損害保険・少額短期保険
2023.04.14
ペット保険はいる・いらない?商品の特徴から見たおすすめな人とは
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。日本FP協会AFP認定者。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。
ペット保険は犬や猫などの動物を飼っている人のために、ペットの病気やケガでかかる治療費を補償する保険です。いわゆる医療保険に近いものですが、保険金が支払われる条件などに違いがあります。そのため、ペット保険の加入を検討する際にはいくつかポイントを押さえておく必要があります。
この記事では、
- ペット保険の概要と注意点
- 犬・猫の治療でかかる費用
- ペット保険はどのような人におすすめか
を解説します。
大切なペットのため、ペット保険に入ることを考えている人はぜひ参考にしてください。
ペット保険とは
ペット保険とは、ペットの病気やケガでかかる治療費を補償する、ペットのための医療保険です。健康保険がある人間と違い、ペットにかかる治療費は全額自己負担です。そのため、飼い主が負担する費用は高額になることも珍しくありません。
ここでは、ペット保険を検討する前に知っておきたいこととして、
- 補償内容
- 注意点1:掛け捨て型・毎年更新が一般的
- 注意点2:免責金額や補償割合を理解する
を解説します。
ペット保険の補償内容
ペット保険で主に補償される内容は以下の通りです。
- 通院費用:動物病院でかかった診察代、薬代など
- 手術費用:手術費や麻酔薬代など
- 入院費用:入院でかかる費用
これらのほかにも、葬祭費用やペット用車イスの作成費用、他人の身体や持ち物を傷つけたときに役立つペット賠償責任特約などがオプションとして付加できる商品もあります。
一方、以下の費用はペット保険に加入していても補償対象外であることが多いため、注意しましょう。
補償対象外の治療費の例
- 去勢・避妊手術
- 予防接種
- 健康診断
- 歯の治療
- 加入前の病気やケガ
商品によって補償対象が異なるため、加入前に確認しましょう。
注意点1:掛け捨て型・毎年更新が一般的
多くのペット保険では、保険料は掛け捨て型が一般的です。保険料は補償内容やペットの種類・年齢などによって異なり、補償内容が手厚いほど、そしてペットの年齢が高いほど保険料の負担が大きくなります。
また、ペット保険は原則として1年ごとに更新が必要です。ペットが健康なら、毎年保険を更新しても保険料が上がる以外に特に問題はないかもしれません。しかし、ペットが病気になった場合、その後の状態によっては保険契約を更新できなかったり、条件付きの更新になったりする可能性があります。
たとえば、毎年治療を必要とする慢性的な病気があるのにもかかわらず、保険が更新できなければ、それ以降の治療費は全額自己負担しなければいけません。
保険料や更新などの仕組みは商品によって大きく異なるため、加入前にしっかりとご確認ください。
注意点2:免責金額や補償割合を理解する
実はペット保険に入っても、治療費の全額が補償されるわけではありません。ペット保険には、免責金額と補償割合があります。
免責金額とは、治療にかかる費用のうち、飼い主が必ず負担しなければならない最低金額です。補償割合は、費用のうち何割を保険で補償するかというもので、加入時に決定します。多くのペット保険では、50%か70%の2種類から補償割合を選択します。
たとえば、免責金額が5,000円で、補償割合が50%の商品に加入したケースで治療費をシミュレーションしてみましょう。たとえば、3万円の治療費が発生した際は、まず3万円から免責金額の5,000円を差し引きます。そして残りの金額に補償割合の50%をかけます。その結果、この場合は2万5,000円 × 50% = 1万2,500円が、ペット保険から補償されるのです。
免責金額や補償割合のほかに、支払限度額、限度日数などがある商品もあります。ペット保険はペットにかかる治療費の負担を抑えられる商品ですが、加入していても、いざという時の経済的負担がまったくなくなるわけではないことには注意しましょう。
ペットの種類別・治療でかかる費用
ペット保険の加入を考える際、ペットの病気やケガでどのくらい治療費がかかるか気になっている人は多いでしょう。ここでは、参考として、犬と猫の治療費の目安を紹介します。
犬の治療費
アニコム家庭どうぶつ白書2019によると、犬の診療単価(1回の診療にかかる費用)の全国平均は10,183円でした。この数字はあくまで平均であり、病気やケガの内容や状態によってはこの金額よりも大きな治療費が発生することもあります。たとえば、犬の保険請求理由として2番目に多い弁膜症では1年に平均して約8回の診療が必要で、年間診療費の平均は225,810円です。
以下は、犬の年齢別年間診療費のグラフです。
このデータによると、人間と同様に犬も年齢を重ねるにつれて診療費が高くなっていることがわかります。また、中央値と平均値に差があることから、病気やケガの内容によっては中央値を大きく超える高額な治療費がかかるケースもあると考えられます。
猫の治療費
猫の治療費についてもアニコム家庭どうぶつ白書2019のデータを見てみましょう。猫の診療単価(診療1回あたりの治療費)の全国平均は8,414円です。しかし、猫の保険請求理由として最も多い慢性腎臓病では、平均して272,598円の治療費がかかっています。
参考までに、猫の年齢別年間診療費のグラフを見てみましょう。
このデータによると、猫は治療費がかからないことが多く、特に1歳〜8歳までの年間診療費の中央値は0円です。つまり、多くの猫は病気やケガで治療を受けること自体が少ないものの、平均値は数万円台であることから、もし治療が必要な病気やケガをした時には高額な診療費が発生する傾向があるといえるでしょう。
ペット保険がおすすめな人・いらない人
ペット保険の特徴やペットの治療でかかる費用を踏まえて、ペット保険がおすすめの人、ペット保険がいらない可能性がある人はそれぞれどのような人かを解説します。
ペット保険がおすすめな人
- 貯蓄が少ない人
- ペット保険で急な支出に備えたい人
貯蓄が少なく、ペットにもしものことがあった時の家計への影響を抑えたい人にはペット保険はおすすめです。
ペットにかかる治療費は病気やケガの内容や状態によっては高額になることもあります。治療費が家計にとって大きな負担になる可能性がある場合は、ペット保険の利用を考えたほうが良いかもしれません。
ペット保険がいらない人
- 十分な貯蓄がある人
- ペット保険のしくみに魅力を感じない人
ペット保険は万が一の時の経済的なリスクに備えるための金融商品です。そのため、貯蓄が十分あり、ペットの予期せぬ病気やケガで治療費が発生しても家計に大きな影響が出ない人は、あえてペット保険で備える必要性はそれほど高くないでしょう。
また、すでに解説した通り、ペット保険には補償割合や免責金額、支払限度額など、保険金受給にはさまざまな制限があります。また、保険料が掛け捨て、原則として毎年更新が必要などの独自のしくみもあります。こうしたペット保険の特徴を踏まえて、保険に加入するよりも保険料を貯蓄に回すほうが良いと考える人もいるかもしれません。
まとめ
ペットの治療費は高額になることもあるため、貯蓄が少ない人や急な支出増加による家計への影響を抑えたい人にはおすすめできる商品です。
しかし、生命保険や医療保険などとは異なり、ペット保険には補償割合や免責金額の設定、毎年更新などの独自のしくみがあります。また、商品によって補償対象が限定されています。いざという時に思うような補償が受けられない可能性もありますので、加入前に補償内容や支払条件をよく確認するようにしましょう。
この記事で紹介したペットにかかる治療費の例や自分の貯蓄の状況などから、ペット保険の必要性を考えてみましょう。
WRITER’S PROFILE
リアほMAGAZINE編集局
保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。