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2024.07.17

社会保険のお勉強~第3号被保険者の問題点って?~【住宅FP関根が答える!Vol.108】

みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
年金制度は、加入者を3種類に分けています。第1号被保険者とは20歳以上60歳未満の自営業者、農業者、学生、無職の方などが該当し、第2号被保険者は70歳未満の会社員や公務員など、厚生年金の加入者のことを指します。そして第3号被保険者とは厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者とされていますが、今回はこの第3号被保険者に関して考えていきたいと思います。

最近、第3号被保険者が保険料を払わずに社会保障にフリーライド(タダ乗り)していると批判されることが多くなってきたように感じます。批判されている理由を考えていきたいと思います。ここでは仮に、夫が会社員をしていて妻が専業主婦もしくはパート主婦だった場合で考えていきます。

社会保険における第3号被保険者に対する批判の多くは、夫に扶養されている妻が、本人の国民年金保険料や国民健康保険料を支払わずに夫の社会保険(年金と健康保険)に入ることができるからです。この夫が第2号被保険者に加入していれば、その妻は社会保障費を払う必要なく、社会保険に入ることができるという考え方は昭和型の家庭モデル、昭和型の社会保障といえます。

昭和時代の家族のモデルケースとして代表的なものは結婚をして夫婦になり、夫は外で働き、妻は仕事を辞めて家庭に入る、子供を出産して子育てをするという家庭が多く見られました。そんな子育てを頑張る妻を社会全体で支えようという考え方がベースになり、第3号被保険者ができたといわれています。

一方で現代の女性は結婚や出産をしても継続して働くのが一般的になっていますし、男性女性に限らず、単身世帯も増えてきています。そういう社会の家庭モデルが変わる中、昭和型家族のモデルケースがベースになっている第3号被保険者の問題点が指摘されるようになってきました。

第3号被保険者の問題で一番に語られるのは就労調整です。第3号被保険者は年収130万円未満と決められています。また年収130万円未満だったとしても、社会保険の加入要件を満たす場合には厚生年金保険、健康保険に加入することになるため、第3号被保険者には該当しなくなってしまいます。

具体的にパート、アルバイトの社会保険加入要件は以下になります。

「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」に勤務する、通常の労働者の1週間の所定労働時間または、1月の所定労働日数が4分の3未満である方で、以下の1.から3.のすべてに該当する方が対象です。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上あること
  2. 賃金の月額が8.8万円以上であること
  3. 学生でないこと

※参考:日本年金機構

こちらが俗にいう106万円の壁です。これらを超えると社会保険料を自分自身で払わなければいけなくなってしまい、そこまで働かない方が得と考え、就労調整が行われているという現実があります。

令和4年の総務省統計局の就業構造基本調査によると、非正規雇用で結婚している女性を調査したところ、年収などを考えながら就業調整をしているのは約38%に上るということです。さらに現在はパート従業員の時給も上がっているため、この上限に達しやすくなってしまっています。

※参考:令和4年就業構造基本調査|総務省統計局

例えばパート収入を年間120万円程度で抑えるためには毎月10万円を稼ぐことになります。時給1,000円で働いている場合、毎月100時間働くことができますが、時給が1,100円にアップした場合91時間しか働くことができません。社会保障費を払わないために、毎月9時間も働く時間を削ることになってしまい、人手不足が進みやすいという現状があります。またこの就業調整が女性の社会進出の邪魔をしているという批判もあります。

厚生労働省が年金に関していろいろな角度から財政検証を行っているのですが、ここでいつも引用されるのは、夫が厚生年金に加入し、平均的な賃金で40年間就労し、その配偶者が40年間専業主婦だった場合の合計額を引用することが多いです。つまり、この考え方は夫は外で働き、妻は家に入り、夫を支えるという昭和型の家庭が前提とされており、この40年間専業主婦であった場合という設定自体、今の時代と合っていないと言わざるを得ません。

これから年金財源は人口動態の変化により枯渇していくことが予想されています。年金の財源は積み立て方式と賦課方式に分けられます。積み立て方式は、現役時代に支払った年金保険料を将来に向けて積み立てていくものですが、原状この割合が少なく、現在の年金財源は賦課方式がメインになっています。賦課方式は、年金支給のために必要な財源をその時の現役世代から保険料で捻出するやり方です。現役が働き納めている年金保険料をその時の年金受給者へ仕送りするイメージです。

今後は人口動態の変化により少子高齢化が進んできます。バブル崩壊以前の日本は経済成長を続けており、社会保障に対する不安はありませんでした。ただバブル崩壊後、日本経済の成長は止まり、税収は減り、人口動態は歪み、社会保障費の財源不足で、増税、社会保険料の値上げまで行われました。

これからも若者人口が減り老人が増えることを考えると、間違いなく財源は不足していきます。この先の年金財源をどこから徴収するのかを考えていかなければいけない中で、第3号被保険者という制度は時代に合わない保障制度の代表といえそうです。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直

ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。

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