保険の基礎知識
2021.08.30
弁護士費用特約ってなに? “もらい事故”にあう前に知っておきたいこと
自動車の運転中や日常生活では、どんなに気をつけていても事故にあってしまうことはあります。たとえ“もらい事故”であっても、示談交渉や賠償金の請求など面倒なやりとりが発生する場合も考えられます。そんなときに焦らないためにも知っておきたい弁護士特約について解説します。
■弁護士費用特約とは
“もらい事故”などに備えられる
弁護士特約とは、主に自動車保険などの任意保険につけられる特約です。
自動車事故や日常生活での事故で被害者になった場合に、ケガや車・モノの損害に対する賠償請求を弁護士に委任するときにかかる弁護士費用や、法律相談費用などを補償してくれる特約です。
“もらい事故”とは?
交通事故で双方が走行している場合は、双方に責任があるとみなされます。事故時の双方の状況に応じて保険会社が示談交渉を行い、40%対60%といった過失割合が決定し、この割合に基づいて損害賠償額が算定されます。
このような双方に過失が認められる交通事故とは違って、”もらい事故”は片方に全く非がない、過失割合がゼロ対100%となる事故のことをいいます。
例として、「信号待ちの停車中に後ろの車に追突された」「駐車場に駐車してあった車が通りかかった別の車にぶつけられた」といった、停車中や駐車中の追突事故が”もらい事故”に該当します。
このような事故の場合、保険会社が示談交渉することは弁護士法(第72条 非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)に抵触するためできません。
つまり、“もらい事故”で相手と交渉しなければならない場合、自分で交渉する必要がありますが、弁護士などに委任するという方法もあります。その場合の費用を補償をしてくれるのが弁護士特約です。
弁護士特約が使えるのはこんな場合
たとえば、停車中だった自分の自動車に、別の自動車から追突される“もらい事故”にあってしまったとき……
・相手が修理費を支払ってくれないので弁護士に相談したい!
・相手が過失を認めようとしないので弁護士に相談したい!
・相手が想定できる水準よりかなり低い賠償金を提示してきたので、弁護士に相談したい!
このような場合に特約を使って弁護士への相談費用に充てることができます。“もらい事故”は自分がしっかり注意をしていても、相手側の不注意で起こってしまうことがあります。もしもの”もらい事故”に備えて弁護士費用特約があると安心できるでしょう。
■弁護士特約の注目ポイント
弁護士特約を使っても等級は変わらない
自動車保険では、事故歴によって決まる等級で保険料が前年より上がったり下がったりします。事故を起こしてしまうと等級が下がってしまうことがありますが、弁護士特約を使った場合には等級は下がりません。弁護士特約を使ったとしても、以後の保険料や等級に影響しないので安心して補償を受けられます。
特約によって対象の事故が異なるので注意
自動車保険の弁護士特約は保険会社によって、自動車事故のみが補償対象の場合と、自動車事故に加え、日常生活の事故まで補償範囲を広げた特約にするか選べる場合があります。
自動車事故のみが対象の場合は自動車に関する事故のみが対象となるため、歩いていて自転車にぶつかられたときや、他人の犬にかまれたときなど日常生活上の事故については補償の対象にならないため注意が必要です。
また、補償範囲が広くなれば保険料も高くなるため、自動車事故のみを対象とするか、日常生活の事故も含めるか、2つから選べる場合には本当に必要か考えたうえで選びましょう。
複数の自動車を所有している場合は重複加入に注意
弁護士費用特約は記名被保険者に加えて、その配偶者や同居の親族、別居の未婚の子も補償の対象となるのが一般的です。つまり家族で複数の自動車を保有している場合には弁護士費用特約の補償が重複する可能性があります。
一家で複数の自動車保険契約がある場合には、特約の補償が重複していないか確認しておきましょう。
■まとめ
自動車保険などの任意保険によくある弁護士特約について、仕組みやどんなときに活用できるかなどの基本を紹介しました。自動車に乗る人は、自分がどれだけ気をつけていたとしても事故にあう可能性をなくすということはできません。万が一のときに焦らないためにも、弁護士特約をつけておくと安心です。
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リアほMAGAZINE編集局
保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。