著名人・専門家コラム

2022.10.12

LGBTQフレンドリー取組と生命保険【FPコラム】

LGBTQへの保険会社の取組から見る「多様性への保障」について考える

10年前までの生命保険をきわめて大雑把に定義をすると、「さまざまな非該当要因があって、それらに当てはまらなければ生命保険の対象」という考え方が前提にあったように思います。それから数年、行政の動きが先行して、急ピッチで変化が起こっています。

生命保険の保障対象者を選ぶのは保険会社なのか

保険に加入するときは既往症などの告知義務があります。保険によっては申込後も保障の対象外とする免責期間があり(がん保険が代表的です)、万が一病気やケガに見舞われ保険金を受け取る際にも複数の条件があります。これは生命保険の仕組みによるものです。

生命保険料の仕組みの図解

前提としてこの計算式にて利益が生まれなければ、保険商品として成立しません。長く保険会社は、保障対象者を選ぶことでビジネスモデルを維持してきました。「〇〇だから保険には加入できないね」という言葉を誰しも1度や2度は聞いたことがあるのではないでしょうか。以前はそれで良かったのですが、2000年代に入り少しずつ世の中の考えが変わっていきます。ダイバーシティの名のもとに多様化を認め合うこと、多彩化する顧客ニーズに対応することが企業価値を決めるという流れに変わってきました。世界の動きが先行して、日本が追随したイメージでしょうか。

以下企業規模国内最大級を誇る保険会社のホームページの一部です。

人財のダイバーシティ(多様性)をお互いにインクルージョン(包摂)することが持続的成長の原動力であり、

■性別、年齢、国籍、人種、民族、宗教、社会的地位、障がいの有無、性的指向・性自認、価値観、働き方等の多様性を互いに尊重し、認めあい、共に活躍・成長することができる職場環境・風土づくりを進め、
■社員一人ひとりが、いきいきワクワク働きながらプロフェッショナルとして能力を最大限に発揮し、
■自ら組織運営に参画し、チームワーク力を発揮することで、変革(イノベーション)と新しい価値創造を実現する

これが第一生命グループのダイバーシティ&インクルージョンの考え方です。

出典:第一生命 https://www.dai-ichi-life.co.jp/dsr/employee/diversity/inclusion.html

保険会社として多様化の一環で受け入れるものは保険会社として定義するものではなく、世の中の趨勢として保障対象に含めていくべき、保険の「包摂」に含めていくべきという考え方が当たり前になってきました。この流れのひとつとして、LGBTQの方々に対する保険会社の姿勢があります。

LGBTQコミュニティにおける保険会社の取組拡大

2015年に渋谷区が同性のパートナーに対する証明書の発行を開始したことが、保険会社としてLGBTQコミュニティへの保障が拡大する契機になりました。保険金受取人として立証できるのは、行政の証明書です。渋谷区が先陣を切って後押ししたことで他の自治体も追随し、従来の保険会社の手続きとしての障壁が無くなりました

これからはどのような動きになるでしょうか。筆者の考えは世の中の動きに対応して、今後も大手保険会社から中小保険会社へと、LGBTQコミュニティの対応も拡大していくでしょう。公的遺族年金は長く「主婦であれば年金を受け取れるけれど、主夫(男性)であれば受け取れない」というような保障の抜け道がありましたが、同様にLGBTQコミュニティと保険の関係性の微調整も進んでいるように見受けられます。

共済や団体保険、少額短期保険への展開

今後の動きとして予想されるのは、商品ベースで考えたときの対象の拡大です。先の計算式で考えたとき、不特定に対する保険商品に関してはLGBTQに限らず、いわゆるポリコレ(特定の加入者を視野に入れた商品設計)も整備されてきました。次の段階は共済や団体保険といった、ある程度加入者を限定した商品への横展開です。LGBTQコミュニティに向けた限定的な団体保険や、属性上対象者が多い職場に対しての商品が開発検討されていくのではないでしょうか。

ある保険会社では、現状は既往症として判断されるHIV感染を告知事項から除き、健康体と同様に基準にしました。抗HIV薬開発の進歩により、検査と診療・適切な投薬を受けていればAIDS(後天性免疫不完全症候群)を発症することがほぼ無く、余命は健康体と変わらないといわれています。余命が変わらないのであれば、先述した保険料計算にて懸念することはありません。

そこで注目すべきは少短(少額短期保険)への展開です。ネーミングはともあれ、LGBTQコミュニティにより特化した少短保険が販売されていくと筆者は考えています。少短の役割はそこにあります。専門家のひとりとしての個人的な見解ですが、今回のテーマのように多様化していく保険市場のなかでは少短のトライアルとしての役割は必要で、途中で保障内容を変えざるを得ないという選択に関係者が苦言を呈すような流れは、あるべきではないと思います。

LGBTに代表される多様性への取組は、今後もさまざまな場面で推進されていくことでしょう。保険会社の先進的な取り組みは、これまで保障を受けられなかった人たちへの保障の拡大を意味し、より豊かな世界を作ることに繋がります。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤崇

FP-MYS代表。ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。(執筆実績はこちら:https://fori.io/takashi-kudo)

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