「リスクをとって、価値を掘り出す」。omusubi不動産に聞いた、不動産屋のリスク論

借りた家が火事になったら?契約している物件が、災害で破損したら。滅多にないことだと信じたいけれど、「不動産」は常にさまざまなリスクに晒されているもの。

所有する規模も、かかるコストも大きいがゆえに、「不動産の価値が壊れてしまう」ことはとても怖いはず。

そうした不安を抱えているのは、物件を借りている個人だけではありません。商品として不動産を扱う「不動産業者」もまた、リスクに日々向き合っています。彼らは、不動産にまつわるリスクについてどう考えているのでしょうか?

今回は、「不動産のリスクと保険」、そして「不動産を扱う人は、リスクとどう向き合っているのか?」を知るべく、不動産会社「omusubi不動産」の代表・殿塚建吾さんにインタビュー。

千葉県松戸市と東京の2箇所に拠点を構えるomusubi不動産は、不動産のなかでも特にリスクが高いとされる「古民家の再生」に力を入れている会社です。

わざわざリスクをとってまで、古民家再生に取り組む理由と、「どんな不動産取引にも、リスクはある」という実情、そして、そんなリスクとの向き合い方について伺いました。

不動産における、さまざまなリスクと保険

ーー今日は「不動産と保険の関係」についてお伺いしていきます。まずは「不動産を扱うことにどんなリスクがあるのか?」というところから知りたくて。教えていただけますか?

はい。そもそも不動産を扱うことって、それ自体が「リスクとの戦い」だなと思いますよ。貸す側にも、借りる側にも、あらゆるリスクと備えがある。

まずは具体的に、不動産に対してかけられる保険にどんなものがあるのか?を話しましょうか。

ーーーお願いします!

不動産にかけられる保険には、大きく分けて以下の4つがあります。

①火災保険
……一般的に、建物の所有者(=オーナー)が入ることの多い保険。火災だけでなく、自然災害や突発的な事象による建物への被害もカバーできる。
加入対象:建物所有者(オーナー)

②家財保険
……不動産賃貸を借りる際、借りる側が入ることになる保険。事故の要素があれば、自身の家財の損害や、家主や階下の住人等に損害を与えた場合に補償がおりる。
加入対象:賃貸借者

③地震に対する保険
……地震災害による損害を保証するため、民間の会社と政府が共同で行う、公共性の高い保険。多くの場合、火災保険とセットで加入する必要がある。
加入対象:建物所有者(オーナー)

④団体信用生命保険
……住宅ローンに付帯して入る保険。住宅ローンの支払い者がローンを残して死亡してしまった場合や、働くことが困難になった場合、ローンの残高を保証してくれるもの。
加入対象:住宅ローン契約者(債務者)

ーー不動産という財産を守ったり、所有している人に何かあったときの保証のために、多様な保険があるんですね。過去に火災保険についてのインタビューをさせていただいたので、保険の重要性はとてもわかります。

記事 「『助けて』と言ったら善意が押し寄せてきた」河瀬大作さんが考える火災の備え より。自宅が火災に見舞われた経験をもつ、番組プロデューサーの河瀬大作さんにお話を伺いました。

ーーそれに、物件の所有者(オーナー)が入る保険があったり、物件を借りた人が入る保険があったりと、バリエーションがあるんですね。

そうなんです。たとえば話題に出た火災保険は、物件を所有する人が自己防衛するための保険です。突発的な災害による被害が補償されるほかに、入居者への補償までカバーされるものもある。

火災保険のなかには「施設賠償責任特約」という項目があります。それに入ると、例えば建物内で水漏れが起きて、入居している店舗の機材などが壊れてしまった場合にも、補償されるケースがあるんですよ。

ーー入居者への補償までカバーしてくれる保険があるんですね。

反対に、入居者が入るための保険もあるんです。それが、「家財保険」。

家財保険は、不動産賃貸の際などに薦められるのでご存じの方も多いはず。入居者が万が一火事を出したり、万が一物件の一部を壊してしまったとき、補償されるケースがある。

すると、施設の破損の補償をある程度は保険でまかなえるので、大家さん(施設所有者)に金銭的な迷惑をかけてしまわずに済むんです。

ーー火事、地震、水害、物件内での突発的な事故……不動産にまつわるリスクがたくさん想定できるからこそ、細かい保険のメニューがあるんですね。伺っていると、「不動産業」自体が、リスクを抱えていくビジネスモデルなんだなとわかります。

その通りなんです。もちろん、リスクを極力減らしていく方法もありますよ。ただ、基本的にはリスクと向き合い続ける仕事だと思います。

ーー不動産屋さんが常に向き合っているリスクについて、引き続き教えてください!

