の法定相続人がいないときは?
以下のようなケースでは保険金を受け取るべき法定相続人がいないことがあります。
- 受取人が生涯独身で、その親や兄弟も亡くなっている
- 受取人は結婚していたが、すでに配偶者も亡くなっていて子どもはいない、親も亡くなっており兄弟はいない
このようなケースでは、保険金は受取人の財産の一部として裁判所が選定した相続財産管理人によって整理されたのちに、ほかの財産と一緒に国庫に帰属することになります。
受取人の法定相続人が保険金を受け取る手続きには時間がかかる
被保険者が亡くなった場合、受取人は葬儀の準備などで多くのお金が必要です。保険金の支払い期限は保険会社の約款に記載がありますが、通常は保険金が振り込まれるまでそれほど時間はかかりません。
一般的に、生命保険の受取人が保険金を請求する場合、保険会社から指示された必要書類に問題がなければ、早ければ一週間程度で保険金が振り込まれることもあります。
一方、法定相続人が保険金を受け取る場合は、まず受取人の法定相続人であることを証明するための戸籍謄本をそろえ、さらに法定相続人全員の印鑑証明書なども必要です。受取人が手続きするよりも保険金を受け取るまでに時間がかかってしまうことが多いでしょう。
たとえば、結婚して子どもがいる人が配偶者を受取人にしていた場合、法定相続人は子どもです。そのため、配偶者が亡くなったあとにあえて受取人を子どもに変更しなくても結局は同じだと考える人もいるかもしれません。
しかし、手続きをスムーズに進めるためにも受取人は変更しておくことをおすすめします。
まとめ
死亡保険金の受取人が先に亡くなってしまった場合、保険金を受け取るのは受取人の法定相続人です。そのため、本来、保険金を受け取ってもらいたいと考えている人ではない人物に支払われてしまう可能性があるのです。
受取人の死亡を知ったら、すみやかに変更手続きをしておきましょう。変更手続きは保険契約者と被保険者が違う場合は被保険者の同意が必要ですが、受取人の同意は不要です。
受取人変更の手続きを忘れてしまうと、いざというときに親族の間でトラブルが起こる可能性もあります。また、保険金が支払われるのに必要な手続きも煩雑になってしまいます。
生命保険に加入している人は、受取人の変更忘れがないよう、保険の見直しの際などに確認するのがおすすめです。
WRITER’S PROFILE
リアほMAGAZINE編集局
保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。