著名人・専門家コラム
2022.09.27
万が一の時の遺族年金は、4月から6月にどれだけ働いたかで決まる?【FPコラム】
少し沈静化してきた印象を持ちますが、2020年以降世界中を不安に陥れたコロナ禍は、自分に何かあったら大丈夫なのかを個人が考える貴重な機会にもなりました。日本においては公的保障が充実しているため、毎月支払っている保険料により遺された家族の生活もカバーされます。その手厚さは、毎年4月から6月にどれだけ働いたかがひとつの基準になっています。この春先忙しかったという方は、達成感を含めて保険プランを再点検してみましょう。
遺族年金制度のうち、働いた分だけ増える部分とは?
遺族年金制度は遺族基礎年金と遺族厚生年金に大別されます。基本的にはどれくらいの期間にわたり年金保険料を納めたかによって、遺族年金は変わります。
このうち本稿のテーマである「働いた分によって変動する部分」とは、遺族厚生年金の計算式に含まれる「標準報酬月額」という言葉です。
標準報酬月額が増えると遺族年金も増える
標準報酬月額とは、社会保険料など保険給付の額を計算するときの根拠となる金額のことです。1-2万円の間隔で「等級」が割り振られており、対象者の報酬額がどの範囲内に含まれるかで基準となる金額が導かれます。この表は物価などを反映しており、都道府県において異なります。
対象となる報酬額に含まれるもの
標準報酬月額は毎年7月1日に算出します。算出の基礎となるのは、その年の3カ月間の給料の月平均額です。基本給のほか残業代、通勤手当や管理署手当が含まれます。賞与も含まれるという印象が強いですが、年3回以下の賞与は含まれないため、一般的な日本企業での夏冬のボーナスは対象になりません。
「春先には残業を控えめに」といわれる根拠
昔から春先には残業を控えめに、といわれる根拠がこの標準報酬月額です。
この計算式で算出される厚生年金は労使折半であり、4月から6月に残業代を多く出した皺寄せは会社にも影響します。従業員を青天井に働かさせていると会社の財務状況にも影響するため、このようなアドバイスになっているのでしょうか。とはいえ多くの会社が4月に新年度を迎えるため、さまざまな環境変化で4月以降に業務多忙になるのも共通項です。なぜこの時期に設定されているのかは、毎年専門家のあいだでも議論を呼びます。なお4月から6月の期間内に成功報酬などで給料が抑えられた場合も、10月に受け取っている給料と大幅な差が生まれるのであれば、是正対象となる仕組みもあります。
副業は合算
では本職では残業を控えめにして、副業で稼げば大丈夫ではないか。当然ですが、そのような悪知恵は通用しません。複数の職場に勤務する場合の保険料は、それらをすべて合算して、標準報酬月額として計算します。労使側いずれかがこのルールを順守していなかった場合は、過去2年分に遡って保険料を徴収されることもあります。国もマイナンバーカードなどを活用し、このあたりの所得情報には目を光らせていますので、誤魔化そうとはせず正直な申告をするようにしましょう。
7月を過ぎたら年金廻りのライフプランを見直してみよう
厚生年金および遺族年金の計算根拠となる数値が変動することは、将来における保障が手厚くなる一方、現時点の負担が増すなどメリット・デメリットの両面があります。専門家としても標準報酬月額を上げるべき・下げるべきという意見は難しいものですが、1つ言えるのは、7月を迎えたら自身の遺族年金相場を確認し、可能ならライフプラン表を作り自分の老後廻りを考える機会を持ちましょう。
各所で開催が再開されつつある資産運用を考えるイベントなどでは、このままだと老後資金はどうなるのか、気軽にシミュレーションの機会を得られるものも多いです。保険会社や運用の会社が主催しているものでは、かなり緻密な計算を入れているものもあり、自分のライフプランを見直す良いきっかけになります。コロナ禍が落ち着いて、各所ではリアルで専門家によるアドバイスを受けられるものもありますので、あまり構えず体験することをお勧めします。
WRITER’S PROFILE
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤崇
FP-MYS代表。ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。(執筆実績はこちら:https://fori.io/takashi-kudo)