物件のリスクを、どう背負うのか

不動産屋さんの仕事って、
(1)大きなリスクをとって、大きなリターンを目指す、というモデルと、(2)極力少ないリスクでリターンを得る、というやり方があると思っていて。

ーー大きなリスクを負うもの、ってたとえばどんなものでしょう?

自分達で物件を取得(購入)して、販売や賃貸に出す方法ですね。物件を取得するコストが、そのままリスクになりますから。

僕たちomusubi不動産は、空き家を購入して、再生して販売することや、中古のマンションを購入して再生して販売することがあります。それはまさに「リスクの大きい」方法だといえますね。

マンションを購入し、リノベーションして販売することも

ーーなるほど、ではリスクが少ない方法というのは?

多くの不動産屋さんがやっている「物件を仲介する」というモデルですね。

自分達で物件を取得せず、大家さん(物件所有者)とお客さんの間に立つ方法です。これだと、物件取得のコストはかからないので、リスクが少ないです。

ーーなるほど!物件取得の費用がゼロなら、仲介の場合のリスクはゼロではないですか?

いえ。物件取得のリスクが無くても、仲介する不動産業者には「不動産を調査して、その物件が抱えているリスクについて説明する責任」があるんです。

その「説明する責任」の範囲が、不動産業者にとってのリスクになる訳です。

特に、古い空き家の仲介なんかをしようとすると、説明しないといけないリスクの数がとても多い。権利関係だったり、物件の状態・劣化状況だったり……「この物件を取得するなら、こういうリスクがありますよ」とこちらで調べて、伝える。

その作業は新築を扱うことよりも大変なのに、新築よりも金額が安い。でも、omusubi不動産はそこにチャレンジしてるんです。

中古の戸建物件を仲介し、調査や手入れをして貸し出すこともあるという

自分達が物件を取得するときの考え方として大事にしているのは、「リターンを多くとるよりも、リスクを減らすことを目指す」ことです。

ーーリスクを減らす方法って、どんな方法をとっているんですか?

「物件の上がり相場に乗らないこと」を意識しています。特に東京は株価などに連動して、不動産価格も上下します。今は全体的に高めの相場なのですが、僕らくらいの会社の規模だと下落した時のリスクが高い。

なので、相場の変化で価値が上下する物件にとびつかず、波に左右されにくい古い戸建ての物件や、地方の物件を購入し、その物件の価値をあげることに注力しています。

これも、大きなリスクを避けるという意味では「不動産を扱う上での保険」といえるかもしれません。

ーーその判断って、一般のお客さんにとっては難しそうですよね。物件を購入する機会自体は、一般のお客さん自体もあるわけですし。

ただ、一般のお客さんだと「不動産業者に言われたから買う」なんてこともある。なるべく事前にリサーチしますが、古い物件だと特に、「ここの配管がこんなことになってたの!?」なんてイレギュラーな事態もあるんですよ。

当然、そのリスクは購入しようとする人が負担することになる。そのリスクを極力可視化することが、仲介する僕たちの役割になるんです。

ただ、物件の全てを調査しきれるかというと難しい。僕たちは「ここまではわかったけど、これ以上は調査してもわからないから、買うとしたらあなたのリスクになりますよ」とちゃんと言えるように準備しています。

ーーそれも難しいですね。あんまりわからないことだらけだと、買う側は「そんなにリスクだらけなら、やめとこうかな」と思ってしまう。

ただ、不動産に関する制度も変化してきていて。

ここ数年で、日本でも広まった「ホームインスペクション」という制度があって。いわゆる「住宅の健康診断」のようなものができるようになったんです。

ーーそれは、どういうものなんでしょう?

