著名人・専門家コラム

2022.07.26

103万円の壁?扶養の金額を超えるとどうなる?【さんきゅう倉田コラムVol.04】

高校生の頃3ヶ月だけアルバイトをしたケンタッキーで、大学生だった4年間ずっとアルバイトをしていたバーミヤンで、芸人になってから社員のように働いた品川駅の中のセゾンファクトリーで、パートのおねえさん(50代)が年末になると言っていました。

「103万円超えちゃうから、シフト減らさないといけないわ」

みなさんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。おねえさんたちは、なぜ年末になるとシフトを減らすのか、103万円とはなんなのか、その謎に迫りたいと思います。

103万円=基礎控除48万円+給与所得控除55万円

以前は、基礎控除は38万円、給与所得控除の下限は65万円でしたが、変更になりました。変更後も会社員、パート・アルバイトの負担は変わりません。
この会社員、パート・アルバイトならば誰でも受けられる控除金額の合計が103万円です。

控除は収入から引けるもので、収入の金額から控除の金額を引いた残りが所得になります。勤務先からの給料が年間103万円以内なら、103万円の控除を引いて、所得は0になります。この場合、所得税はかかりません(住民税は自治体によってことなりますが、年収が93万円〜100万円を超えるとかかります)。

パートのおねえさんは、所得税や住民税がかからないように年収を調整していたんですね。
さらに、配偶者である夫の税額にも影響します。

配偶者控除と配偶者特別控除

配偶者がいる場合、配偶者控除が受けられますが、配偶者の給与が年間で103万円を超える、あるいは、配偶者控除を受ける人の年収が高い場合は受けられなくなります

配偶者控除が受けられる金額の表
※参考:配偶者控除|国税局

『一般の控除対象配偶者』を見てください(「老人」は70歳以上の方)。

金額が38万円、26万円、13万円となっています。配偶者の年収が103万円以内なら配偶者控除が受けられますが、本人の所得が900万円を超えると、配偶者控除は減っていき、1,000万円を超えたところで配偶者控除は0になります。

※「本人の所得」について

パートをしている配偶者が女性なら、「本人」は夫。夫が一般的な会社員なら「所得」は、年収から給与所得控除を引いた金額になります。
給与所得控除の金額は、計算式を調べれば年収から計算できますが、源泉徴収票に「給与所得控除後の金額」が記載されています。これがこの場合の「所得」です。所得が1,000万円を超えると配偶者控除が受けられません。
この「所得」には、給与以外の所得も含まれます。副業で得た「雑所得」などです。

配偶者の年収が103万円を超えて配偶者控除が受けられなくなっても、配偶者特別控除が受けられます。

配偶者特別控除が受けられる金額の表
※参考:配偶者特別控除|国税局

配偶者控除より、さらに細分化されています。本人の所得の階級は配偶者控除と変わりませんが、配偶者の所得が5万円増えるごとに、配偶者特別控除の金額が減少していきます

控除が受けられないとどうなる?

配偶者は年収が103万円を超えれば、所得税がかかります(累進課税の所得税率は5%から)。
本人は配偶者の年収が増え、配偶者控除や配偶者特別控除が減少すれば、課税される所得金額が増えるので所得税が増えます。さらに、勤務先が家族手当などに配偶者の所得要件を設けている場合は手当の支給に影響する場合があります。

配偶者や本人の所得税に影響があるため、「103万円の壁」と呼ばれますが、社会保険の加入に影響する「106万円の壁」や「130万円の壁」も存在します。労働時間が短く賃金が少ないパート・アルバイトにとって、社会保険料は大きな負担になると考えられます。

扶養控除と配偶者控除は異なる

配偶者控除と似ている制度に、扶養控除があります。こちらは、本人と生計が一緒の配偶者以外の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)がいて、その親族の給与収入が103万円以下の場合に受けられます(給与以外の場合は、所得が48万円以下か否かで判定してください)。

ここでさんきゅう倉田の思い出話

昔、税務署で電話番をしていた際、「扶養控除の対象範囲」について問い合わせがありました。対象は親族であると答えると「親族って誰ですか」とさらに聞かれてしまいました。

この当時、国税庁のホームページの扶養控除の部分を確認しても、親族の定義は記載されていなかった(と思います。誤認していたら、申し訳ありません)。
さらに、研修や業務中に誰かに教わったこともなかった。
急いで調べて、親族とは「6親等以内の血族と3親等以内の姻族」であると伝えました。

しかし、納得していただけない。
「納得がいかないなあ」などとおっしゃる。
こちらは事実を答えたので、こうなったら相手の意見を聞いてみるしかない。

何が納得いかないのか。「では、どこまでが親族だと思われますか」と尋ねました。
すると、「親とか子供?」という答えが返ってきました。
親族の定義を調べる前のぼくは、親族をもう少し広く捉えていました。
祖父母とか孫とか従兄弟とか。
しかし、この方はとても狭く捉えていた。この方の心の中の親族の範囲が実際の定義と乖離し、素直に受け入れることを拒んだのだと思います。
自分の持つ言葉のイメージと事実は異なることがあって、常に慎重に言葉を用いなければいけないなと、今でもこの電話を戒めにしています。

さて、こちらが扶養控除の表です。基本的に38万円で、その年の12月31日の年齢が16歳以上の人が対象です。小さいお子さんは、扶養控除の対象とはなりません。

※参考:扶養控除|国税局

さいごに

「扶養の金額を超えるとどうなる??」は以上となります。103万円以内で働く皆さん。少しのミスで103万円を超えてしまうかもしれません。シフト調整は慎重に。1月〜12月にもらった給料で103万円を目指してください。1月〜12月に働いた分ではありません。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

さんきゅう倉田

芸人。ファイナンシャルプランナー。1985年神奈川県生まれ。 大学卒業後、国税専門官試験を受けて東京国税局に入庁。中小法人を対象に法人税や消費税、源泉所得税、印紙税の調査を行ったのち、同局退職。吉本興業の養成所NSCに入学し、芸人となる。

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