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2023.07.26

生命保険における「逆選択」解決策とは?【住宅FP関根が答える!Vol.62】

みなさんこんにちは、ファイナンシャルプランナーの関根です。
生命保険は死亡、入院、手術、介護など様々なリスクに備えるために加入をしますが、時に加入者における保険料と支払う保険金のバランスを崩してしまうことがあります。

生命保険における「逆選択」とは?

「逆選択」という言葉が保険の世界にはあるのですが、これは保険事故が発生するリスクが高いとわかっていながら保険に加入しようとする動きのことをいいます。

例えば、入院保険を例に挙げた場合、保険というものは、大数の法則といい、多くのデータをもとに平均的な入院リスクを計算します。万人に対して同じ保障を提供し、それを加入者同士の保険料負担による「相互扶助」をベースに、保険料負担の不公平感が出ないような仕組みとなっています。

ただここで考えたいのは、もしも健康な人と入院リスクが高い持病を持っている人がいたとします。この両者が同じ保険料で加入した場合、入院リスクが高い人にとってその保険料は割安になりますが、健康な人にとっては割高な保険料になってしまうため、保険に加入することを避ける人も出ると思います。一方で入院リスクが高い、持病を持っている人などは、保険料が高かったとしても加入したいと希望する人は多くいらっしゃると思います。

やはり保険会社としては、入院リスクの低い人に加入してもらった方が保険金を支払う必要が少なく、健康な人に保険に加入してもらいたいと考えるものですが、実際に保険加入を希望する人は、入院リスクが高い人が多いです。

もし入院リスクが高い人ばかり保険に加入してしまった場合、保険会社は、多くの保険金を支払わなければいけなくなってしまい、保険会社の経営が傾いてしまう可能性もあります。この入院リスクの低い人が保険加入を見送り、入院リスクが高い人が保険加入を希望する現象のことを「逆選択」といいます。

逆選択の影響と対処

この逆選択が加速してしまうと、保険会社は多額の保険金支払いにより収益が圧迫されてしまうため、結果、保険料を値上げせざるをえなくなってしまいます。保険料が値上げされてしまうと、保険に入りにくくなるため、もともと健康な人は、さらに保険加入を見送ってしまい、さらに入院リスクの高い人が多く加入することとなります。結果、さらに保険料は値上げせざるを得ないという、保険会社にとってマイナスの連鎖が続いてしまいます。

この逆選択を防止するために、保険会社ができる事として、健康な人の保険料を下げ、健康上のリスクが高い人の保険料を値上げするという戦略が取られることが多く、収入保障保険などでは20年以上前から非喫煙者健康体割引料率が提示されており、死亡リスクに応じた保険料設定がされています。しかし入院保険においては、健康体の割引などを採用している保険会社は少ない現状があります。

また緩和型医療保険というものがあり、持病をもっている人でも入りやすい保険を用意しています。持病をもっていても入りやすくなっているため、当然保険料が高くなってしまいますが、健康な人と持病をもっている人との間に保険料の差をつけることにより、この逆選択という現象が起こらないようにしています。

保険テック(インシュアテック)と逆選択

逆選択を無くすために、これからの時代活躍するのが、先日のコラムでも話をした保険テックです。日本における保険テックというものは非常に遅れており、現状では一部の保険会社で保険に加入した後の契約者情報の閲覧等で使われることもありますが、本来、保険テックの最も優れた仕組みは、この保険業界における長年の課題だった逆選択が起こりにくい仕組みを作ることができるということです。

保険会社が病院や健康保険組合と連携することにより、契約者の情報を取得します。どういった持病をもっており通院歴は何年なのか。服用している薬は何なのかなどを確認し、これらの病歴から今後どういった入院や手術の可能性があるのか、どういった合併症を起こす可能性があるのかなどを予想することができます。

また現在の保険加入は告知が主となりますが、健康診断において保険テックを利用することも効果的となります。健診結果の指摘項目がある場合、その指摘内容、その数値から今後、どういった病気になるリスクが高く、また入院・手術のリスク、合併症のリスクなど、AIと連携することにより、より正確に予想することができるようになり、それにより契約者ごとのリスクに応じた保険料を決定していくことできます。こういった未来を作ることができれば、長年、保険業界において、リスクとされていた逆選択という現象が起こりにくくなります。

先日のコラムにおいて、日本で保険テックが進まない理由という話をさせていただきましたが、これから産業がダイナミックに変わっていく時代において、日本の生命保険会社もAIにおける保険の商品設計、保険料設計などを進めていく必要があると考えます。

※この記事に記載の情報は公開日時点のものです。

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WRITER’S PROFILE

㈱投資用マンションSOS 代表取締役 関根克直

ファイナンシャルプランニング技能士2級。独立系FPとして18年。ライフプラン作成、保険見直し、住宅ローン提案、投資用不動産計算など、年間300件ほどの面談をおこない幅広いサービスを展開しています。 元ウィンドサーフィンインストラクター、またチャンネル登録10万人YouTuberとしても活躍中。

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