中古の住宅が取引される際に、住宅に精通したプロのホームインスペクター(住宅診断士)が調査をして、建物のコンディションを報告してくれるんです。

アメリカでは随分昔からあった制度ですが、日本でも2018年からはじまって、いまは中古物件を売り買いする際に「ホームインスペクションを受けたかどうか?」を報告しないといけないようになりました。

ーーなんだか、人間ドックみたいですね。健康かどうかが、がはっきりわかると

僕たちは不動産のプロではあっても、建築のプロではないので。プロの目を入れて、その上で「ホームインスペクターさんはこう診断していますが、このリスクは取れますか?やめておきますか?」という話ができるようになった。

既存の物件や、中古の住宅をきちんと循環させていく上で、とても大事な制度なんです。

ーー反対に、ホームインスペクションがない時代はどうしていたんですか?不動産屋さんが「建物のリスク」を調査したり伝えたりすることは、とても大変な気がします。

調査はできるけれど、リスクが高い。だから、これまでは中古の住宅を壊して新築を建てることが多かったんですよ。

見えないリスクをとるより、全て壊して新築にした方が楽だから。

ーーなるほど……それで、みんな「築00年」という数字を気にしていたんですね。

反対に、ホームインスペクションの制度が整いつつあるいま、「中古だけどちゃんとメンテナンスされている物件」の価値が正しく評価されようとしている。それは、健全な姿に近づいていると思いますね。

ーー古い物件にはリスクもあるけど、正しい調査と説明があれば、少しだけ安心できる。ホームインスペクションも、不動産業の保険と言えそうですね。

リスクの高い場所にこそ、「誰かが挑戦しやすいチャンス」がある

ーーそれにしても、古い物件の活用はそんなに難しいわけですよね。どうしてomusubi不動産では古い物件の利活用を目指すんでしょう?

もったいない、というのもあります。物件はただの投資のための金融商品じゃないし、人の顔が見えずに取引されるのも寂しく思っていて。

東京だと特に、「チャレンジしたい人」のための条件のいい物件が少ないんです。でも、投資的に価値がないとされているようなエリアの物件や、古い物件を掘り起こせば、また新しい価値を物件に見出すことができる。

例えば「エレベーターがなくて、近隣との距離も近いから建て替えも難しい」みたいな物件にも、価値は生まれると思うんです。

omusubi不動産が管理する物件「カミヤミスジクラマエ」。1階には酒屋と角打ちのお店「NOMURA SHOTEN」が入居している。 撮影:奈良岳

金融商品として不動産を扱う人からすれば、旨味がないけれど、「個人で何かやりたい人」にとっては魅力がある。投資的には利用価値が少ないものを、どう価値転換していくかというのは、どの場所でも変わらないことだと思うんです。

だから東京でも、本拠地の松戸でも古い物件の再生をやっていくし、もう1つくらい地方での拠点を増やしたいんですよ。リスク分散も保険になるし……

それに、地方には投資の対象にこそならなくても、可能性のある古い物件がたくさんあるから。

おわりに

建物のコンディションから、突発的な事故に至るまで、あらゆるリスクに晒される不動産。

不動産業者はそんな物件のリスクを常に的確に見つめながら、入居者と物件との良い出会いをつくろうとしています。

omusubi不動産の殿塚さんが語ってくれたのは、不動産をただ「リターンの大きい投資商品」のように扱う仕事ではありませんでした。

「古い物件を管理し、再生する」というリスクをとることで、「チャレンジしたい誰かにとっての不動産の価値」を掘り起こす。そのために、相場の変化と関係がない「中古物件や地方の物件」に注力していく。

大きなリスクを抱える「不動産」という商品を扱うからこそ、自分たちが関わるべきものをしっかりと見極める。そんな判断の積み重ねが、不動産の保険となっているようです。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER'S PROFILE
Huuuu
Huuuuはローカル、インターネット、カルチャーに強い編集の会社です。 わかりやすい言葉や価値観に依存せず「わからない=好奇心」を大切に、コンテンツ制作から場づくりまで、総合的な編集力を武器に全国47都道府県を行脚中。 企業理念は「人生のわからない、を増やす」。

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