著名人・専門家コラム
2023.09.25
「リアルじゃなかったので、がん保険に加入していなかった」この言葉は深い【住宅FP関根が答える!Vol.69】
みなさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの関根です。
みなさんはチャンネル登録者数23万人の人気YouTuber「サニージャーニー」というチャンネルをご存じでしょうか?軽自動車のキャンピングカーで日本一周の旅をするというチャンネルをご夫婦で運営していたYouTuberなのですが、旅の途中で奥様(みずきさん)が体調を崩し、精密検査を受けた結果、膵がんが発見されました。がんが発見された時にはステージ4、既に全身に転移しており、なにもしなければ余命4ヶ月、抗がん剤などの治療を受けた場合でも長くて2年の命だと告げられ、その後は治療に専念、がんと闘うチャンネルに変更し、今も配信をし続けています。
そのみずきさんが「私の後悔はがん保険に入っていなかった。」とおっしゃっていました。みずきさんががんに罹患をした時の年齢は32歳、まさか自分ががんに罹患をするとは思っていなかったことと思います。本日はこの「私の後悔はがん保険に入っていなかった」という言葉が持つ、人のバイアスについてお話をさせていただきます。
人が持つ防衛本能、正常性バイアスとは
実は保険の世界にいると見られる傾向として、実際に周りでがんに罹患している人がいるとがん保険の加入を希望する人は多いです。そういった人がなぜがん保険加入を希望するのでしょうか。理由は、リアルだからです。そして逆に、周りにいないと、リアルではないため「自分ががんに罹患することはない」と考えてしまう、これが人のもつ正常性バイアスと言います。
正常性バイアスとは、人は日々多くの情報や経験が流れていく中で、多くの情報による心理的ストレスに過剰に反応しないことで心の平穏を保つ防衛本能のことをいいます。
今回はこの正常性バイアスを「がんに罹患することはない」という例として上げましたが、このバイアスはがんに限ったことではありません。有名なもので言うと災害発生時です。例えば、建物の非常ベルが鳴っていても「どうせ誤報だから大丈夫だろう」と思い込んでしまい初期動作が遅れてしまうといったことや、火災が発生しているのに「まだ大丈夫、そう大きくはならないだろう」と考えてしまい、気が付いたら逃げ遅れてしまい被害が拡大してしまう場合があります。
大邱(テグ)地下鉄放火事件
そしてこの正常性バイアスで、世界的に一番有名な出来事と言えば大邱(テグ)地下鉄放火事件です。この事件は2003年に地下鉄の車内で自殺をしようとした男性がペットボトルに入ったガソリンをまき、自ら火をつけて火災となった事件です。
これだけ聞くと通常の地下鉄火災事件だと思ってしまうかもしれませんが、この放火事件では地下鉄運営側が大変なミスをしていました。この地下鉄は以前から火災警報器の誤作動が頻発していたため、職員は今回も誤作動と思い込んでしまい、火災発生後も地下鉄の運行を続けてしまいます。本来なら、火災が発生して運行を止めなければいけなかったのですが、運行停止の連絡をしなかったため、火災の事実を知らない対向車が火災現場に乗り入れてしまい火災現場のホームで停車してしまいました。そして、火災は燃え広がって、停電をしてしまった電車は動かず逃げることもできません。駅構内の照明も落ち、地下鉄という密室空間での大惨事になってしまいました。
火災に気づいた運転士は、すぐに全てのドアを開け、乗客に避難するように指示を出しますが、その時既に電気配線が焼けており、一部のドアしか開けることはできず多くの乗客が逃げ遅れてしまいました。車内に閉じ込められた乗客は自力で、窓から脱出するものやドアの非常開放機能を使って、脱出するものもいましたが、多くの人が、車両内に閉じ込められてしまい、一酸化炭素中毒や脱出できないまま焼死してしまいました。最終的には、死者192名、重軽傷者148名を出す大惨事になってしまいます。
なぜこのような大惨事になってしまったのか。これは、地下鉄指令センターで災害警報が鳴っているにも関わらず「どうせ、誤作動に決まっている」という決めつけがあったことが原因になります。これが、正常性バイアスになります。自分だけは大丈夫、そんな危険なことが起こるわけがないと考えてしまうものです。
病気に罹患することをリアルに考える
病気というものはいつ罹患するかわかりません。自分だけは大丈夫という正常性バイアスを超え、医療保険、がん保険、そして収入保障保険の必要性を考えなければいけません。
このYouTuberの方は、わずか32歳、まさか自分にがんが見つかるとは思っていなかったのも理解できます。人というものは「自分が病気になる」とか「今日死ぬかも」とは考えないものですが、残念ながら、若くして重い病気になる人は一定数おります。
保険の契約を19年間行っておりますが、医療保険、がん保険に加入する人が多い職業があります。それがお医者さんです。お医者さんは普段から病人を見続けているため、人が病気に罹患するということがリアルに感じられる人たちです。そのためお医者さんはしっかりと保険に入ることが多いです。職場に行けば病気になっている人がたくさんいる、これこそが「人は病気に罹患する」というリアルだからです。
WRITER’S PROFILE
㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直
ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。